1~2本目は佐野元春の「譜割り」の話、3本目はオフコースの「転調」の話と、ちょっとマニアックで専門的な話が続いたので、今回は、もうちょっとだけ分かりやすい「リフ」の話としましょう。
「リフ」=「リフレイン」の略。
曲の中で、何度も繰り返される(=リフレイン)1~2小節くらいの短いフレーズのことです。
では、有名なリフは何か。「ロック史における最も偉大な『ギター・リフ』ベスト50」という、ごくろうさんなランキングがありまして、その1位は、ザ・ローリング・ストーンズ『サティスファクション』のイントロから流れる、あの「♪じっ・じー・じじ・じ~」のようです。
80年代で言えば、ガンズ・アンド・ローゼスの『スウィート・チャイルド・オブ・マイン』のイントロのリフ「♪ちゅい・ちち・ちゃい・ちゃい~」が、7位に選ばれています。
で、これらはギターによるリフですが、ベースのリフもあります。80年代で言えば、何といってもマイケル・ジャクソンの『ビリー・ジーン』。あのイントロのベース・リフを、簡易的な譜面で書けば、このようになります。
「♪ラミ・ソラ・ソミ・レミ」(キーはF#m)。マイケルのムーンウォークが、脳裏にくっきりとよみがえる傑作リフです。
そして、その『ビリー・ジーン』の影響も少しあったかもしれない、80年代の日本における傑作ベース・リフが、米米CLUBの『浪漫飛行』です(シングルヒットしたのは1990年でしたが、その前に、アルバム『KOMEGUNY』の中の1曲として、1987年に発売されています)。これも簡易譜面で書けば、こんな感じ。
「♪ドド・ソソ・ファファ・ドド」(キーはB)。イントロから歌メロに入っても、ベースはずっとこの「♪ドド・ソソ・ファファ・ドド」を刻み続けます。
その上に乗るメロディやコード進行は、やたらとドラマティックで、饒舌なものですが(「元祖Jポップ」という感じ)、その下では、このベース・リフが、淡々と機械的な繰り返されます。
特に「ファ」が効いていますね。これが「ド」とか「ミ」だったら、かなりストレートで、ややマヌケな感じになるのですが、「ファ」にしたことで、いい意味での浮いている感じというか、斬新な引っかかりが生まれています。
繰り返せば(=リフレイン)、この曲の、カラオケ映えするしつこいメロディは、「元祖Jポップ」という感じがするのですが、最近のJポップには、音楽的なチャレンジ精神 ー つまり、『浪漫飛行』における「ファ」ー が足りないという感じがします。だからその殆どが、引っかかりが無く、聴いたそばから流れて去ってしまうと考えるのです。
最近の多くのJポップに感じる、あの物足りない感じを、「歯抜け」ならぬ「ファ抜け」と呼びたいと思います。
2017.04.30