10月8日

2023年を感じながら聴く【80年代ロック名盤ベスト10】懐かしむより超えていけ!

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トーキング・ヘッズのアルバム「リメイン・イン・ライト」が米国でリリースされた日
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リマインダーが掲げる「懐かしむより超えていけ」スピリット満載の企画『2023年に聴きたい! 80年代ロック名盤ベスト10』。これは、単純に私の好きな80年代洋楽ロックのアルバムをカウントダウンするという主旨だけではなく、“2023年の今こそ聴きたい / 聴くべき”作品、即ち現行のロック / ポップとの関連性や影響力を強く感じさせるアーティスト、作品を優先して選盤させて頂いた。

また、取り上げた80年代作品と関連性が感じられる現行のロック / ポップ作品も併せて紹介させて頂いたので、温故知新なリスニング体験の一助になれば幸いだ。

第10位:TOTO IV ~聖なる剣 / TOTO


TOTOの代表作といって差し支えないだろう。80年代に数多あるAOR作品の中でもロック、もっと端的に言うと米西海岸ロックを感じさせる作品。

抜けの良い音像と抜群の演奏力でポップなナンバーからバラードまでバラエティ豊かな曲でアルバムは構成されており、一曲一曲のクオリティもすこぶる高く、グラミー6冠も伊達じゃない。本作は、現在レコード市場を席巻しているシティポップとの親和性の高さからも今聴くべき作品と言えるだろう。

そして、そんな『TOTO Ⅳ』から想起されるのは、ジョン・メイヤーが昨年リリースしたアルバム『Sob Rock』だ。プレイボーイとして浮いた話が絶えないジョン・メイヤーだが、その音はルーツロックに根差した渋い音像ながらも分かりやすいもので、大人のわがままな嗜好をも満足させる落ち着いたロックを聴かせてくれる。特に本作では、80sからの影響を強く感じさせる確信犯的な音づくりで、リマインダー世代をニンマリさせること間違いなしだ。

第9位:アーク・オブ・ア・ダイヴァー / スティーヴ・ウィンウッド


ブリティッシュロック史に燦然と輝くキャリアを残すレジェンドが1980年にリリースした大ヒット作。

ウィンウッドによるマルチレコーディングで作られた作品だが、80年代初頭のやや無機質なビートとウィンウッドが弾く温かみのあるシンセサイザーの音が融合しており、本作の大きな魅力となっている。また、イギリスから登場した数多のブルーアイド・ソウルのアーティストの中でも、スティーヴ・ウィンウッドの実力は別格で、暑苦しくないのにソウルフルな声を存分に楽しむことができる。

特にシングルヒットした「ユー・シー・ア・チャンス」は、長いウィンウッドのキャリアの中でも抜群のポップセンスを感じさせるナンバーだ。前述した温かみのあるシンセサイザーの演奏は、一度聴いたら忘れられない印象的なメロディーが心に沁みる。

イギリスからは、いつの時代にも魅力的なブルー・アイド・ソウルのシンガーソングライターが登場している。2023年の現在、私がオススメするアーティストは、レックス・オレンジ・カウンティだ。レックス・オレンジ・カウンティは、現在24歳。作り出すサウンドはソウルフルなポップ、決して汗臭くないスマートなもの。少し鼻にかかった声はイギリスのシンガーソングライターの王道の系譜と言えるだろう。特筆すべきはメロディーメーカーとしての資質の高さで、印象的なメロディーを紡ぎ出すセンスは抜群だ。本当にこれからが楽しみな若き逸材だ。



第8位:バック・イン・ブラック / AC/DC


9位までとガラリと変わって第8位にはAC/DCを選出した。オーストラリアが世界に誇るハードロックバンドで一貫してシンプルで無骨なロックンロールをハードに演奏している。

AC/DCの最大の魅力は、ギタリストでリーダーのアンガス・ヤングの弾くギターサウンドだ。その音色は固くてソリッドなのにブルトーザーがバキバキと突進するような力強さも兼ね備えている。そのサウンドはリスナーの快楽中枢を刺激して、一度ハマると気持ち良くて仕方ないのだ。本作、『バック・イン・ブラック』はエレキギターの快楽とともに粒ぞろいの楽曲を揃えることで、天文学的セールスを叩き出しているモンスター・アルバムだ。そして、現在のロックシーンを見渡すと気持ち良くエレキギターを鳴らすロックバンドというのは、実は少数派と言わざるを得ない。



多様化するロックシーンでは、ダンスミュージックやテクノロジーとの融合からロックの新たな表現を開拓する動きが目立っており、古典的なギターバンドは登場しにくいのかもしれない。ここ日本でもギターケースを抱えて歩いてる若者を見る機会はめっきり少なくなってしまったように思える。そんなギターロック冬の時代に熱いギターサウンドを聴かせてくれるアーティストがジャック・ホワイトだ。

ジャック・ホワイトは、元ホワイト・ストライプのギター/ボーカルで、バンド時代からハイテンションなロックンロールを鳴らし続けているアーティストだ。2022年のフジ・ロック・フェスティバルでは、ヘッドライナーとして大トリを飾り、圧巻のロックンロール・ショウをブチかましてくれた。

ジャック・ホワイトのギターサウンドは、ブルースをベースにしたシンプルなリフが特徴的だ。また、ミニマムに音階が下がっていくところが不気味でありながらも同時に癖になる。そんなところが彼の個性と魅力になっている。AC/DCが好きな方なら一聴の価値があるギターサウンドを体験できることを約束しよう。

第7位:ボーン・イン・ザ・U.S.A. / ブルース・スプリングスティーン


80年代アメリカンロックを象徴する作品であることに異論を挟む余地はないだろう。本作でスプリングスティーンは、アリーナやスタジアムでライブをすることを想定して音づくりに励んだそうだが、歌われる歌詞の世界観は基本的に一生活者の視点で社会に対して、人生に対して歌われている。

サウンドが派手になってもスプリングスティーン個人の眼差しで真摯に社会と対峙する一貫した姿勢が感じられるので、スタジアム化したとか産業ロックに走ったという批判を受けなかった理由なのではないかと感じる。スプリングスティーンは、これまでも躁な状態でつくるアルバムと鬱な状態でつくるアルバムが周期的に繰り返される傾向があり、本作は紛れもなく躁状態の作品だ。

この後、『トンネル・オブ・ラブ』という鬱状態に入った作品を作っており、こうしたことからも本人の精神状態が作品に反映されることなども含めて、我々ファンにウソがつけないアーティスト、真摯に表現に向き合うことしかできないアーティストという絶対的な信頼感を獲得したのではないかと私は感じている。スプリングスティーンは、多くのフォロワーを生み出しているが、最近のアーティストとして、私はイギリス出身の若手シンガーソングライター、サム・フェンダーをイチ推ししたい。

サム・フェンダーは、スプリングスティーンに比べるとまだまだ線が細く、ソングライティングも稚拙と言わざるを得ないが、その歌と演奏はストレートそのものだ。デビューアルバムでは、若さ故か政治的にトンチンカンなメッセージを歌ってしまう曲もあったりしたが、そんなところも含めて、この人はウソをつかない真面目な人という印象を与える。その真摯な姿勢とストレートにロックに向き合うサウンドからはスプリングスティーンとの共通項を数多く感じるのだ。

サム・フェンダーもまだ28歳、これからどのような人生を歩み、深みを増した歌を聴かせてくれるのか今後が楽しみなアーティストだ。

第6位:サブスタンス / ニュー・オーダー


インディー・ロックとダンスミュージックを融合したオリジネイターとして、多くの尊敬を集めるニュー・オーダー。初期の活動においては、シングルとアルバムは別物と分けており、オリジナルアルバム未収録のシングルがいくつもある。こうしたシングルのみでリリースされていた楽曲も含めて、クラブプレイ向けにリミックスした12インチバージョンも併せて聴くことができるベスト盤として『サブスタンス』はリリースされた。

実は彼らの代表曲「ブルー・マンデー」もオリジナルアルバムには未収録で、本作に収録されることで日本では多くのリスナーに届いたと思われる。ニュー・オーダーは、メンバーチェンジを経て、現在も積極的に活動しており、2020年にリリースしたシングル「ビー・ア・レベル」が現時点での最新曲だ。「ビー・ア・レベル」も整合感バッチリのデジタルビートにメランコリックなメロディーが歌われており、これぞニュー・オーダーというサウンドを聴かせてくれる。80sど真ん中のリマインダー読者にもグッとくること間違いなしの出来栄えだ。

ある意味、テクノロジーとの融合やロックの踊れる化が求められている現行シーンとの親和性を考えるとニュー・オーダーこそが最も今、聴くべきアーティストなのかもしれない。しかし、ニュー・オーダーの魅力を考えると、ダンスミュージックとしての機能性よりメランコリックで泣けるメロディーこそが最大の魅力だと私は感じる。そんなニュー・オーダーから喚起される現行アーティストとして、アーケイド・ファイアを紹介したい。

アーケイド・ファイアは、カナダ出身のインディー・ロックバンド。デビュー当初は、いかにもインディー・ギターロック然とした音づくりと佇まいだったが、次第に実験的なダンス・サウンドを取り入れて今日に至っている。

最新作『We』でもダンスロックと内省的でメランコリックなインディー・ロックが同居したサウンドを聴くことができる。本作は、これ以上やりすぎるとセルアウト、これ以上しずかにすると地味という絶妙なバランス感覚の上に成り立ち、聴きやすさとオルタナ感の両立した傑作に仕上がっている。

第5位:パレード / プリンス


プリンスのキャリアの中でもひときわファンク度の高いアルバムが『パレード』だ。
作品ごとに音の傾向を変え、ことごとくポップミュージックのスタイルをイノベーションしてきた80年代のプリンスが商業的成功と芸術的評価を理想的に両立することに成功した1枚が本作と言えるだろう。

比較的短いナンバーが曲間を置かずに畳み掛けてくるアルバムの構成もむちゃくちゃカッコ良くて気持ち良い。現在は、サブスクリプションで1曲1曲を楽しむ聴かれ方が主流なのかもしれないが、本作はアルバム1枚を通して楽しみたい作品である。



そして、現在、私が最もファンキーだと感じる音を鳴らしているアーティストが、ディアンジェロだ。ヒップホップの影響を受けたファンク・ビートにラップとも歌とも言い難い、呟きのようなファルセット・ヴォイスを乗せるスタイルは不思議な浮遊感とエロさも感じさせる気持ち良いサウンド。本作から得られる快感は、プリンスの『パレード』から感じられる気持ち良さと同じエロさからきているのかもしれない。是非、21世紀のねっとりファンクをご堪能頂ければ幸いだ。

第4位:イノセント・マン / ビリー・ジョエル


往年のポップスやR&Bの影響をストレートに反映したポップスアルバムが『イノセント・マン』だ。ビリー・ジョエルというアーティストの本質は、ポップ職人であると私は感じる。しかし、本人はロックシンガーだったり、メッセージ性の強いシンガーソングライターへの憧れも強く、『イノセント・マン』の前作『ナイロン・カーテン』では、貧困問題やベトナム戦争への反戦を歌ったメッセージ性の強い作品を作っている。

そこから一転して、肩の力を抜いた明るくポップな作風として『イノセント・マン』はつくられた。本作こそ、ビリー・ジョエルの本質であるポップ職人としての資質が全面に押し出され、とてもリラックスして聴くことができるのだ。センセーショナルな過激さやメッセージ性の高さがとかく評価されるロックシーンだが、本作のようなポップ作品の魅力も忘れてはならないと改めて感じさせる作品だ。

そして、今日、『イノセント・マン』と同じようにリラックスしたポップソングを心地良く聴かせてくれるのが、ハリー・スタイルズだ。ハリー・スタイルズは、イギリス出身のボーイズ・グループ、ワン・ダイレクションのメンバーで、昨年(2022年)、3枚目のソロ・アルバム『ハリーズ・ハウス』をリリースしている。

それまでのソロアルバムでは、アイドルグループ出身というイメージを払拭するための気負いが感じられたのだが、ソングライターとしての経験や実力が追いついてきたところで作られた本作『ハリーズ・ハウス』は、肩の力が抜けて、自然体のポップソングを奏でることに成功している。とにかく昨年、世界中でヒットしまくった作品であるが、内容の充実度を考えれば納得のセールスとチャートアクションだ。

極上のポップソングをでしゃばり過ぎずに落ち着いて聴かせてくれる本作は、ビリー・ジョエルの『イノセント・マン』との共通点が感じられ、日常のBGMとしてのながら聴きにも最適だ。何気ない日々の一コマをちょっと素敵にしてくれるポップスとして、どんな生活シーンにもそっと寄り添ってくれる品のある作品だ。

第3位:シンクロニシティー / ポリス


イギリスの初期パンク出身のバンドで最大の成功を手にしたバンドがポリスだ。レゲエを取り入れたサウンドが特徴ではあるが、本作『シンクロニシティー』では、レゲエにとどまらず、アヴァンギャルドなサウンドを取り入れた楽曲をA面に収録し、スティングのボーカルを最大限に活かした歌モノをB面に収録している。バラバラなサウンドの楽曲は、メンバーそれぞれの音楽的な志向の違いが如実にあらわれており、ひとつのバンドに納めきることができず、バンドの終末が近い状態にあったことが今となっては伺える。

しかし、作風が違っていてもその音像はタイトで無駄のない演奏とスッキリとした音色でまとめ上げられており、アルバムの統一感も申し分ない。むしろ、アヴァンギャルドな楽曲もアルバムの中では良いスパイスになっており、スティングのソロ・アルバムになってしまいそうな寸前でロックバンド、ポリスの作品として踏みとどまっているようにも感じられる。

『シンクロニシティー』は、アヴァンギャルドなのにポップ、実験が実験だけに終わらずにキッチリと成果を導き出している作品というのが私の印象だ。



そして、現在進行形で革新とポップの両立、商業的成功、アヴァンギャルドな要素までもポップに仕上げる手腕を兼ね備えたバンドとしてヴァンパイア・ウィークエンドを紹介させて頂きたい。

ヴァンパイア・ウィークエンドは、ニューヨーク出身のインディーロックバンド。繊細な音づくりの中にワールドミュージック的なリズムを取り入れているのが音楽的な特徴だ。現在まで4枚のアルバムを発表しているが、セカンドアルバムからの3作は全て米ビルボード・アルバムチャートの1位に輝いている。また、評論家からの評価も高く、辛口のローリング・ストーン紙やピッチフォーク紙でもクリティック・ポールの年間ベスト10の常連となっている。

実験精神とポップな要素が常に同居しており、ヴァンパイア・ウィークエンドを聴いていると「何か、俺って、センスいいヤツじゃん?」って私は感じることができるのだ。マニアックでもミーハーでもない、そんな音楽を好きな自分が好き… みたいなちょっとした優越感を感じることができて、そんなところもポリスに共通するバンドイメージなのかもしれない。

昨年(2022年)は、フジ・ロック・フェスティバルの初日のヘッドライナーとして出演しており、特別に凄い演奏を聴かせるわけではないのだが、一音一音を丁寧に紡いていこうとする演奏からは、音楽への深い愛が感じられ、とても好感が持てるライブだったことを付け加えておこう。

第2位:キューピッド&サイケ85 / スクリッティ・ポリッティ


まず、『キューピット&サイケ85』というアルバムタイトルがイカしている。もう、何のことなのか全く意味が分からないのだが、言葉の響きやミステリアスな雰囲気を醸し出していてリリース当時、中学生だった私は無性に惹きつけられる何かを感じていた。そして、ジャケットも少し古ぼけたポスター風のもので、取り立ててなんてことはないデザインでバンド名とアルバムタイトルが書いてあるだけなのだけれど、とてもお洒落なものに見えたことを覚えている。

肝心な音の方は、ソウルミュージックに影響を受けたポップスなのだが、全ての音をバラバラに録って、後から組み合わせたような質感でエレポップみたいな打ち込みとも違うし、当時としてはかなり斬新な音づくりを試みていた。今でこそヒップホップ的な手法の導入… などと表現する言葉は思いつくのだが、当時は全てが斬新でキラキラしていたことを覚えている。

スクリッティ・ポリッティのリーダー、グリーン・ガートサイドは飄々としたイメージやファルセットボイスから、とてもクールなイメージがあるのだが、実は熱い漢なのではないだろうか?

1枚のアルバムをつくるために膨大な時間を費やす資質からは、かなりこだわりの強い性格で頑固なところがあると私には感じられる。クールに見えても、実は熱男なグリーンの心意気をクールな音像の向こうから感じることができるのだ。



そんなクールで熱く、キラキラとしたポップを聴かせてくれる現在のロックバンドとして取り上げたいのは、マンチェスター出身のThe1975だ。

マンチェスター出身のロックバンドというと、ニュー・オーダー、スミス、ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ、オアシスあたりがすぐに思いつくだろう。どのバンドも一癖も二癖もあるバンドで、特にストーン・ローゼズ以降の3バンドは、ほとんどフーリガンと言っても良いほどのガラの悪さがトレードマークになっている。

しかし、The1975は、ルックスもスタイリッシュで、鳴らしている音も今どきのR&Bに影響を受けながらも、出自であるインディーロックの尖った要素を決して捨て去るようなセルアウトはしていない。現在までに5枚のアルバムをリリースしており、その全てを全英チャートの1位に送り込んでおり、アメリカでもトップテンヒットの常連となっている。

彼らの鳴らす音はマンチェスター出身とは思えないほどにキラキラしているけれど、捻くれたセンスや英国流のブルー・アイド・ソウルのエッセンスまで感じられる。最新作の『外国語での言葉遊び(Being Funny in a Foreign Language)』では、そこにチェンバー・ポップの要素まで加わり、ポップソングとして恐ろしく高いレベルにまで達している。

こちらも昨年のサマー・ソニックではヘッドライナーとして出演し、今年4月には単独公演での来日が予定されている。関東圏では1万人規模のアリーナクラス2回、大阪でも1回の公演をソールドアウトしており、日本での人気の高さも証明している。

第1位:リメイン・イン・ライト / トーキング・ヘッズ


今、聴くべき80s洋楽ロックアルバムの第1位には、トーキング・ヘッズの『リメイン・イン・ライト』を選盤させて頂いた。

本作は、黒人ミュージシャンの演奏を大幅に導入することで、ファンクやアフリカン・ビートを導入している。ポップミュージックの手垢にまみれていない様々な国や地域の音楽的要素を導入することで、新たなロックの刷新を図ろうという狙いがあったことは、容易に想像がつく。インターネットもない時代にこうした情報を集め、それを音楽に反映させることを試みたデヴィッド・バーンは、ミクスチャーの先駆者だったと言えるだろう。ミクスチャーした結果として得られた果実は、斬新なビートとパンク / ニューウェーブな尖った音像が同時に鳴っており、今聴いても充分に刺戟的だ。

今日の感性やインターネットを使った情報収集スキルを使えば、更に手垢にまみれていない斬新なビートを見つけ出すことは可能なのかもしれない。しかし、情報や新しいネタを見つけることができても、それをミクスチャーする優れた感性と処理能力が伴わなければ、最終的にアウトプットされてくる音楽はカッコよくならないだろうし、魅力あるものは生まれてこないだろう。そして、現在、こうしたミクスチャー感覚と膨大な情報量を音像の中にバッチリ落とし込むスキルに長けたバンドがブラック・ミディである。

ブラック・ミディは、ここ数年、活況を呈しているサウス・ロンドン・シーンを代表するロックバンド。その音は、フランク・ザッパをプロデューサーに迎えたキング・クリムゾンが、ザ・ポップ・グループの曲をカバーしているような感じで、一言で言うとまさにカオスなのだ。詰め込まれる音楽の情報量も膨大で、このあたりはインターネットを通じて世界中のありとあらゆる音楽に出会うことで、生み出された音楽スタイルなのかもしれない。

現在まで3枚のアルバムをリリースしている。初期の作品は、膨大な情報量と過激なアイデアが処理しきれておらず、とっ散らかった印象もあったのだが、昨年リリースしたアルバム『ヘルファイヤ』では、情報処理能力とアイデアを具現化する演奏技術が飛躍的に向上しており、大きな飛躍を遂げている。

さて、今日、知ることができる音楽の情報量はトーキング・ヘッズの頃に比べて大幅に増加している。しかし、その情報からインスパイアされ、新たな音楽スタイルを生み出すためのアイデアや演奏技術や情熱は時代が進んだからといって簡単に手に入れることができるわけではない。そう考えると、ブラック・ミディもトーキング・ヘッズもロックを一歩前に進めて、新しい音楽を自分たちの手で鳴らすのだという強い意志を感じ取ることができる。

こうしたイノベイターたちの果敢な挑戦が新たなロックのスタイルと価値観を更新し続けた結果、ポップミュージックの歴史が築かれてきたわけだ。ロックは、すでにできることをやり尽くしてしまった、過去の音楽スタイルを再生産して、リバイバルのムーブメントを生み出すしかないなんて言われ方もする。そんな物言いに対して、中指を立ててくれる頼もしいバンドがブラック・ミディだ。トーキング・ヘッズと同じ革新性を感じ取ることができるはずなので、リマインダー読者の皆さんにも、現在進行形の最新型ロックを体験して頂きたい!


―― 80年代のロック名盤を振り返り、現在のロックシーンを感じてみるという本企画。楽しんでいただけたでしょうか?

ただ純粋に自分の好きなアルバムを10枚選ぶという企画であれば、ここに挙げた作品も半分以上は入れ替わると思うのだが、今回、何よりも私が気を留めたことは、2023年の今、この作品がどのように受け止められ、どのように現在の感性にマッチする作品なのかということに拘って選盤させて頂いた。
本企画が、懐かしむより超えていけ! というリマインダー・スピリットを感じられるものとして、皆さんに届くことを期待したいと感じている。

なお、本コラムで紹介したアーティストの楽曲を80sアーティスト→現行アーティストといった具合に並べた『2023年に聴きたい! 80年代ロック名盤ベスト10』プレイリストをSpotifyで作ってみたので、興味のある方は実際の音を聴いて楽しんで頂きたい。

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2023.01.08
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カタリベ
1972年生まれ
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