角川映画祭(2016年7/30~9/2 角川シネマ新宿)で久しぶりにスクリーンに甦った80年代のスターたち。その姿を観てとにかく痺れた。そして、最高の体験となった。
当たり前の事なのだが、やはり映画は劇場で観るべきである。特にフィルム時代の作品は音響も含めて大スクリーンで観なけりゃ絶対ダメだ。
明暦の大火、火が燃え広がる江戸城内。老齢の柳生但馬守(若山富三郎)は魔界に魂を売り、天草四郎時貞(沢田研二)の妖術で魔人となって甦り、息子である剣豪・十兵衛光厳(千葉真一)と戦うため、炎の中で待ち構えている。山田風太郎の伝奇小説を原作とした時代劇『魔界転生』のクライマックスシーン。
合成を使わず、セットを丸ごと燃やして撮影された「善」と「悪」の一騎打ちという最大の見せ場。鬼気迫る表情と美しくも鋭い殺陣で強烈な存在感をフィルムに焼き付ける円熟の若山富三郎。リアリティを追求し自ら編み出したアクロバティックなアクションでそれに応える脂がのり切った千葉真一。そこに普通では考えられないほどの火をセットに放ち、紅蓮の炎を表現した鬼才・深作欣二監督。今この作品をスクリーンで再び観て思うことはひとつ。
「こいつら、狂ってやがる!」
言葉は悪いが「映画馬鹿」が何たるかを知りたいならば『魔界転生』を観れば良い。セットが大炎上し、正直演じた役者がよく死なずに済んだものだと思えるほどのド迫力。どこからどう観てもリアル火事、豪火そのもの。火に囲まれて現場のスタッフも役者共々命がけであったはず。そんな危険な状況の中でたじろぎもせずに互いに見得(みえ)を切り合う役者が2人。マジで根性がハンパじゃない。もちろん、そこにかかる音楽がフツーであって良いはずがない。「やばい。音楽まで狂ってやがる!」
ポン、ポン、ポン、ポン、ポポンッ!!!
逃げ場のない炎の中に突き抜けるように響き渡る鼓(つづみ)の音。邦楽と現代音楽が混じり合う恐ろしくクールな劇伴が日本刀を打ち合うサムライファイトを盛り上げる。そしてラストカット、燃え盛る炎の中にクレジットロールが流れると人間国宝・山本邦山が吹く幻想的な尺八である。その尺八の音色と菅野光亮のフュージョン系の音楽がまるで剣を交えるかのように交差する。
とにかく、すごい。やばい。神ってる。後にも先にもない最高のサウンドトラックなのである。
魔界転生
主演:千葉真一・沢田研二
監督:深作欣二
音楽:山本邦山・菅野光亮
公開日:1981年(昭和56年)6月6日
2016.09.20
YouTube / toeimovies
Youtube / Johnny Heyward
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