共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.70 Causing A Commotion / Madonna 50曲を超えるトップ40ヒット、マドンナこそ “クイーン・オブ・ポップ”
1980年代以降、およそこの約40年間にわたって世界の音楽シーンの第一線に居続けるマドンナ。彼女が大衆音楽の世界におけるスーパースターのひとりであることに異論をはさむ余地はないだろう。
ヒットチャート的見地から鑑みても、12曲のNo.1を含む38曲のトップ10、50曲超のトップ40ヒットを輩出しており、これは20世紀中にデビューした女性シンガーの中では、ダイアナ・ロスをも凌ぐ圧倒的な実績となっている。“クイーン・オブ・ポップ” の称号は、マドンナにこそ相応しい。
さらに、圧巻の実績を誇るダンスチャートでの記録
ナショナルチャートである “HOT100” 以上に、圧巻の実績を誇るのがダンスチャートでの記録。今年2020年2月に「アイ・ドント・サーチ・アイ・ファインド」が同チャートにおいて50曲目の1位を獲得、2番目に位置するリアーナの33曲を大きく引き離している。
さらには80年代、90年代、00年代、10年代、そして2020年代と、5つのディケイドにわたって1位を獲得するという、前人未踏の新記録を樹立。そう、マドンナはクイーン・オブ・ポップである前に、“クイーン・オブ・ダンスミュージック” であることを忘れてはいけない。
そもそもHOT100における初トップ40ヒット「ホリデイ」(84年16位)以前、マドンナ初のチャートイン・ヒットは、ダンスチャートにおける「エヴリバディ」(83年ダンス3位)だった。同チャートには80年代だけで16作品を送り込み、うち15作がトップ10入り、うち9曲(!)がナンバーワンを獲得、HOT100での記録以上に、ダンスチャートでのマドンナは凄まじかったわけだ。
「フーズ・ザット・ガール」に続いてリリース「コモーション」
そして “クイーン・オブ・ダンスミュージック” の称号がささやき始められたきっかけとなった曲のひとつが、80年代68番目に誕生したナンバー2ソング「コモーション(Causing A Commotion)」(87年10~11月2位)で、自身が主演した映画『フーズ・ザット・ガール』(87年)のサントラから、全米No.1となった表題曲に続いてシングルリリースされた曲だ。
『バーニング・アップ(原題:Madonna)』『ライク・ア・ヴァージン』『トゥルー・ブルー』3枚のアルバムから順調にナショナル・ヒットを重ねていたマドンナは、出自たるダンスミュージックの大ヒットも順調に輩出していた。
86年までのダンスチャートにエントリーしたマドンナの作品はすべてトップ5入り(ナンバーワン5作!)、ポストディスコ期の様々な次世代ダンスミュージックのひな型を提示していたわけで、「コモーション」発売時点において “ダンスミュージック界の女王” 的な風格は備わっていたと言えよう。ジャネット・ジャクソンやジョディ・ワトリーのブレイクは、マドンナの存在抜きには語られない。
見事な横綱相撲、マドンナこそ “クイーン・オブ・ダンスミュージック”
80年代後半のダンスミュージックの潮流のひとつに、ニューウェーブ / ハイ・エナジー ~ ユーロビート派生の一環で、“コケティッシュ&アイドルチックでバブリーなポップダンスミュージック” というのがあった。
それは、例えばエクスポゼ(「ポイント・オブ・ノーリターン」が85年初チャート)やカバー・ガールズ(「ショウ・ミー」が87年初チャート)といったダンサブルなガールズグループを中心に、90年代初頭にかけて多くのフォロワーが出現したものだった。
よくよく考えれば、そういったスタンスの楽曲は、出自ともいえるマドンナの原点みたいなもので、「コモーション」は、それを忘れてくれるなと釘を刺してきた作品に思えて仕方がない。階段を一段下りてわかりやすく噛み砕いてくれたというか、「その気になれば、私だってそんな下世話なバブリーダンスミュージックできるけどね」みたいな。
そして当曲は、HOT1002位の大ヒットどころか、ダンスチャートではぶっちぎりの1位を記録。おまけにこの後90年代初頭まで、同チャートにおいて7曲連続No.1という新記録まで達成。“クイーン・オブ・ダンスミュージック” の称号はつけられて当然、見事な横綱相撲っぷりだったのだ。それにしても「コモーション」がリリースされたとき、世の新人ガールズグループたちは… 結構ビビったんじゃないかな。
※ KARL南澤の連載「共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味」
ジャンル、洋邦、老若男女を問わないヒットソングにある ‟共有感”。米ビルボードのチャートがほぼそのまま日本における洋楽ヒットだった80年代。ナンバーワンヒットにも負けず劣らずの魅力と共有感が満載の時代に生まれたビルボードHOT100 2位ソングを紐解く大好評連載。
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2020.05.18