Love On The Rocks / Neil Diamond アメリカという国が産む大衆音楽の層は実に厚いなと感じる方も多いかと思われるが、それは何も今に始まったことではない。特にレコードの普及が急速化してきたロック・エラ(1955年以降)突入後は多岐にわたるジャンルにおいて、実に多くのスターたちが世界に名を轟かせてきた。 中でもナンバーワン国家たる自国 “アメリカ” を背負うかの如く、最大公約数的魅力にあふれたスタンダード系の米国男性シンガーは、フランク・シナトラを筆頭にパット・ブーン、ペリー・コモ、ボビー・ヴィントン等々、50~60年代に活躍したいくつかの歌い手が挙げられる。当然70年代にもそういった立ち位置のシンガーは存在していたわけで、ジョン・デンバーやバリー・マニロウといった日本でもおなじみのスターがヒットを連発していたのだが、アメリカ国内において彼らをしのぐ人気を誇っていたのが、ニール・ダイアモンドだ。 ニールは60年代後半から人気シンガーの仲間入りを果たし、「スウィート・キャロライン」「ソング・サング・ブルー」、アルバム『かもめのジョナサン』といったヒット作が日本でも比較的有名だが、全米ナンバーワン3曲を含むトップ10ヒット10曲以上を輩出している自国アメリカでは特に70年代は圧倒的な人気を誇っていた。老若男女に訴求し、ある時期においてはポスト・シナトラに最も近い位置にいたのかもしれないが、逆にいえば特に毒のないこれぞ典型的なスタンダード風情の歌手だったということで(だからこその圧倒的人気)、日本で知名度が高くない遠因はそんなところにあったのかもしれない。 そんなニールは80年代に自己最大セールス(米だけで500万枚!)となったアルバムをリリースしている。自らが主演したリメイク映画『ジャズシンガー』の同名サントラで、ほぼニールのオリジナル・アルバムといってもいい作品だ。そこからの第1弾シングル「ラヴ・オン・ザ・ロックス」が80年代突入後7番目に生まれたナンバー2ソングである。 80年代のナンバー2ソングの中では、5本指に入るくらいの地味な曲であり、日本においての推定認知度も30%くらいかな(それでも3人にひとり!)という感じだが、洋楽バブルに突入した81年のヒット、米チャートの上位になったということで結構日本のメディアでも紹介されていたので、ニールのレパートリーにおいては最も知名度が高い曲かもしれない。同アルバムから生まれた他のヒット・ソング、「ハロー・アゲイン」「自由の国アメリカ」とセットになってご記憶の50代以上の方もいるのではないだろうか。ちなみに、モンキーズの全米ナンバーワン・ヒット「アイム・ア・ビリーヴァー」は、ニール・ダイアモンドのペンによる作品だ。脚注: ■ Neil Diamond Sweet Caroline(1969年4位) Song Sung Blue(1972年1位) Jonathan Livingston Seagull(かもめのジョナサン)(1973年)※サントラ The Jazz Singer(1980年)※サントラ Love On The Rocks(1981年2位) Hello Again(1981年6位) America(自由の国アメリカ)(1981年8位) ■ The Monkees I’m A Believer(66年1位)
2016.08.30
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