日本のこともよく分からず、全然日本語も喋れない12歳の少年アンディ(架空)が来日したとしよう。果たしてアンディは「ゆず」と「コブクロ」の区別がつくだろうか?
「いやいや、ゆずとコブクロって全然違うでしょ!」
そう思うのは日本人だからで、外国人から見れば同じように見えてしまうものだ。
40年近く前、私はアメリカの片田舎にいた。アメリカのことも分からず英語も喋れない12歳の少年であり、当然「クール&ザ・ギャング」と「アース・ウインド&ファイアー」の区別がつくはずもなかった。
当時アメリカではクール&ザ・ギャングの「セレブレーション」(1980年)が大ヒットしており、銘柄は覚えていないがオレンジジュースの CM に起用されていたと思う。
常夏のビーチで金髪のグラマラスな女性がビキニ姿でオレンジジュースを飲んでいる。シズル感と言うのだろうか、缶ジュースとお姉さんの肌に水滴が弾けている。
テレビのスピーカーから流れる音楽からかろうじて聞き取れるのは「セレブレーション」と「ヤーフー」と「カモン」だけであった。もちろんその時この曲がクール&ザ・ギャングの曲などとは夢にも想像できなかった。
よく「洗礼を受ける」という言葉があるが、これは井の中の蛙が大海に出て自分の小ささを悟ることだ―― わずか12歳の子供が、ボン・キュッ・ボンのお姉さんがオレンジジュースを飲んでヤーフーとか言っている映像を観させられたら、それは文明開化の鐘が鳴るというものだ。
それからというもの、ショッピングアーケードに行くたびにレコード店に入り浸り、英語も読めないのにキーワードを頼りにレコードを探しまくった。確か当時5ドル77セントぐらいだったように思う(もしかしたらそれはシングル版の値段かもしれない)。
漸くたどり着いたクール&ザ・ギャングの「セレブレーション」のジャケットには黒人ミュージシャンが大勢映っていた。
「なるほど、この曲は黒人ミュージシャンユニットが歌っていたのか」
そんな事を思いつつ、家に帰って念願のボン・キュッ・ボン… 違う違う、念願の「セレブレーション」をフルコーラスで聴く。もちろん一発で彼らのファンになった。
後日、クール&ザ・ギャングの他の曲も聴いてみたくなり、“黒人ミュージシャンユニットのレコードジャケット” を手がかりに「セプテンバー」(1978年)を購入した。これがまた良い曲で、私はますます『彼ら』のファンになっていった…。
さて、仮にアンディがゆずの「公園通り」を聴いてファンになり、その流れでコブクロの「陽だまりの道」を買って、やっぱり『ゆず』っていいよなと言っても、私に彼を諫める権利はない。
2018.08.19
YouTube / KoolandthegangShow
YouTube / Earth Wind & Fire
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