先のキャンペーンで、映画「ベルサイユのばら」とのタイアップが不発に終わり、カネボウとの《バラバラ戦争》に敗北した資生堂は、再びCMソングで戦いに挑んだ。
春の宣伝方針はちょっとハイソでスノッブな方向に振りすぎたよね、という反省からか、夏はベタな大衆路線まっしぐら。過去の成功例〈ダウン・タウン・ブギウギバンド〜矢沢永吉〉の流れを受け継ぐ「ちょっとワルな夏の女+ロック」とくれば、もうこれはツイストの出番である。
世良公則&ツイストとして77年暮れにデビューした同バンドは、『あんたのバラード』『宿無し』『銃爪』『性』(順にオリコン最高6位→3位→1位→5位)とスタートから大ヒット連発。日本のロックバンドとして史上初めてデビューアルバムがオリコン1位を獲得し、この頃まさに向かうところ敵なし。何より強かったのが、そのファンの裾野のひろがり。
当時ロック御三家といわれたチャー(カッコいいけど玄人好み)や原田真二(アイドルっぽい外見でファンは女性ばかり)と比べて、男からの支持が厚かったのはもちろん、水商売の女性からウケる感じは彼ら特有のものがあった。演歌魂のロックとでもいうのだろうか、歌詞の文字だけ見ると、ダメ男に貢いでる女とか、ヒモ野郎の身勝手さが浮かび上がって来る。
さらにモノマネされることを最初から計算しているかのような大げさな世良のボーカルスタイル。これが小学生たちにまで伝播した。そんなツイストの歌う『燃えろいい女』はCM出演の小野みゆきのインパクトと相まって、オリコン週間最高3位、40.9万枚の大ヒット。
かたやカネボウは「一気にこの夏チャンピオン」のキャッチコピーで、CMモデルに浅野ゆう子を起用。CMソングにも浅野自身が歌う『サマーチャンピオン』が使われた。この曲はセルジオ・メンデスの日本語カバーソングである。いま聴くと、なかなかにコンテンポラリーなアレンジで、世界的に流行っていたディスコサウンドの影響も感じられる。けれど、カネボウの広告で話題になったのは、浅野の(意外だが、このCMで初めて水着を披露)日本人離れしたプロポーションのことばかり。
じつは前年夏の『Mr.サマータイム』での服部まこ、その前の77年の夏目雅子と、カネボウ夏のCMは話題の女優に大胆な水着(ときにセミヌード)というのが定番になっており、この年の夏も、お目当は18歳の浅野ゆう子のセクシーなビジュアルであって、歌は二の次だった観がある。
さらにはキャンペーンの途中から差し替えられたCM素材では、登場人物のしゃべりに邪魔されて、肝心の歌が全然きこえないというマヌケな状態に… しかし、このうるさい二人組のマシンガントークに聞き覚えはないかな? 画面にクレジットは出ていないが、そう、まさに大ブレイク寸前の「ツービート」なのだ!!
気合十分の資生堂に、なんとなくカネボウが肩すかしを食らわせた感じの79年夏の対決であった。
(つづく)
2016.10.19
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