私はニッポンの働くお父さんたちを心から尊敬している。長年にわたり粛々とお勤めを続けて、家族を養うという偉業をこなし、尚且つ休日にも家族が喜ぶことを提供し、時には掃除や食事の用意や片付けも、イヤな顔一つせず、丁寧に楽しそうにこなす。私が幼いころから目にしてきた、父、叔父、祖父たち、皆の姿だった。社会に出てから知り合ってきた会社の同僚や音楽仲間、ご近所のお父さんたちも、家族、愛する人、仲間を大切にし、常に明るく自己管理をし、お互いのためにさりげなく力を貸しあう。すごいなと思う。
私の父は普段はお人よしでおどけてばかりで、威厳など少しも醸し出さない。子供がなめた口をきいても笑ってやり過ごす。そんな父にふっと聞いたことがある。「なぜ、お父さんは毎日お仕事をして家族全員を養っているのに、さらに家のこともするの?」すると、父はこう答えた。「ん? お母さんに感謝してるからだよ。おいしいご飯を作ってくれて、ありがたいから食器を洗いたいんだよ。」なんだか、泣けた。父親の大きさと深みを知った。
夏休みともなると、そんな父母は子供たち姉弟3人をいろんなところに遊びに連れて行ってくれた。思い出す夏のビーチ。灼熱の太陽を浴びてやけどするように熱い砂の上を、走り抜けて海に飛び込む。塩辛い透明な海で魚を追いかけたり。ビニールと間違えて触ってしまい、クラゲに刺されたり。砂の城をつくっては、波が壊してさらっていく様を眺めたり。
BGMは両親の好きなサザンオールスターズで決まりだ。よく覚えているのは、いとしのエリーとチャコの海岸物語。桑田佳祐の唯一無二の歌声と並外れた音楽センス。誰もまねできない、神がかっている。サザンオールスターズのメンバーの仲の良さも楽曲に反映されていて、まるで、一つの家族のよう。桑田さんは、ニッポンの音楽界のお父さんみたい。
いつもそこにいてくれて、いい音楽を作り続け、最高のパフォーマンスをしてくれて当たり前。それがずっと続くと思っていた。病気で倒れた時にはじめて桑田さん、サザンの存在の大きさに気付いた。復活してくれてよかった。ずっと色好きで、ずっとバカもやってほしい。
桑田さんやサザンのみなさんも、日本の素敵なお父さんたちも、その生き方をまだまだ私たちに示してほしい。本当に大切なことはさりげなくて、気づかないことが多いけど、そのことに気付く日々でありたい。
2016.08.10
YouTube / サザンオールスターズ
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