真田広之と柳葉敏郎も引き立て役? 田村正和主演「ニューヨーク恋物語」
1980年代を代表する二枚目俳優は誰か。さまざまな意見があるだろうが、私の独断は田村正和だ。
それまでの美剣士や繊細な美青年役から脱皮するかのごとく、『パパはニュースキャスター』や『うちの子にかぎって…』などで、コミカルな役にも挑戦した80年代の正和。だが、二枚目のイメージは頑なにくずさなかったように思う。バラエティ番組やトーク番組にはほとんど出ず、私生活が見えない。それが、さらにミステリアス感と二枚目度を高めていた。
そんな正和の二枚目成分を凝縮したようなドラマが、1988年に放送された『ニューヨーク恋物語』だ。全編ニューヨークロケという、バブル期ならではの贅沢さ。
主要の登場人物は、男3人女5人のみなのだが、桜田淳子を除く4人の女が、ワケありバーテンダー役の正和に惚れる。残りの男性2人、真田広之と柳葉敏郎は、正和の引き立て役でしかなかった。
世紀の二枚目・田村正和だから納得?“惚れさせるきっかけ”
惚れさせるきっかけがすごい。右手にホットドッグ、左手にコーラを持って、ニューヨークの街を歩く岸本加世子。向かいから歩いてきたトレンチコート姿の正和、彼女のヒールの靴紐がほどけているのに気づくと、突然ひざまずいて靴紐を結び、何も言わずに去っていく。
女子大生役の五十嵐いづみは、服にコーラをかけられたことがきっかけで正和に惚れる。急いで白ワンピースを買ってきて、「きっと似合うよ」と言って五十嵐に渡す正和。
ベタといえばベタなのだが、いいじゃないか、正和だもの、ニューヨークだもの、と思わせる力技で私を納得させた。
最終回、正和が岸本の髪を洗う場面は、当時かなり話題になった。シャンプー台もシャワーもないビルの屋上で、岸本の頭を膝にのせ、バケツの水をかけて髪をすすぐ正和。洗うほうも洗われるほうも大変そうだが、そんなことはいいのだ。正和だもの。
ふと思う。ほんとうに正和は二枚目なのか? 隙がないくらいカッコいいのか? いや、そんなことはどうでもいい。田村正和こそ、世紀の二枚目。その大前提にのっかってこその『ニューヨーク恋物語』なのだから。
イントロからカッコいい!井上陽水が歌う「リバーサイドホテル」
そして忘れちゃならない、主題歌は井上陽水の「リバーサイドホテル」。
ホテルはリバーサイド
川沿いリバーサイド
食事もリバーサイド
… って、そのまんまじゃん! とツッコミたくなる歌詞なのだが、そこは陽水。思わせぶりなイントロから、もうカッコいい。
コートのポッケに手を入れながら、ニューヨークを歩く正和。そこに流れる「リバーサイドホテル」。ニューヨーク、正和、陽水。当時、この3つの力技に抗える女なんて、いなかったはず(ですよね?)。
※2017年8月24日、2018年10月13日に掲載された記事をアップデート
▶ テレビに関連するコラム一覧はこちら!
2022.04.03