10月10日

宝塚退団から1年、黒木瞳の初主演映画「化身」主題歌は高橋真梨子「黄昏人」

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1980年代、渡辺淳一原作の女性映画で活性化した東映


日本の映画産業は、1960年代以降観客数・劇場数とも緩やかに下降しながら停滞していました。1980年頃になると、角川書店やフジテレビといった異業種からの参入により活性化され始めます。それまで時代劇やヤクザ映画を中心に製作してきた東映もアニメや香港映画等様々な分野の製作・買付にビジネスを広げます。

そして、その中の一つに “女性映画” がありました。80年代前半は『鬼龍院花子の生涯』をはじめとする宮尾登美子原作ものを、そして中盤からは渡辺淳一原作ものが続けて映画化されます。第1弾として製作されたのが1985年『ひとひらの雪』。原宿に建築設計事務所を持ち大学の講師も務める48歳の伊織(津川雅彦)と彼をめぐる女性たちとの愛欲劇。特に秋吉久美子演じる霞が、伊織の手首を「今度は私が遊びます」と言って縛ったり、霞の着物をまくり上げ「孔雀になればいいんだ」と伊織が迫るあたりは東映ロマンポルノ。

そして翌1986年第2弾として製作されたのが藤竜也・黒木瞳主演『化身』でした。

46歳文芸評論家の秋葉(藤竜也)には38歳編集者の愛人史子(阿木燿子)がいる。北海道から出てきて銀座のクラブで働く24歳の八島霧子(黒木瞳)を見出し、自分好みの洗練した淑女に育てるために、服や髪形を彼好みに変え、高級マンションを買い与え、代官山の洋服リサイクルショップの出店資金2000万円を調達する。彼女はどんどん華麗になり、自立する女性へと化け、ある夜彼女から別れ話を切り出す。マンションを飛び出す彼女を追いかける秋葉。その先にいたのは、そしてその理由は…

宝塚歌劇トップ娘役から大人の女優へ 黒木瞳の女優としての“化身”


私が黒木瞳の存在を初めて意識したのは、高校2年生の時。当時黒木瞳のお茶会に参加するくらい濃いヅカファンの友人(アメリカンフットボール部所属・趣味は宝塚歌劇、読書、古い日本映画、特撮、アイドル、アニメ等)がおりました。宝塚沿線に住んでいた私は一度宝塚歌劇を観たいと思っており、初めて連れて行ってもらったのが1985年6月、大地真央・黒木瞳退団公演『二都物語 / ヒートウェーブ』。大劇場3階席から見下ろすステージは米粒サイズ、彼の持参した双眼鏡を黒木瞳が出ていないシーンで時々借りての観劇でした。

退団から約1年。宝塚時代は水着も御法度だったのに、黒木瞳はいきなり大胆なヌードシーンのある役に挑みます(今回観直すと、阿木燿子先生がしっかり露出しているのにも驚きなのですが)。

それでも『ひとひらの雪』ほど淫靡な感じがしないのは、黒木瞳のフレッシュさ(秋吉久美子の人妻感とは対象的な)、渡辺淳一が「さらりとよくまとまっている」と評価した那須真知子の脚本、そして「コンセプトは喜劇、大人向けの色っぽい喜劇」と言う監督・東陽一の演出によるものなのかなと。秋葉が霧子に振り回される中年男の哀れな様は、客観的には正に喜劇。“ウディ・アレン作品のよう” と言うと褒め過ぎ?

主題歌は高橋真梨子「黄昏人」


主題歌は高橋真梨子の「黄昏人(たそがれびと)」。作詞:松井五郎、作曲:亀井登志夫、編曲:久石譲。映画の雰囲気にぴったりのアダルトな歌詞、アーバンでムーディーな曲調。

 青ざめて揺れる摩天楼(まちあかり)
 うそ泣きの涙のしわざで
 濡らしたシャツから覚えた
 あなたの香り 思い出した

 似合わない声を立てた夜
 星のかけらばかり見ていた
 背中をなぞれば あの時
 見つけたホクロ 場所がわかる

 いつも気まぐれなひと
 どうせあぶなげな夢
 だけど女でいるしかない

 燃えて燃え尽きるまで
 思いこがれる果てに
 誰もみな 黄昏人

1984年「桃色吐息」の大ヒットで高橋真梨子を知った世代から見ると、本作でアダルト歌謡を歌うことについて違和感はありませんでした。しかしながらご本人は「桃色吐息」の詞を康珍化から渡されたとき、

「すごい恥ずかしい詩でしょ、えーっこれ歌うの、どうしようと思った。最初曲だけ聴いたときには、ああいい曲だなって、気にいってたんだけど、自分が描いた詩のイメージと全然違ってたからもうビックリなんてもんじゃなかった」

… と高橋真梨子は言っている。

「ちょっとエロティックな感じの詩でも、真梨子ならいやらしく聞こえないから大丈夫だよ。歌ってみて」

… とプロデューサーのヘンリー広瀬も言った。

「桃色吐息」のヒットで積極的にエロティックな歌詞を歌う


「桃色吐息」の大ヒットに気を良くしたのか、その後はむしろ積極的にエロティックな歌詞を歌うことが多かったような感じがします(私の大学時代のサークルの友人が彼女のファンで、カラオケに行くと必ず彼女の曲を歌うのですが、中でもタイトルだけでパンチの効いているのが「ヒ・ラ・ヒ・ラ淫ら」)。

「桃色吐息」で最後まで揉めたのは、歌のポイントとなる「吐息」の部分の歌い方。真梨子が恥ずかしいと言ったように、歌い方一つで、女性のあのときの声に連想がいきそうな際どい部分。「といき」じゃなく「♪とーいきっ」と多少強調した歌い方をイメージが崩れると心配する声も上がったが、「確かに『といき』と普通に歌ってたら、売れなかったかも知れない」とヘンリーと真梨子はのちに語っている。

そう思って「黄昏人」を聴くと、サビの部分「燃え尽きるまで」を「♪燃え尽きるっまでー」と軽く強調しているように聴こえてきます。

『化身』の配給収入は5.5億円、前作『ひとひらの雪』5億円と安定した数字ではあるものの、その後三田佳子主演『別れぬ理由』、岩下志麻主演『桜の樹の下で』がこの水準を超えることは残念ながらありませんでした。渡辺淳一作品が爆発的な大ヒットとなるのはそれから約10年後の『失楽園』。主演は役所広司、そして黒木瞳でした。


引用・参考文献
「高橋真梨子 とびらを開けて」(川上貴光 / 文藝春秋)

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2021.10.10
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カタリベ
1967年生まれ
高橋みき夫
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