10月29日

ロックとパンクの壮大なパロディ、キッチュが売りのフランキーとジグジグ

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フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのアルバム「ウェルカム・トゥ・ザ・プレジャードーム」が全英でリリースされた日
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photo:FANART.TV  
photo:Discogs  

「キッチュ」(kitsch)という語はドイツ語起源で、「俗悪なもの」、「まがい物」、「けばけばしいもの」を意味する。

例えばモナリザをプリントしたマグネットやTシャツ、金メッキを施した仏像やしゃちほこは悪趣味でキッチュだ。そしてキッチュは伝染する。プラスチック製のオメガ似の腕時計なんて、つけている人の人格まで疑われかねない。

ところがキッチュは、現代美術やファッションではむしろ評判が良い。

現在のポップアートの原点、日常品をプリントして大量生産したウォーホルによる『キャンベルのスープ缶』。トイレの便器にサインを入れたマルセル・デュシャンの『泉』。ファストファッションやストリートファッションではすぐに変わる流行、低価格、大量生産が前提で、大衆的通俗的なキッチュと相性がいい。

僕らの回りはキッチュで溢れているのだ。

真にオリジナルなものなどもはやないといわれる。この曲はあの曲の一部を拝借しているし、このメロディはかつての曲のパクリだったりする。

さてロック界でキッチュなバンドを二つ挙げるなら、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドとジグ・ジグ・スパットニックに違いない。彼らはそれまでのロックやパンクを前提に、その要素をとりだして誇張してみせ、壮大なパロディを展開した。

フランキーといえばPVも含め挑発や政治性ばかりが注目されるが、その存在と手法はキッチュの極北といえるものだ。

デビューアルバムを2枚組で出して話題性を振りまき(すなわちそれまでのロック産業の常識を揺さぶり)、バート・バカラック、ブルース・スプリングスティーンといった王道ロックをカバーして、ほとんどカラオケに近い工夫のないヴァージョンを収録した(「マイ・ウェイ」を歌うシド・ヴィシャスがお手本か)。

ジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリン)のドラムの音を使用したといわれる機械的な音の反復とサンプリングしかり。ジャケットがピカソのパロディなのは明白で、しかもモデルが全員男性!まさに大衆的通俗的なロック産業を、これでもかというほど卑猥に猥褻に描いてみせた。

そしてジグ・ジグ・スパトニック。安っぽいジャケット、挿入された意味不明な語(あれは日本語だろうか。まさに機械翻訳の原点だ)、話題先行の販売戦略(15億円の契約!)、打ち込みとサンプリングばかりの厚みを欠いた音。

すべてがキッチュの条件を満たしている。

フランキーは当然として、ジグジグもそれなりに確信犯だったはずだ。ジョン・ライドンは彼らについて、とてつもないジョークだ、わかってやってるんだろと言っていたらしいが、まさに彼らのチープな音こそがパンクの(壮大でなく、かつ姑息な)パロディだった。

その意味で80年代のこの時期に出るべくして出た音楽だった。彼らはそのパンクスをもじったような奇抜なファッションとキッチュな音作りによって、パンクを形骸化させ、茶化し、パロディにしたてあげた。

キッチュなる方法論が有効に機能することをロック史上(市場)初めて明白に示したのは、フランキーとジグジグの功績ではないだろうか。

さて余談となるが、BOØWY解散後にソロ活動を開始した布袋寅泰がジグジグを好んで流用していたのは一聴明らかなのだが(本サイトで田中泰延さんが布袋寅泰との関係を書いています)、当時の僕はむしろ、一緒にアルバム制作をしていたホッピー神山さんのスタイルと捉えていた。

そんな布袋 / ホッピーのアルバム『GUITARHYTHM』では、全編の打ち込み音に、骨太ロックを思わせる、しかしリズミカルなギターが絡んで心地よく、当時ほんとうによく聴いた。

それにしても、何故かall英語の歌詞、布袋さんの(お世辞にも、上手いとはいえない)歌唱で録音されたこのアルバムは、キッチュを意識したパロディだったのか、それとも目新しいサウンドへの反応だったのか。

2017.04.24
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1966年生まれ
スモーキークリーム
わたしも当時「Guitarhythm」は愛聴しておりました。
ホッピー神山氏と下山淳氏との「RAEL」と共にA面B面のようにして聴いていた記憶もあります。
「RAEL」は今も1年に1度位は聴いておるのですが、
「Guitarhythm(それにしてもスペルがややこしいねぇ)」はご無沙汰なので
久しぶりに聴いてみることにしましょう!
よいきっかけを有難うございました。
2018/06/02 18:28
1
返信
カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
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