リマインダーと BS12 『ザ・カセットテープ・ミュージック』のコラボレーション企画、80年代に特化したトーク&ライブイベント「リスペクト」第2弾、題して、
『Re:spect vol.2 ― 人間交差点 ♪ 伊藤銀次』。
2018年9月24日(月・祝)13時30分~代官山 WGT にて、限定80席。前売4,900円。いよいよチケットの残り少なくなってきました。当日は、私がホストを務めさせていただきます。ぜひお越しください。
で、今回は、
『伊藤銀次 自伝 MY LIFE, POP LIFE』(シンコーミュージック・エンタテイメント)より、伊藤銀次氏を取り巻いた様々な音楽家による、印象的なコトバを追っていくことで、氏のリアルな歩みを、人間臭くたどっていく「人間交差点・コトバの交差点 ♪ 伊藤銀次」の「その3」です。
「その1」と
「その2」がナイアガラ系だったので、次はこの方のこのコトバを。
「せっかく今日これだけの人が集まってるんだから、このメンバーでやったらどう?」
コトバの主は加瀬邦彦。ザ・ワイルドワンズのリーダーにして、この当時は、沢田研二のプロデューサーとして、辣腕をふるっていたころです。シチュエーションは、沢田研二「おまえにチェックイン」(82年)のレコーディング。で、「このメンバー」とは誰かと言うと――。
―― それで加瀬(鈴木註:邦彦)さんが、「せっかく今日これだけの人が集まってるんだから、このメンバーでやったらどう?」って提案したんですね。それで急遽マイクを2本立てて、そこにジュリー、佐野(註:元春)君、大沢(註:誉志幸)君、僕の4人で立って、せーので「♪ チュルルル」ってやったんです。1テイクか2テイクで録れました。クレジットはされていないんですけど、コーラスはその4人です(『伊藤銀次 自伝 MY LIFE, POP LIFE』-シンコーミュージック-)
はい。「このメンバー」とは、沢田研二、佐野元春、大沢誉志幸、伊藤銀次でした。何という豪勢な4人でしょう。その4人が「せーの」で「♪ チュルルル」とやったのが、あのイントロなんですね。
細かい話ですが、その豪勢な4人が、2本のマイクで歌っているのがいいですね。4本ではなく2本というのが。こうなると、4人がどう分かれて、2本のマイクに向かったのかが気になります。イベント当日に確かめてみることにしたいのですが、私の仮説としては、上の並びそのままに、「沢田研二、佐野元春」と「大沢誉志幸、伊藤銀次」で分かれたような気がするのです。というのは、加瀬邦彦のこんなコトバもあるからです。
「この子凄いじゃない!」
これは、「おまえにチェックイン」の2年前、シチュエーションは、沢田研二のアルバム『G.S.I LOVE YOU』のレコーディング。佐野元春が作った「彼女はデリケート」のリハーサルに、佐野自身が飛び入り参加し、「ライブが始まったみたいなテンション」(前掲書)で歌い出し、それに加瀬邦彦が驚き、発したコトバです。
この「彼女はデリケート」レコーディング話には続きがあります。それも非常に重要な。というのは、この佐野元春に感化されたことが、80年代前半の「ニューウェーブ沢田研二」のガソリンとなったような気がするからです。ではその続きを、伊藤銀次オフィシャルブログ『サンデー銀次』より。
――「次は僕が歌うよ。」
目が輝いている。そこにはオフの沢田さんではなく、まぎれもないアーティスト、ジュリーが立っていた。佐野元春の体をはった歌いっぷりに刺激を受け、じっとしていられなくなられたのではと思う。佐野君が沢田さんのロック・スピリットに火をつけたのだ。
そのときの沢田さんの歌には鬼気迫るものがあった。まだまだ負けてないぜという、ロッカーとしての意地みたいなものが、歌のあちこちからバチバチ弾けていた。そして炸裂するようなオケを録ることができた。「彼女はデリケート」はまさに「G. S. I Love You」のハイライトになるセッションだった。
(出典:
伊藤銀次オフィシャルブログ『サンデー銀次』)
若き佐野元春に感化された沢田研二。ボーカリストとしての佐野元春をリスペクトしていたはずです。だから、マイク1本を佐野と2人で分け合ったと見るのですが、どうでしょうか。
これはあまり指摘されることがないのですが、80年代前半の「ニューウェーブ沢田研二」の歌い方は、どことなく佐野元春に近いものを感じます。さらに言えば、佐野元春の歌い方のあのビート感を装備することで、「ニューウェーブ沢田研二」が成立したと思うのです。そしてその歴史的契機は、「彼女はデリケート」のレコーディングにあったと。
というわけで、イベント当日は、「ナイアガラコーナー」に加えて「ジュリーコーナー」も設けて、伊藤銀次氏の、沢田研二との色々な経験もあれこれと聞いていきます。アルバムで言えば、『G.S.I LOVE YOU』だけでなく、私が大好きな『S/T/R/I/P/P/E/R』(81年)のロンドン録音の話も含めて。よろしくおねがいします。
2018.09.15