11月8日

BOØWY「BEAT EMOTION」人生狂わせるカッコよさ、圧倒的未来志向アルバム!

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刺激的な4人編成バンド、リアルタイム世代が感じた興奮を追体験


人の音楽の好みは14歳の時に聴いた音楽で形成される、という説がある。説というより『NYタイムズ』に掲載された由緒正しき研究結果であり、ググってみたらこのRe:minderでも中川肇さんが自身のケースを元に検証されておられる記事(『検証「音楽の好みは14歳の時に聴いた音楽で形成されている」って本当?』を参照)が見つかった。

では自分の場合はどうかといえば、1986年生まれ(早生まれ)の私が14歳のときに流行っていたのはGLAY、L'Arc~en~Ciel、LUNA SEAといったポップ色の強いロックバンドで、多聞に漏れず私も新譜が出るたびに聴き狂っていた。特にこの3グループは競うようにしてヒット曲を連発し、学校のクラスでは “GLAY派”、“ラルク派” なんて具合に総裁選よろしく熾烈な派閥争いが繰り広げられていたものだ(そしてあまり学校に来ない、胸ポケットにバタフライナイフを隠し持ったヤバい奴は大体 “黒夢派” だった)。

あれから約20年が経った。その後いろいろな音楽を聴き、ハマり、傾倒もしてきたが、どのアーティストにも通底する「メロディがキャッチーで演奏が派手。見た目がイケてる」という好みのルーツは、なるほど彼らにあったのかとハッとさせられた。

“14歳” という明確な定義付けに如何ほどの信憑性があるのかは置いておいて、多感な年頃に触れた音楽がその後の人格形成に深く関わること自体は間違いないだろう。そしてまた、触れた音楽の刺激が強ければ強いほど、その与える影響も比例して大きくなる。

’80s半ばのティーンエイジャーにとって、見るからに刺激的な4人編成バンド・BOØWYがまさにそうした存在だったと聞く。その代表作ともいえるアルバム『BEAT EMOTION』を聴いてみると、まるで当時の少年達が感じた興奮を追体験しているような気分に浸ることができた。

ただ者じゃない!後追い世代が直観した掛け値なしのカッコよさ


一部の若者の間で熱狂的に支持されていたバンドは、4枚目のアルバム『JUST A HERO』が一定の評価を受け、あとは商業的な成功、すなわちチャート1位を見据える段階になっていた。そして前作から8ヶ月という短いスパンでリリースされたのが、本作『BEAT EMOTION』である―― といった背景はもちろん知る由もなく、私がBOØWYに初めて触れたのはたしか大学に入学した後だから、2000年代の中頃だっただろうか。

氷室京介、布袋寅泰というソロでも大成功を収めた両スターが在籍していたバンドで、そのエッジの効いた音楽性やパフォーマンスが音楽業界に多大な影響を与えたことは、雑誌等で伝え聞いていた。あとは「ライブハウス武道館へようこそ!」という有名なフレーズをなんとなく知っていたくらいか。

予備知識としてはこの程度だった完全なる後追い世代だが、とりあえず代表作ということで初めて聴いてみた『BEAT EMOTION』は、CDを再生して10秒で「ただ者じゃない」と直感できるほど掛け値なしのカッコよさに満ち溢れていた。今回、あらためて聴き直してもまったく色褪せていないどころか、年を重ねて多くの音楽に触れたことで、その普遍的な魅力はより一層鮮やかに浮かび上がってきた。

その前に、まずはアルバムのジャケットについて触れねばならない。白地の背景に、モノクロに切り抜かれた氷室と布袋がポーズを決めるデザインはまったく古めかしくなく、『BEAT EMOTION』という声に出して読みたくなるカッチョいい響きも含めて「これは勝負作だ」という明らかな攻めの姿勢を感じさせる。 仮に現代のバンドが同じジャケット、同じタイトルで作品をリリースしても何ら違和感はないだろう。そのくらい洗練させた、時の洗礼に耐えうるルックスの作品であることにまずは敬服する。

ロック史上に残る名イントロ「B.BLUE」


アルバムの先陣を切るのは「B.BLUE」だ。疾走感あるドラムとシンセが心地よく絡み合い、続いて「ジャララ、ジャララ、ジャララ」という布袋のギターで華やかに幕を開けるこの曲。当時のバンド少年たちがBOØWYになりきり、こぞってイントロをコピーしまくった光景が瞼に浮かぶ。この曲をトップバッターに持ってきた時点でアルバムの勝利は決まったも同然。それくらいインパクトの強い、ロック史上に残る名イントロだ。

続く「ONLY YOU」は、冒頭のコードストロークとアルペジオの音色が耳に馴染むラブソング。余計なものを削ぎ落としたシンプルなバンドサウンドに氷室のややハスキーな歌声が絡み合う。

アルバムでも屈指のキャッチーなナンバー、いわば “4番を張れる曲” をいきなり2連発で繰り出す構成は、ともすればその後の展開が退屈になりかねない諸刃の剣でもある。しかしこのアルバムはそんなにヤワじゃない。氷室作曲の至極のミディアムバラード「DON'T ASK ME」、アルバム唯一の本格バラード「B・E・L・I・E・V・E」でしんみりと折り返すと、B面は一転してアッパーな楽曲の連続で攻め立てる。

映画『メリー・ポピンズ』の同名曲を大胆にフィーチャーし、途中にはモーツァルトまで登場する遊び心に富んだ「SUPER-CALIFRAGILISTIC-EXPIARI-DOCIOUS」、雨の夜を舞台に別れた相手への未練を描いた「RAIN IN MY HEART」はシングルカットされても不思議ではないクオリティだ。ドラマー高橋まことが作詞を手掛けた「DRAMATIC? DRASTIC!」等を経て、ラストを飾る「SENSITIVE LOVE」のシンプルなバウンドサウンドが爽やかな余韻を残す。

「BEAT EMOTION」で感じるBOØWYの野心


勢いみなぎる14曲49分間のアルバムをひと通り聴き終えて、まず最初に抱いたのが「思ったほど80年代っぽくない」という感想だった。言い換えるなら「古さを感じない」。もちろん当時ならではのサウンド表現も端々に見受けられるが(そしてそれは決して悪いことではない)、トータルでみれば圧倒的に未来志向の作品。なんというか、「オレたちが日本の音楽を変えてやるんだ」という野心が、35年の歳月を経てもなお、ひしひしと伝わってくるのだ。

ポップとロックの融合とでも言うべき斬新な音楽センスは、あきらかに90年代以降の音楽業界を席巻したビートロックの雛形であり、本作、そしてBOØWYという存在が後世に与えた影響力をあらためて認識することができた。とくにGLAYはもろにそのフォロワーであり、作詞作曲をメインで務めるTAKUROが中学生の時に聴いた「B.BLUE」に衝撃を受けて音楽を始めたというのは有名な話だ。

そりゃそうだろう。14歳や15歳の時分にリアルタイムでこんな刺激的なバンドが出てきたら夢中になるに決まっている。音楽の好みの形成どころか、BOØWYに人生狂わされた読者の先輩方もきっと大勢おられることだろう。とにかく今聴いてもめちゃくちゃカッコいい!

BOØWY 40thアニバーサリー特集「ライブハウス武道館へようこそ」

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2021.10.19
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カタリベ
1985年生まれ
広瀬いくと
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