9月29日

BOØWY シングルレビュー ①:大衆に支持されたBOØWYとチェッカーズの共通性

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一時代を築いたアーティストの曲数としては、異例の少なさ


80年代のヒットチャート好きな私がBOØWYを語るのも悪くないだろう―― そんな訳で、BOØWYシングル曲レビューを担当する古木です。BOØWY全盛期に中学生だったど真ん中世代になります。ただし、MORALの頃から聴いていたガチ勢ではなく、初めてBOØWYを耳にしたのは「B・BLUE」で、そこから遡って聴き始めたという、一般的に最も多いであろうケースに該当する者です。せめて、わがままジュリエット位はリアルタイムで聴いておきたかったとも思いますが、如何せん、この時点ではオリコン最高位39位(売上3.6万枚)だったので、気付けなかったのは仕方なかったかもしれません。しかし、彼らは瞬く間にロック界だけでなく歌謡界まで含めた日本の音楽界を制する、巨大な存在となっていきました。そこで今回私は、「80年代の歌番組・ヒットチャート好きが回想するBOØWY」という目線から、彼らのヒット曲を振り返ってみたいと思います。うん、BOØWYのGIGに一度も足を運べなかった私がBOØWYを語るのも悪くないだろう(笑)。

まず、彼らのシングル曲を振り返るにあたり気付かされたのが、シングル発売曲の少なさであります。並べてみても「ホンキー・トンキー・クレイジー」「BAD FEELING」「わがままジュリエット」「B・BLUE」「ONLY YOU」「Marionette -マリオネット-」「季節が君だけを変える」。僅かに7作品なのです(※1)。ただし、これらのうち「BAD FEELING」「ONLY YOU」「季節が君だけを変える」の3曲は、アルバムリリース後のシングルカットの位置づけだったので、純粋に “新曲” としてリスナーが触れたシングル曲となると4作品ということになります。これは、一時代を築いたアーティストの曲数としては、異例の少なさと言って良いでしょう。

「ホンキー・トンキー・クレイジー」実はTUBEと同じシングルデビュー


そんな彼らのファーストシングルは、1985年6月1日発売の「ホンキー・トンキー・クレイジー」。モータウンなリズムに乗せたゴキゲンなビートと、サビから始まるキャッチーなメロディは今聴いてもヒット性抜群ですが、オリコンチャートでは100位圏内にも入らず、世間ではまだまだ水面下の存在でした。

テレビへの露出が少ないことでも知られたBOØWYですが、私が常々思うのが、彼らがもしこの時点でザ・ベストテンの「今週のスポットライト」に出ていたらどうだったかな? ということです。すでにこの時期、彼らは渋谷公会堂を満杯にし、巷では話題になっていたので、もしかしたら出演オファーの候補くらいには上がっていたかもしれませんが。ちなみに、シングルデビュー日が全く同じTUBE(当時はThe TUBE)はザ・ベストテンのスポットライトに出ており、一足早くヒットチャート戦線に登場しています。もしBOØWYも番組に登場していたら、この曲からオリコンの左側ページ(50位以内)には入っていたでしょうが、結果的には、この時期のメディア露出は無くて正解だったのでしょう。

そして、セカンドシングルの「BAD FEELING」はアルバムからのシングルカット曲でありながら、リミックスバージョンとして、この時代に流行った12インチシングルとしてリリース。カップリングには、彼らの代表曲のひとつである「NO. NEW YORK」(再録音バージョン)が収録されています。

同時期のチェッカーズとは裏表の関係?「わがままジュリエット」


サードシングルの「わがままジュリエット」で、いよいよBOØWYは世間一般の水面下から顔を出してきます(『夜のヒットスタジオDX』初出演で氷室さんの初恋の相手が登場!なんて言う一幕もあったりしました)。その曲調は「ロマンティックな歌謡ロック」。…と言ったところですが、こうした一言で片づけるのは乱暴かもしれません。

BOØWYの音楽的ルーツを思い起こした時、矢沢永吉を擁したのキャロルの再来と見る向きもあるでしょうし、70年代のT・レックス等に代表されるグラムロックの影響、さらには80年代前半のニューウェイヴ的価値観など、様々な要素を見出すことができるからです。

しかし私は思うのです。彼らが天下を獲った要因、すなわち他のロックバンドと一線を画していた部分とは何か。それはやはり、曲作りの “歌謡曲性” が、他のロックバンドと比べてアタマ一つ分、秀でていたからではないかと。そういう意味では、同じく地方出身ながら中央を征服したバンド、チェッカーズとの共通性が浮かび上がります。

この2バンドに共通するのは、メンバーの作曲能力の高さ。そして、“J-POP” よりも “歌謡ロック” という言葉が近く感じるウェット感です。そして、このウェット感の源になっているのが、ある種のヤンキー性であり、この部分こそ90年代のJ-POPが切り捨てていった文化だと思うんですよね。この、同時代に大衆に支持された、ほぼ同世代の2バンドは、実は表裏一体の関係、表=チェッカーズ / 裏=BOØWYだったのかもしれません。

ついにベストテン入り!「B・BLUE」に感じた新鮮な興奮と異質さの正体


4枚目のシングル「B・BLUE」で、彼らはついにオリコンチャートで最高位7位(ザ・ベストテンでも8位)に入り、これが名実とともに彼等の出世作となります。私も含め、当時この曲でBOØWYの存在を知ったという人は多かったのではないでしょうか。

「BOØWY? けったいなグループ名だなぁ…」というのが当時の私の第一印象。この頃(1986年下期)のヒットチャートを振り返ってみると、中森明菜や少年隊が安定的に上位を占める中で、おニャン子系が初動売上でチャートを荒らす以外に特筆すべき点が無い状況にあり、BOØWYの登場は新鮮な興奮がありました。その一方で「むむ…! 歌謡界のど真ん中に異質な物が割って入ってきたな…」そんな、衝撃とも戸惑いとも形容し難い複雑な気持ちを抱いたのも事実でした。

その “異質さの” 正体は何かと言うと、従来のヒットソングとの “球筋の違い” とでも言ったら良いのでしょうか。“快速球だけど、球筋が重い” そんな印象を抱きました。そのサウンドは、キャッチャーミットにシューっとうなりを上げてズシン!と吸い込まれる鉛のようなストレート。

1年前にレベッカが台頭してきた時も同じような事(=従来の流行歌に無い異質さ)を感じていましたが、BOØWYでいよいよヒットチャートの地殻変動を実感した感じです。ちなみに、CDプレーヤーが市場に出回り始めた時期でもあり、貸しレコード屋で、それまでチェッカーズや安全地帯はアナログ盤を借りていたけど、レベッカやBOØWYはCDで借りようかな… 何故かそんな気持ちになったのを覚えています。

メジャーであり続ける恍惚と苦悩、氷室と布袋に宿る筒美京平的精神


ここまで、BOØWYがとんとん拍子で駆け上がった時期のシングル曲群を振り返ってきましたが、私が注目したいのは、先にも書いたとおり、彼らが様々なバックボーンを持ちながらも“ヒット曲を狙って当てる事ができる大衆性” をしっかり兼ね備えていた点です。かつて、Mr.Childrenの桜井和寿がCROSS ROADを作曲した際に「100万枚売れる曲が出来た!」と叫んだというエピソードは有名ですが、この桜井さんや、桑田佳祐、そして氷室京介と布袋寅泰あたりに共通するのは、そうしたある種の “筒美京平的精神” が、トップを張るアイデンティティを下支えしているのではないかと考えるのです。そう考えると、氷室京介が自身のファイナルコンサートのオーラスに、敢えてBOØWYの出世作である「B・BLUE」を持ってきたのは、メジャーであり続ける恍惚と苦悩を誰よりも理解していた彼からの、ファンへの粋な恩返しだったことが推察できます。

ここまで、1985年から1986年にかけてのBOØWYのシングル曲の足跡を振り返ってきました。彼らは1986年の11月17日付のオリコンチャートで、アルバム『BEAT EMOTION』が初登場1位を記録することとなりますが、この段階で、1年後に彼らが解散を発表することを、果たしてどれだけの人が予想していたでしょうか。

(※1)1988年2月3日、BOØWYの解散宣言後にリリースされた「DAKARA」は除外

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2021.10.20
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カタリベ
1972年生まれ
古木秀典
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