「今回のコラムも妄想がハンパないですネ!」
Re:minderの編集担当はそう言うと、私に『妄想カタリベ』なるあだ名を付けた。妄想? 本気で書いているのに何を言っているんだろうか。この人は…(笑)。まあ、せっかくだからコレをお題に今回は思春期の頃を思い出してみようと思う。
まずは1981年の事である。「付き合いたい女子は南ちゃん!」と野球部のイガグリ頭が恥ずかしげもなく突然言い放った。思い起こせば、2次元に恋したヤツを見たのはこの時が初めてだった。それまで『ドカベン』『一球さん』といった水島漫画ばかり読んでいた野球少年が、野球を扱っているというだけで、あだち充の『タッチ』を手に取ってしまったのだから一大事。
スポ根に一喜一憂していた中学生の日常に『身近にいそうで、なかなかいない可愛い女の子』という剛速球が突然投げ込まれたのである。イガグリ君が下敷き代わりに使っていたクリアケースには、常にプロ野球選手の切り抜きが挟まっていたが、それがいつの間にか少年サンデーに掲載された浅倉南の切り抜きに差し替わっている。こいつはマジだ。
『タッチ』は『週刊少年サンデー』で連載されていた野球漫画(1981年~1986年)。高校野球を題材に双子の兄弟である上杉達也・和也と幼馴染みの少女・浅倉南の恋愛模様を描いている。あの当時、野球漫画の中で日常的な恋愛を描くあだち充の世界はとても眩く新鮮だった。でも現実の自分の周り、幼馴染みに浅倉南のような女の子はいない。第一、妄想しようにも双子じゃないし… 正直、2次元の恋人はいらない。
1982年、テレビドラマ『陽あたり良好!』が始まる。『タッチ』以前に描かれた あだち充の原点とも言うべき作品の実写化。下宿屋 ひだまり荘を舞台に高校生たちが繰り広げる恋と友情の青春ストーリーである。ひだまり荘に同居する下宿人達のアイドル・かすみちゃんに伊藤さやか。やばい、かわいすぎる。同じ屋根の下で男女が自然に合法的に同棲できてしまう下宿というシチュエーションもナイス。そう、求めていたのは生身の女の子とこういうリアリティなんだよ!
そして、主人公・高杉勇作を演じる竹本孝之が歌う主題歌を思わず口ずさむと… ああ、もう止まらない思春期特有の妄想超特急! 日曜の夜8時が訪れる度、下宿の大家さんの姪っ子・かすみちゃんとの爽やかで胸が熱くなる疑似恋愛。自分と同じ高校1年の主人公に激しく感情移入してまうのであった。
『陽あたり良好!』主題歌
とっておきの君 / 竹本孝之
作詞:小椋佳
作曲:馬場孝幸
編曲:鷺巣詩郎
発売日:1982年(昭和57年)4月1日
『陽あたり良好!』エンディングテーマ
二度とない時に / 竹本孝之
作詞・作曲:小椋佳
編曲:鷲巣詩郎
2016.08.27
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