伝説のカルト映画「ルシファー・ライジング」をめぐる2枚のサントラ

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昨年、チャールズ・マンソンが亡くなった(2017年11月19日)。

マンソンの率いた殺人カルト集団マンソン・ファミリーにはボビー・ボーソレイユという粋な殺人鬼がいて、彼は2018年6月21日と、ほんのつい最近二枚組アルバム『ヴードゥー・シヴァヤ』をリリースした。知る人ぞ知るといったところだが、彼は60年代伝説のバンドであるラヴに所属していたこともある非常に才能豊かなミュージシャンで、終身刑の身として獄中にありながらコンスタントにアルバムをリリースし続けている。

そしてボーソレイユ(仏語で「美しい太陽」!)の名に恥じない美男ぶりで、幼少期には2、3のハリウッド映画に出演、「ヘロインをきめて3回見ないと理解できない」(マリアンヌ・フェイスフル談)とされる伝説のカルトフィルム『ルシファー・ライジング』では主役を演じた。サン・クエンティン刑務所に投獄されているボーソレイユにインタヴューを試みた作家トルーマン・カポーティは、彼を「博奕打ち風伊達男」と褒めてるんだか貶してるんだか分からない形容さえしている(※注1)。

そんな彼が1981年に獄中からリリースしたアルバムが『ルシファー・ライジング』である。これはホドロフスキーに並ぶ US アンダーグラウンドシネマの象徴的存在であり、同時に黒魔術師でもあるケネス・アンガーが監督した同名映画のため作られたサウンドトラックだ。元々はレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが担当だったが、結局アンガーとペイジの妻シャーロットの間で揉め事が起きてしまい頓挫、そのニュースを刑務所で聞いたボーソレイユが手紙を送って後任に決まった。

殺人やら黒魔術やらアルバム周辺のスキャンダルには事欠かないものの、では肝心の内容はどうなのかというと、単なる珍品と思うこと勿れ、これが凄い。ボーソレイユの悪魔的としか言いようのないヘヴィなギターサウンドの空間構築力もさることながら、シンセからオリエンタルな音色までヴァリエーション豊かに駆使し、まるで「宇宙的サウンドスケープ」を築くような、辺境最深部に埋もれた傑作アルバムなのである。

AllMusic のJ・スコット・マクリントックという音楽批評家によれば、「クロード・ドビュッシーを経由したサイケ・プログレ」であり、初期ピンク・フロイドのモチーフも兼ねそなえているとのことだから、その音楽性の高さは疑いの余地のないものだ。

あまりの感動に彼のディスコグラフィーを一通り漁ってみたところ、60年代ヒッピームーブメントの東洋志向・神秘主義にどっぷりなものが多い。刑務所に入ったことで流行りものに触れることがあまりできなかったためだろうか、しかしそれが功を奏してディープリスニングが可能な、個性あるアルバムが量産されることになった。『7』とか数秘術を思わせるタイトルもある(コレも名盤デス!)。

ところでジミー・ペイジは2012年に『ルシファー・ライジング』のお蔵入りになったサントラを、jimmypage.com でアナログ限定発売している(ギュスターヴ・ドレの『神曲』挿画がジャケットに使用されていて非常にクール)。

結果としてボーソレイユ版とペイジ版の二枚を聴き比べることが可能になったわけだが、念仏を唱える声さえ聞こえる(?)ペイジのガチガチに東洋風のドローンサウンドは「ロック」という狭い範疇では捉え難く、たしかにアンガーが求める「ポップ・サタニズム」を表現するにしては、かなりスピリチュアル、かつ実験的過ぎる気がした(勿論、単品としては傑作ですが)。

ここまで音楽の話ばかりしてきたが、映画の世界でもマンソン・ファミリーへの熱い眼差しはいまだ留まることを知らない。タランティーノがレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットら豪華俳優陣を擁して、マンソン・ファミリー殺人事件を描いた映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を撮るというのだ。全米公開は2019年8月9日予定らしいが、この日は「シャロン・テート殺害50周年記念日」にあたるらしく、この罰当たりぶりに僕などは思わず「黒い笑い」がこみ上げてくる。

多少なりともボーソレイユが作中で描かれることはあるのか俄然興味が尽きないが、この記事を書いた身としては、是非とも彼の楽曲を一曲でも使って欲しいと思うのであった。


※注1:
『カメレオンのための音楽』(早川書房)所収の「そしてすべてが廻りきたった」より。訳者は作家の野坂昭如!


2018.07.25
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