6月21日

作詞家 松井五郎の世界を堪能!時代を超えた《男性ボーカル・エールソング編》

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矢沢永吉、氷室京介といったトップシンガーへの提供も


作詞家・松井五郎が手がけた作品をまとめたプレイリスト『“G-ism”松井五郎セレクション〜男性ボーカル編【おとラボ】』が、大好評の “女性アイドル編” に続いて、各ストリーミングサービスで2023年5月に公開された。松井五郎といえば、中森明菜、柏原芳恵、工藤静香といった女性シンガー、アイドルへの提供曲も多く、ヒットソングの請負人という印象も強いが、どうやらそれだけは括れないオリジナリティがあるようだ。

松井は、チャゲ&飛鳥(現:CHAGE and ASKA)のセカンドアルバム『熱風』に収録されている3曲を手がけたことから作詞家としてのキャリアをスタートさせている。その後、安全地帯への楽曲提供が多いことから “6人目の安全地帯” と囁かれる。男性アーティストへの楽曲提供も多数で、矢沢永吉、氷室京介といったトップシンガーへの提供も目立つ。

時にはスタジアム級のステージから、時には電波に乗せて多くの聴衆を熱狂させるトップシンガーに共通する点は、聴き手に夢を見させるということだろう。あくなき夢、人生において最も重要なモチベーションについて、圧倒的とも言える力量で歌い上げることだ。だからこそ長きに渡り、多くのファンに支持されているのだ。彼らの楽曲に聴き手は人生を託し、それぞれの心象風景を描く。だからこそ、松井が手がけるリリックにも強い共感性が不可欠だった。



BOØWYの大ブレイクに欠かせなかった松井五郎の存在


個人的な話で恐縮だが、筆者が松井五郎というクレジットを最初に気にしたのは、BOØWYのサードアルバム『BOØWY』のオープニングナンバーとして収録されていた「Dreamin'」からだった。作詞のクレジットには布袋寅泰と松井が連名で記されている。周知の通り、この『BOØWY』というアルバムは、彼らの大ブレイクのきっかけとなる1枚だ。そしてこの大ブレイクの狼煙がオープニングナンバーの「Dreamin'」だと思う。

 右へならえで落ち着き
 一日を選べない
 人形ともちがわないOH NO!
 そんな奴らは好きじゃない
 俺はそんなにバカじゃない
 ハートは今ここにあるWOW

当時、BOØWYのファンは、圧倒的に十代が多かった。人生も目標も定まらず、十代特有の焦燥と未来に対するぼんやりとした不安の中で、「Dreamin'」の直情的なリリックにどれだけ励まされた人が多かったことだろう。一見反逆的なメッセージソングに思えるが、ここに自分を信じる強い気持ちと、タイトルのように大きな夢を抱く大切さが内包されていることに多くの聴き手が気づいたはずだ。

あえてアルバムのイメージを決定づけるオープニングナンバーにメンバー以外がサポートするということは、BOØWYの大ブレイクに松井の存在が欠かせなかったことは明白である。ちなみにこのアルバムで松井は、「黒のラプソディー」、「ハイウェイに乗る前に」(どちらも氷室京介と共作)と合わせて3曲に参加している。



言葉に秘められた力強さを最大限に引き出した「NATIVE STRANGER」


そして、BOØWY解散後も氷室は松井に全幅の信頼を寄せ、15曲に詞を提供している。その中でも、メッセージ性が強く、「Dreamin'」から一貫したあくなき挑戦をテーマにしているのが15枚目のシングルとしてリリースされた「NATIVE STRANGER」だった。

 過去を解き放つ
 なにを失くしても
 いまをはじめたい

―― というメッセージはソロシンガーとして不動の位置を築きながらも現状に満足せず、さらなる高みを目指す氷室そのものを描いているようにも感じた。つまり「Dreamin'」や、「NATIVE STRANGER」で描かれる目の前の壁を突き破るようなパワー、言葉に秘められた力強さを最大限に引き出す手腕も松井の世界観のひとつである。

矢沢永吉の極上のメロディに乗せた松井五郎の美学


また、矢沢永吉が93年にリリースした「東京」も松井の提供楽曲だ。矢沢流の周りの空気の色を変えてしまうような洗練されたメロディと、情感ほとばしる歌い方で発せられるリリックは、単なるラブソングではなく、その背景にある登場人物の心情まで聴き手に想起させる。

 わずかな夢の名残だと
 乾いた心で生き急ぐ
 俺たちどこかで同じ孤独を
 きっと知りすぎている

―― 東京という街で出会った男女の愛の行方を切なく描きながらも、ここで終わらせたらいけないという焦燥と夢を見ることの大切さを語りかけてくれているようである。



今回のプレイリストの表題にもある “G-ism” とは、松井五郎の美学とも感じ取れる。これは、夢を追いかける純粋無垢な気持ちを忘れてはならないという聴き手に向けたエールではないだろうか。いつの時代も変わらない普遍的なメッセージを移り変わる時代の情景に合わせてリリックに忍ばせる手腕は松井ならではだ。


■ 松井五郎プロフィール
1981年CHAGE and ASKAで作詞家としてスタート。以後、安全地帯、氷室京介、工藤静香、郷ひろみ、田原俊彦、吉川晃司、V6、矢沢永吉、ビリーバンバン、五木ひろし、田村ゆかり、水樹奈々、平原綾香、森山良子、Kinki Kids、杉山清貴、岩崎宏美、沢田知可子、山内惠介、Sexy Zone、田村芽実、藤澤ノリマサ、竹島宏など(順不同)など幅広いジャンルのアーティスト、更にアニメや特撮、また、パク・ヨンハ、東方神起、など韓流アーティストにも多くの作品提供を行う。2023年現在までに3,500曲を越える数の作品を手がける。2009年「また君に恋してる」坂本冬美でレコード大賞優秀作品賞を受賞。2010年同曲で特別賞、JASRAC賞・銅賞を受賞。2018年「さらせ冬の嵐」山内惠介「恋町カウンター」竹島宏でレコード大賞作詩賞受賞など受賞。同年「さらせ冬の嵐」山内惠介で藤田まさと賞受賞。「はじめて好きになった人」2020年竹島宏で作詩大賞特別賞受賞。

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2023.05.28
60
  “G-ism”松井五郎セレクション〜男性ボーカル編【おとラボ】
 

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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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