7月21日
稲垣潤一「夏のクラクション」がぼくに切なく鳴らした警鐘
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なぜ稲垣潤一の歌声はあんなに切ないんだろう?

1983年、社会人になって2年目の夏。毎日が夏休みのようだった大学の頃とはうって変わって、いつも仕事に追われ(それが楽しくて)、恋はしていてもまるで恋愛的な情緒の欠けた日々を過ごしていた時期に、稲垣潤一の「夏のクラクション」を聴いて泣けてきた。

愛とか恋とか好きとか嫌いとか一言も歌わない、強烈なラブソング、というか、失恋の歌。

もちろんフィクションに違いない。でも、フィクションと知りながら、その世界に吸い込まれていってしまう、魔法のようなエンターテインメントには、細部にも重要な意味があって。

あの夏、なぜあんなに心が動いたのか確かめたくて、「夏のクラクション」の歌詞を読みなおしてみた。

歌詞を目で追うと、頭のなかで稲垣潤一がそっと歌い始めて、歌詞には描かれていない風景を連れてくる。1983年の夏、ぼくが経験した時間のいくらかが戻ってくる。

スイッチは彼の歌声だ。

どことなくシャイで、頼りなげで、だけど自己主張のある歌声。そのキャラクターが当時の自分に重なって、ぼくは彼が歌う世界で泣いたんだろう。

日常は平穏で、非日常はひりひりわくわく刺激がある。最初は非日常だった恋愛も、いつか日常の平穏にまぎれていってしまう。

社会人2年目の夏、ぼくにとっては、仕事が非日常だった。ひりひりもわくわくもしていた。平穏の大切さをナメていた。

当時は気付かなかったが、切ない声で歌われた稲垣潤一の「夏のクラクション」が、ぼくに警鐘を鳴らしていたのだ。



夏のクラクション / 稲垣潤一
作詞:売野雅勇
作曲:筒美京平
編曲:井上鑑
発売:1983年(昭和58年)7月21日

2016.07.07
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カタリベ
1959年生まれ
藤本真
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