11月21日

作詞家 松井五郎の世界を堪能!時代を超えた《男性ボーカル・ラブソング編》

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ロックバンドとの共作も多数、時代を彩った大ヒット曲が多い松井五郎


2023年5月、各ストリーミングサービスにてプレイリスト『“G-ism”松井五郎セレクション〜男性ボーカル編【おとラボ】』が公開された。“G-ism”は、作詞家・松井五郎の自選プレイリストのシリーズ名で、本編は前月の “女性アイドル編” に続く第2弾となる。

松井五郎は、自身もヤマハポピュラーソングコンテスト(通称“ポプコン”)に出場するなどアーティストを目指していたこともあり、ロックバンドやシンガーソングライターと共作する機会が他の作詞家よりも比較的多く、本プレイリストでも安全地帯「悲しみにさよなら」や氷室京介「KISS ME」、HOUND DOG(ストリーミングでは大友康平名義で配信)の「BRIDGE~あの橋をわたるとき~」など、時代を彩った大ヒット曲が多い。

それに加えて、郷ひろみ「逢いたくてしかたない」、田原俊彦「ロマンティストでいいじゃない」、池田聡「濡れた髪のLonely」といったアーバンなボーカリストでのヒット実績も少なくない。男性ボーカルの場合は、アーティストと同じ目線でも、プロデューサー的な俯瞰した視点でも歌詞が描けるということだろうか。とにかく印象的な作品が特に多い気がする。

男性アーティストに提供したラブソング“隠れ名曲”を中心に5曲をセレクト


今回は、その中でもラブソングにフォーカスを当ててみるが、彼が男性アーティストに提供したラブソングは総じて深いものが多い。今回は、その中でも、あえて各種ランキングに上位入りしていない“隠れ名曲”を中心に5曲を選んでみた。なお、今回もこの順位は筆者個人が、より陽の目を浴びてほしいと強く願う順であって、決して優劣を示すものではない点をご了承願いたい。

作曲者玉置浩二の魂の叫びが聞こえてきそうなメロディーに乗せた歌詞が激アツな名曲


第5位:川畑要「かまわない」(作曲:玉置浩二、編曲:トオミヨウ)
2015年のシングル曲。「奪いあって 許しあって」や、「壊しあって 重ねって」といったフレーズから、何かを犠牲にした上で初めて成り立つ恋愛が描かれたミディアム・バラード。そのただならぬ情景が想起される歌詞が、作曲を手がけた玉置浩二の魂の叫びが聞こえてきそうなメロディーに乗り、また当時、CHEMISTRYを活動休止している中で、ソロの代表作にしたいという川畑自身の気負いも加わっているのか、目を逸らすことすら許されないほど激アツな楽曲だ。

ミステリアスな歌詞に注目、中森明菜との競作シングル


第4位:梶原秀剛「月華」(作曲:梶原秀剛、編曲:佐藤準)
1994年のシングル曲。梶原は、和を感じさせる退廃的なメロディーと、河村隆一のように妖しげな色香を放つ歌声が魅力のシンガーソングライター。そういった世界観が中森明菜サイドの目に止まり、楽曲提供および競作シングルという形でのリリースになった(明菜の「月華」は2023年5月時点では、ストリーミング未配信)。

明菜版は、サビの「抱きしめて 愛にふれて」や「Ah恋は Ahどこへ」をパワフルに歌い上げることで性愛の昂ぶりを露わにしているのに対し、梶原版はAメロの「ひとりがつらくて きっと」や「見つめられながら そっと」を、声を裏返して歌うことで、艶めかしさが浮き出てくる。双方を併せて聴けば、 “月華”の歌詞がよりミステリアスに。



ORIGINAL LOVE、鈴木雅之が競作。裸一貫で愛を貫くような猛々しさ


第3位:ORIGINAL LOVE「ソウルタトゥー」(作曲・編曲:田島貴男)
2003年のシングル「美貌の罠」のカップリング曲。こちらは、2004年に鈴木雅之もアルバム『Shh…』で歌っているが、鈴木版は、そのソフトな歌声ゆえ、それまで抱えてきたすべてを包み込むような大人の余裕を感じさせる。

これに対しオリラヴ版は、「潤うKissをどこにしてほしい」や「なにも聴こえない/いつだって/その鼓動以外」といったフレーズを田島が語気を強めて歌っていて、たとえすべてを失っても、裸一貫で愛を貫くような猛々しさが感じられる。田島の自作詞曲以上にネイキッドなのが興味深い。

平井堅が一念発起、切ない歌声の対比が絶妙なダンス・チューン


第2位:平井堅「affair」(作曲:243、編曲:京田誠一/URU)
2000年のシングル「楽園」のカップリング曲。平井が、5年近く鳴かず飛ばずの末、一念発起して自作詞以外のシングル曲で勝負。メロウなR&Bナンバーの「楽園」とは打って変わって、「affair」は、無機質な打ち込みと切ない歌声の対比が絶妙なダンス・チューン。しかも、真夜中の雨の中、震える“君”とは、ただならぬ関係になるしかない…と、相手を抱きしめていくストーリー展開は、もはや匠の領域であろう。

本作の大胆な愛の描写が「LOVE OR LUST」や「Strawberry Sex」に、また緻密なストーリー性が「Ring」や「瞳をとじて」といった平井の自作曲に影響を与えたのではないかと思えるほど、本作の歌詞をじっくり味わってもらいたい。

フィリピンでは国民的愛唱歌、オリジナルは松井五郎×崎谷健次郎


第1位:崎谷健次郎「涙が君を忘れない」(作曲・編曲:崎谷健次郎)
1991年のシングル曲。別れた相手を今でも忘れられないという心情を、「涙」を主語にすることで、涙が出るほどに深い想いだと伝わってくる。また、その深さの分だけ、「なにもかもが あの頃のままの 愛に眠っている」や「君の微笑みは 瞳を閉じても いつまでも消えない」といったシンプルな言葉もより深く響く。



本作は、Aメロとサビだけを覚えればほぼ歌えるし、歌い上げは気持ちよさそうだし、郷ひろみ「逢いたくてしかたない」あたりが好きな方が十八番にしそうなほどスタンダード感が強い。…と思って崎谷健次郎の公式サイトを見たら、なんとフィリピンでは現地の言葉で国民的愛唱歌になっているとのこと(実際、Spotifyで幾つものカバー・バージョンが100万回再生を超えている)。

これも、松井五郎×崎谷健次郎によるオリジナルが深く真直ぐ届いたことで人々を動かしたのだろう。

以上、特に聴いてもらいたい5曲を紹介したが、プレイリスト内には他にも、人生経験を重ねたからこそ深く理解できるものも数多い。松井五郎の描くラブソングには、年齢のせいにして諦めかけた熱情や純情を取り戻せるだけのチカラが宿っている。


■ 松井五郎プロフィール
1981年CHAGE and ASKAで作詞家としてスタート。以後、安全地帯、氷室京介、工藤静香、郷ひろみ、田原俊彦、吉川晃司、V6、矢沢永吉、ビリーバンバン、五木ひろし、田村ゆかり、水樹奈々、平原綾香、森山良子、Kinki Kids、杉山清貴、岩崎宏美、沢田知可子、山内惠介、Sexy Zone、田村芽実、藤澤ノリマサ、竹島宏など(順不同)など幅広いジャンルのアーティスト、更にアニメや特撮、また、パク・ヨンハ、東方神起、など韓流アーティストにも多くの作品提供を行う。2023年現在までに3,500曲を越える数の作品を手がける。2009年「また君に恋してる」坂本冬美でレコード大賞優秀作品賞を受賞。2010年同曲で特別賞、JASRAC賞・銅賞を受賞。2018年「さらせ冬の嵐」山内惠介「恋町カウンター」竹島宏でレコード大賞作詩賞受賞など受賞。同年「さらせ冬の嵐」山内惠介で藤田まさと賞受賞。「はじめて好きになった人」2020年竹島宏で作詩大賞特別賞受賞。

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2023.05.27
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  “G-ism”松井五郎セレクション〜男性ボーカル編【おとラボ】
 

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カタリベ
1968年生まれ
臼井孝
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