ドラムは後ろにいるもの? そんな既成概念を打ち砕いたC-C-B
私は埼玉にある従姉妹の家に遊びに行っては『毎度おさがわせします』をコッソリ観ていた小学生だった。
少し年上の従姉妹はチェッカーズと中山美穂にハマっていて、当時のアイドル事情はほぼ彼女から学んだ。我が家ではひょうきん族は観せてくれても、あそこまで際どくエッチなドラマは暗黙の了解でチャンネルが変わっていたので、堂々と過激な番組を観られる時間はちょっとイケナイことをしているような気もしてワクワクした。
ドラマのオープニングはC-C-Bの「Romanticが止まらない」。『ザ・ベストテン』などの音楽番組全盛期に生放送で初めて演奏姿を見て衝撃が走った。テクノサウンドの中、ピンク色の髪、白ぶち眼鏡の高音のお兄ちゃんがドラム叩きながら歌っていた――
すごいインパクトだった!
ドラムは後ろにいるものという既成概念を見事に打ち砕いてくれた。スマスマのキャラクター “CCB吾郎” のエアドラムでその存在を知った人も多いと思うが、今の時代にこれだけ存在感のあるアーティストにはなかなかお目にかかれない。
インパクト抜群! 作詞:松本隆 / 作曲:筒美京平 / 編曲:船山基紀
そして、電子音で奏でられる
♪ テテテテテテッテレテーレレー
この曲は前奏(イントロ)、間奏のこのフレーズのインパクトが8割といっても過言ではない。
この楽曲は、作曲家の筒美京平、作詞家の松本隆。そして編曲家の船山基紀が打倒チェッカーズを掲げ、C-C-Bのメンバーとミーティングを重ねに重ねて制作されたものだという。
筒美京平は編曲の船山基紀に “ロックな前奏” を要求。メンバーは船山が用意した “歌謡曲的な前奏” を支持したというエピソードがある。これを後に船山氏は「長年一緒に仕事をしてきて “京平節” が染み付いていて、出てきたイントロだと思う」と話したそうだ。
ドラマ『電車男』で楽曲が使用されたときも、前奏のメロディーが鳴る度に「ああ今週もまた電車(男)がテンパってるな、頑張れ!」と2ちゃんの住人と同じように応援していた。一度聴いたら忘れないメロディー。これが時代を超えるヒットに繋がるのだと思う。
キャッチーなメロディーにぴったりハマる恋の世界観
歌詞についても触れておこう―― 私は “しどけなく” という言葉を39年生きてきて、ここでしか見たことがない。思わず意味を調べてしまった。
壁のラジオ 絞って
(Fu-Fu しどけなく)
遊びなのと聞いたね
(Fu-Fu ささやいて)
言葉では 答えない
抱いた手に 力こめる Tonight
誰か Romantic 止めて Romantic
息が息が 燃えるようさ
耳に残るキャッチーなメロディーにぴったりハマる文字数で語られる恋の世界観。字余りでも字足らずでもない。
奇跡の三位一体、絶妙なバランスのパフォーマンス
奇跡のイントロから耳に残る歌謡曲のようなフレーズ。低音の合いの手とエコーがかかったコーラスに支えられた “絶妙な曲” に “絶妙な歌詞” が絡んでいく。
それをギタリストとベーシストに囲まれたドラマーがセンターで高音で歌う。
その “絶妙なバランスのパフォーマンス” は、作曲陣、作詞家、アーティストの奇跡の三位一体によって成り立っている。
これをきっかけに私が、筒美・松本ペアのミポリン(中山美穂)のヒット曲を追いかけるように聴いたのは言うまでもない。時代を越えて色褪せることのない “奇跡” を生み出したクリエイターたちの出逢いに拍手を送りたい。
そして、この曲を教えてくれた従姉妹のさえちゃん、本当にありがとう!
歌詞引用:Romanticが止まらない / C-C-B※2018年1月28日に掲載された記事をアップデート
2020.01.25