ヴィンス・クラークとアリソン・モイエ、男女ユニットの先駆け、ヤズー
女性ヴォーカリストとヴォーカル以外のすべてを担当する男性による二人組のユニット。今では珍しくない組み合わせですが、その先駆者的な存在としてユーリズミックスが挙げられますよね(日本ではPSY・Sとかになるんでしょうか?)。
ユーリズミックスは1981年にデビューしていますが、「スイート・ドリームス」で世界的なヒットを記録したのは1983年。しかしそれ以前に全英シングルチャートで2位を記録するヒットを飛ばした男女ユニットがいます。デペッシュ・モードの殆どの楽曲を手掛けながらも突然脱退したヴィンス・クラークと後にソロシンガーとして活躍するアリソン・モイエによるユニット、ヤズーです。
直球かつシンプルなラヴソング「オンリー・ユー」
そのヒットしたファーストシングル「オンリー・ユー」。今聴くと薄っぺらくも感じてしまうアナログシンセの音。ちょっとチープ、無機質で冷たいようにも聴こえますが、メロディーの美しさがそうはさせません。そしてパワフルかつソウルフルなアリソン・モイエのヴォーカルとラヴソングとしては直球かつシンプルな歌詞によってむしろ暖かみを覚えます。
そしてこのピュアな名曲は早くも翌年、フライング・ピケッツというUKの男性アカペラグループにカヴァーされ、こちらの方はUKチャート1位を獲得します。ウォン・カーウァイ監督の『天使の涙』や日本のビールのCMにもこちらのヴァージョンが使用されましたのでこっちの方が有名かもしれません。
男勝りの力強いヴォーカルとポップ感満載のシンセサウンドの名曲
ヤズーはその後、「シチュエーション」、「ドント・ゴー」とシングルヒットを続け、デビューアルバムは全英2位、セカンドアルバム『ユー・アンド・ミー・ボース』は全英1位を獲得しますが、このアルバム発表後まもなく解散します。
ヴィンス・クラークはアセンブリーというグループを経てイレイジャーを結成、現在までコンスタントにアルバムをリリースしています。アリソン・モイエはソロシンガーとして活躍、90年代後半くらいからリリースは減りましたが、2017年には新作を発表しています。ソロとしてはライヴエイドでポール・ヤングと共演していたのが印象深いです。
しかしこのヤズー、男勝りの力強いヴォーカルとポップ感満載のシンセサウンドという音楽サイドに加えて、漫才コンビのような男女の凸凹な体型のルックス。このミスマッチの妙が何ともたまりません。日本での知名度はいまひとつかもしれませんが、まずはこの名曲「オンリー・ユー」から聴いてみてください。音数の少ないシンプルな名曲、身に沁みます。
※2017年10月26日に掲載された記事をアップデート
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2022.03.15