ボーカリストは色々な言葉を発するもので、好きな詞をじっくり噛みしめるのはロックのひとつの楽しみ。
一方で、言葉にならない言葉が魅力を醸し出すこともある。ジェームス・ブラウンの “ハッ!” とか、ミック・ジャガーの “フーッ!” とか、いわゆる感嘆詞の類。正直、英語の詞は簡単には聞き取れないし、歌詞に関しては訳詞頼りだったりするが、こういうプリミティブな声は耳に飛び込んで来ただけで、熱いものを感じる。
当サイト主宰の太田氏は大学時代の同期で、当時呑みの場で、そんな話をよくしたものだ。今でも覚えているのは、T・レックス「ボールルームス・オブ・マーズ」の間奏前に発するマーク・ボランの “ロック!” というシャウトがどんだけかっこいいかを、氏が力説していたこと。厳密には感嘆詞ではない一単語なのだが、自然発生的シャウトであることを踏まえれば、これには自分も “んだ!” と深く頷くしかなかった。
とはいえ、そういう感嘆詞はかっこいい反面、どこかファニーに響いてくることもある。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「リラックス」は感嘆詞の宝庫だが、とりわけブレイク時に発せられる “ほぁー!” は、その直前の射精的効果音もあって、声に出してみると妙におかしい。当然、ロックの好きなバカ学生同士の呑みの場では笑いのネタになる。
大学3年の春、バカ学生の間に新たなファニー感嘆詞を持つ曲が投下された。トーキング・ヘッズの新譜『ネイキッド』のオープニングを飾る「ブラインド」。イントロから歌い出しの間のブレイク時にデイヴィッド・バーンが発する “ひーっ!” という咆哮だ。
トーキング・ヘッズは元々、感嘆詞が聴く者の頭にこびりつくバンドで、「サイコ・キラー」の “あいやいやいや~”、「ロード・トゥ・ノーホエア」の “はっ、はっ”、「レディ・ドント・マインド」の “おっおー、おっおー” という合いの手などなど、挙げたらキリがない。バーンのボーカルはよく通るし、歌い方にもクセがあるモンだから、気づけばしっかり刷り込まれているのだ。
それにしても “ひーっ!” だ。“はーっ!” “ふーっ” はよくあるが、“ひーっ!” を曲のアタマ、さらにいえばアルバムのアタマに持ってくるのだから、そりゃあインパクトがある。日本における “ひー” という感嘆詞は、困った驚きを表すことが多いが、バーンさんはブラインド状態で困っていたのだろうか。とにかく、呑みの場ではしばし “ひーっ!” というシャウトが飛び出すようになった。同じ飲み屋に居合わせた方々、騒がしくてすみませんでした…。
『ネイキッド』は最近でもよく聴くアルバムで、昔よりもかっこいいなあと思えるのだが、先日ロックバーでこの曲が大音量で流れたとき、酔い任せに “ひーっ” のところだけ、シンガロンしてしまった。同じバーにいた方々、騒がしくてすみませんでした…。
2018.04.09
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