言わずと知れた花の82年組の極北と言えば、中森明菜。そして、同じく82年結成のココナッツ・ボーイズ(のちの C-C-B)のオリジナルメンバーである関口誠人。
中森明菜が、関口の手により作曲された映画主題歌「天河伝説殺人事件」を競作シングル「二人静 -天河伝説殺人事件より-」としてリリースしたのは、91年の事だった。
86年の時点で関口の提供曲「Last Kissは頬にして」をもう一人の82年組、松本伊代がリリースしたという実績は既にあったものの、当時の歌謡界の勢力図からして、明菜のシングルに採用される事の持つ意味の重さからすれば比べるべくもないだろう――。
あ! でも、伊代ちゃんへの提供曲も「天河伝説殺人事件」と同じ作家陣=作詞:松本隆、作曲:関口誠人コンビでしたね。
ところで、明菜のキャラクターを陰としたならば、その対極にあった82年組は、陽を司る小泉今日子と言えるだろう。ちなみに「学園天国」ではバックバンドとして “三喜屋・野村モーター'S BAND” で渡辺英樹がベースを弾いている。82年組の両極を押さえてる C-C-B って凄くないですか?
そもそもココナッツ・ボーイズの出自は、ミニ FM局 KIDS の自主制作カセット『RASPBERRY AVENUE』(82年)にあり、彼らは和製ビーチ・ボーイズを目指すという触れ込みでそのキャリアをスタートさせている。のちに山下達郎とも共演するサーフインストバンド、パイナップル・ボーイズやアイドルグループ、オレンジ・シスターズなど、トロピカルなフルーツ名で彩られたグループのなかの一つだった。
山下達郎作曲の「ハイティーン・ブギ」がリリースされたのも82年だが、キーボードの田口智治は C-C-B 加入前、マッチこと近藤真彦のバックバンド、ダブルスに在籍。たのきんトリオの盟友、ヨッちゃん(野村義男)との縁で「ミッドナイト・シャッフル」では渡辺英樹もバックでベースを務めている。82年組だけでなく、たのきんまで押さえてる C-C-B って凄くないですか?(2度目)
そのマッチを叶わぬ恋の相手として選んだのが明菜。さらには竹内まりや作曲の「駅」の解釈を巡る明菜と山下達郎との因縁も横たわっていたりして、この辺りの相関図もなかなか興味深い。
ともあれ平成最後の2019年、C-C-B は平成元年の解散から30年を迎えた――。
かつて、シャ乱Qを “平成の C-C-B” と評する風潮に対してリーダー渡辺は「シャ乱Qの登場により、C-C-B が昭和のシャ乱Qと位置付けられたとも言える」と回答した。個人的に、90年代にバンドのフォーマットで活動し、歌謡マインドを体現できたのはシャ乱Qとザ・イエロー・モンキーと認識しているが、どちらもメジャーデビューを果たしたのは、明菜が「二人静 -天河伝説殺人事件より-」を歌った翌年(92年)の事だった。
2015年に渡辺英樹が亡くなり、5人揃った C-C-B が見られる日が叶わぬ夢となってしまったが、同様に昭和のような歌謡界が消滅してしまった今となっては「トップアイドルが、同期デビューのバンドマンが作った曲を歌う」という下克上の構図自体、描き得ない夢なのかもしれない。
2019.02.07
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