1月18日

80年代は洋楽黄金時代【カバー曲 TOP10 番外編】やっぱり音楽は記録より記憶?

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記録ではなく “記憶” に残るカバー曲は?


僕は仕事柄、クライアントに何かを説明したり、提案したりする際に「ファクトベース」で語ることを心掛けている。「ファクトベース」とは、要するに「ファクト=事実」に基づくということだ。話が客観的な事実に基づくことで、相手を納得させやすくなるという訳である。そもそも、クライアントは僕の個人的な「思い」を訊きたいのではなく、自分たちにとって合理的な「解」が知りたいだけなのだ。

…で、僕にはこういう癖(へき)があるので、リマインダーのコラムを書く時でさえ「ファクトベース」な語り口になってしまう。ちなみに、ここでの「ファクト」とは、音楽メディアが発表したランキングだったり、楽曲のチャートアクションだったりする訳だが、とにかくデータや記録といった「ファクト」を重視してきたのである。

だが、「ファクト」が常に僕たち一人一人の感覚に合致しているかというと、全くそんなことはない。個人が入手できる情報の量や範囲はその人の立場・状況によって異なるし、入手した情報をどう消化するかもその人の能力や嗜好(志向)に大きく依存する。

これは僕自身にも当てはまる話で、僕が見聴きできる音楽、知りうる音楽情報に限界はあるし、それらを個人的な好みによって取捨選択している以上、僕の頭に残ったり心に刻まれたりする音楽は、良くも悪くも偏っているに違いない。

僕は今年5月にリマインダーで『80年代は洋楽黄金時代【カバー曲 TOP10】一粒で二度おいしいのがポップスの基本?』を発表したが、そこで紹介した楽曲は全て全米・全英チャート上の「記録(という名のファクト)」に基づいて選んでいる。つまり、僕個人の好みや実感値は必ずしも反映されていない。だが、実際にはこれらとは別に、僕の「記憶」に強く残っている楽曲がたくさん存在している。

そこで、今回は【カバー曲 TOP10 番外編】と題して、必ずしもシングルとして大ヒットした訳ではないが、僕にとって印象的だったバージョンを紹介したいと思う。つまり客観的な「記録」より僕の個人的な「記憶」を優先した訳だが、1980年代当時の日本のロック少年には、ある程度は共感してもらえるのではないだろうか。

【第10位】 スティング / リトル・ウィング


ソロアルバム第2弾『ナッシング・ライク・ザ・サン』に収録。シングルリリースはない。オリジナルはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスの1967年の作品で、米国の音楽誌『Rolling Stone』が2021年に発表した「The 500 Greatest Songs of All Time」では188位に選ばれている。数々のアーティストにカバーされているが、スティングのバージョンは何と言っても、マイルス・デイヴィスとの共演・共作でお馴染みのギル・エヴァンスによるアレンジと、ブランフォード・マルサリスによるソプラノサックスのソロが秀逸で、耳の肥えたジャズファンにも十分に受け入れられる出来だと思う。

【第9位】 U2 / ヘルター・スケルター


彼ら自身を描いたドキュメンタリー映画『魂の叫び(Rattle And Hum)』のサウンドトラックに収録されたライブバージョン。オリジナルはもちろんザ・ビートルズ。1968年にリリースされた『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』のC面6曲目。彼らの作品の中で最もハードロックな曲であり、ポール・マッカートニーのボーカリストとしての凄さを思い知らされる。多くのカバーバージョンが存在するが、中でもU2は原曲に忠実なアレンジで演奏していて、彼らの先達への敬意がとても感じられる。



【第8位】 エリック・クラプトン / ビハインド・ザ・マスク


アルバム『オーガスト』に収録。オリジナルは我らがYMO。1979年にリリースされ、爆発的ブームのきっかけになったアルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の一曲。それがマイケル・ジャクソン、グレッグ・フィリンゲインズを経由してエリック・クラプトンの元に辿り着いた。坂本龍一の作曲だが、まるでギターで作ったかのようなコード進行である。当初は高橋幸宏の名前もクレジットされていた記憶があるが、海外に行ったら何故か消えてしまった。いずれにせよ、世界で知られる数少ない “日本人の楽曲” の一つである。



【第7位】 ジェフ・ベック / ピープル・ゲット・レディ(With ロッド・スチュワート)


アルバム『フラッシュ』に収録。オリジナルはカーティス・メイフィールドを擁するR&Bコーラスグループ、インプレッションズの1965年のヒット曲で、2021年発表の「The 500 Greatest Songs of All Time」で122位に選ばれている。ジェフ・ベックのバージョンのクライマックスは、何と言っても旧友ロッド・スチュワートとの16年振りの共演だろう。息の合ったパフォーマンスはもちろん、ミュージックビデオを観るだけでもジーンと来てしまう。ちなみに、ロッド・スチュワートは1993年の『MTV Unplugged』でもこの曲を披露した。



【第6位】 ザ・ローリング・ストーンズ / ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー


ジャケットデザインを日本人画家のカズ・ヤマザキが担当したライブアルバム『スティル・ライフ(アメリカン・コンサート'81)』に収録。オリジナルはスモーキー・ロビンソンを擁するミラクルズの1966年のヒット曲。ザ・ローリング・ストーンズのバージョンでは81年の北米ツアーの音源が使われていて、シングルリリースもされている。このツアーはアルバム『刺青の男(Tattoo You)』のリリース後にプロモーションを兼ねて行われたが、もの凄い盛り上がりで、この頃が彼らのキャリア上のピークだと言う人もいるくらいであった。



【第5位】 コミュナーズ / さよならは言わないで(Never Can Say Goodbye)


セカンドアルバム『レッド』に収録。1985年に英国で結成されたシンセポップデュオで、カテゴリ的にはペット・ショップ・ボーイズに近い。オリジナルはジャクソン5の71年のヒット曲だが、74年にはグロリア・ゲイナーがカバーしてヒットさせている。コミュナーズのバージョンは、どちらかと言えばグロリア・ゲイナーを踏襲した、完全なディスコサウンドである。また、サビでマイケル・ジャクソンが「I never can say goodbye girl」と歌っているところをコミュナーズは「I never can say goodbye boy」に変えていて、そんなところもこのデュオの特徴と言える。

【第4位】 シンディ・ローパー / ホワッツ・ゴーイン・オン


セカンドアルバム『トゥルー・カラーズ』に収録。オリジナルはマーヴィン・ゲイで、彼の政治意識が色濃く反映されていると言われるが、サウンド的には1971年のリリース当時最も洗練されたソウルミュージックだったと思う。2021年発表の「The 500 Greatest Songs of All Time」では6位。シンディ・ローパーのバージョンは、エイドリアン・ブリューがアレンジとギターで参加しているせいか、原曲とは一風変わった雰囲気だ。また、大の日本贔屓としても知られる彼女は、東日本大震災直後の2011年3月21日、大阪NHKホールで日本の国旗を背中に羽織ってこの曲を歌ったそうである。

【第3位】 ザ・パワー・ステーション / ゲット・イット・オン(Get It On(Bang a Gong))


アルバム『ザ・パワー・ステーション』に収録。ロバート・パーマー(ボーカル)、デュラン・デュランのジョン・テイラー(ベース)とアンディ・テイラー(ギター)、元シックのトニー・トンプソン(ドラムス)の4人によるプロジェクトで、1984年に結成された。オリジナルはT・レックスで、71年リリースのアルバム『電気の武者(Electric Warrior)』に収められている。グラムロックの代表格として英国や日本では大人気だったが、米国ではこの曲しかヒットしなかった。ザ・パワー・ステーションのバージョンは原曲に忠実ながらも、プロデューサーのバーナード・エドワーズによってデュラン・デュラン寄りの味付けがなされている。



【第2位】 ヘイガー、ショーン、アーロンソン、シュリーヴ / 青い影(Whiter Shade Of Pale)


アルバム『炎の饗宴(Through The Fire)』に収録。後にヴァン・ヘイレンに加入することになるサミー・ヘイガー(ボーカル)が、ジャーニーのニール・ショーン(ギター)と共に、ケニー・アーロンソン(ベース)とマイケル・シュリーヴ(ドラムス)に声を掛けて実現したプロジェクトで、4人の頭文字を取って “HSAS” とも記載される。1984年に本作をリリースしただけで自然消滅した。オリジナルはプロコル・ハルムの67年のヒット曲で、曲を通して流れるハモンドオルガンのサウンドが印象的だ。それに比べると、HSASのバージョンは原曲の素晴らしさを全く踏襲していないが、とにかく彼らはこの曲を演りたかったのだろう。

【第1位】 ヴァン・ヘイレン / オー・プリティ・ウーマン


アルバム『ダイヴァー・ダウン』に収録。オリジナルはロイ・オービソンが1964年にリリースした大ヒット曲で、90年公開の映画『プリティ・ウーマン』の主題歌としても有名。だが、僕たちの世代にとっては、この映画が公開されるまでは、ヴァン・ヘイレンのバージョンの方がメジャーだったかもしれない。サウンド的には、お馴染みのギターリフが始まるまでの1分40秒の前奏が、何とも言えない絶妙な雰囲気を醸し出している。ただ、エドワード・ヴァン・ヘイレンの超絶ギターソロが出てこないのが、ちょっと残念。


Billboard Hot 100 / Official Singles Chart Top 100
■ (oh) Pretty Woman / Van Halen(1982年4月17日 全米12位)
■ Going To A Go-Go / The Rolling Stones(1982年6月26日 全英26位、7月17日 全米25位)
■ Whiter Shade Of Pale / Hagar, Schon, Aaronson, Shrieve(1984年5月26日 全米94位)
■ Get It On / The Power Station(Bang a Gong)(1985年6月1日 全英22位、8月3日 全米9位)
■ People Get Ready / Jeff Beck & Rod Stewart(1985年6月15日 全米48位、7月20日 全英81位)
■ Behind the Mask / Eric Clapton(1987年2月21日 全英15位)
■ What's Going On / Cyndi Lauper(1987年4月4日 全英57位、5月9日 全米12位)
■ Never Can Say Goodbye / The Communards(1987年11月21日 全英4位、1988年2月20日 全米51位)


Billboard 200 / Official Albums Chart Top 100
■ Diver Down / Van Halen(1982年5月8日 全英36位、6月12日 全米3位)
■ Still Life(American Concert 1981) / The Rolling Stones(1982年6月19日 全英4位、7月10日 全米5位)
■ Through The Fire / Hagar, Schon, Aaronson, Shrieve(1984年5月12日 全米42位)
■ The Power Station / The Power Station (1985年4月6日 全英12位、4月20日 全米6位)
■ Flash / Jeff Beck(1985年8月17日 全米39位、全英83位)
■ True Colors / Cyndi Lauper(1986年11月1日 全英25位、11月15日 全米4位)
■ August / Eric Clapton(1987年2月14日 全英3位、3月21日 全米37位)
■ Red / The Communards(1987年10月17日 全英4位、1988年2月27日 全米93位)
■ ...Nothing Like the Sun / Sting(1987年10月24日 全英1位、11月21日 全米9位)
■ Rattle And Hum (Soundtrack) / U2(1988年10月22日 全英1位、11月12日 全米1位)

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2022.09.22
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1965年生まれ
中川 肇
Top10の各楽曲のミュージックビデオです↓

[1位] Van Halen - (oh) Pretty Woman
https://youtu.be/FWQRDI7mTyw
[2位] Hagar, Schon, Aaronson, Shrieve - Whiter Shade Of Pale
https://youtu.be/ECc7lXP4lwA
[3位] The Power Station - Get It On (Bang a Gong)
https://youtu.be/O2vHbXI2p4k
[4位] Cyndi Lauper - What's Going On
https://youtu.be/BdXklYUJCxI
[5位] The Communards - Never Can Say Goodbye
https://youtu.be/Hvlv5qrhDUM
[6位] The Rolling Stones - Going To A Go-Go
https://youtu.be/y3PIQMWrV0w
[7位] Jeff Beck & Rod Stewart - People Get Ready
https://youtu.be/yC_j_dzkaVE
[8位] Eric Clapton - Behind the Mask
https://youtu.be/ik7WhBUzQIg
[9位] U2 - Helter Skelter
https://youtu.be/InTBgzAZOLg
[10位] Sting - Little Wing
https://youtu.be/4w-Tgx8voDw
2022/09/22 09:56
2
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カタリベ
1965年生まれ
中川肇
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