だが、実を言うと、僕はその頃はボズ・スキャッグスをあまり好きではなかった。なぜなら、日本で耳にする彼の曲と言えば、数々の CM で取り上げられ、田中康夫の『なんとなく、クリスタル』にも登場した「ウィアー・オール・アローン」や、トヨタ・クレスタの CMソング「トワイライト・ハイウェイ(You Can Have Me Anytime)」といったバラードばかりで、当時の僕にはスイート過ぎたからだ。
そんなボズ・スキャッグスの功績の一つが、彼のレコーディングから TOTO というバンドが生まれたことである。これは一見、リンダ・ロンシュタットとイーグルスの関係と同じように見えるかもしれないが、実際には全然違う。イーグルスのメンバーがリンダのバックを務めたのはほんの数ヵ月のことだし、リンダのお陰で彼らが有名になった訳でもない。
だが、TOTO のメンバーにとっては全くボズさまさまで、上述のアルバム『シルク・ディグリーズ』のレコーディングに参加したデヴィッド・ペイチ(キーボード)、ジェフ・ポーカロ(ドラムス)、デヴィッド・ハンゲイト(ベース)の3人は、この時の共演をきっかけに TOTO を結成した。『ダウン・トゥー・ゼン・レフト』に参加したスティーヴ・ルカサー(ギター)は、これを機に頭角を現したと言われている。
このアルバムから最初にシングルカットされ、A面2曲目に収録された「ブレイクダウン・デッド・アヘッド」は「ほとんど TOTO じゃん!」って感じのサウンドだが、不思議なことにドラムはジェフ・ポーカロではなく、スティーリー・ダンなどのセッションで知られるリック・マロッタが叩いている。
本作のオープニングナンバーで、2番目にシングルカットされた「ジョジョ」は、TOTO メンバーよりレイ・パーカー Jr.が弾くギターのカッティングが印象的で、とても夜っぽい大人な一曲である。ちなみに「トワイライト・ハイウェイ(You Can Have Me Anytime)」でギターソロを弾いているのは、ラテン・ロック・レジェンド=カルロス・サンタナである。
… ということで、秋の夜長にこの一枚をどうぞ!
Billboard Chart ■ Breakdown Dead Ahead / Boz Scaggs(1980年5月17日 全米15位) ■ JoJo / Boz Scaggs(1980年8月23日 全米17位)
Billboard(Album) ■ Silk Degrees / Boz Scaggs (1976年9月18日 全米2位) ■ Down Two Then Left / Boz Scaggs(1978年1月14日 全米11位) ■ Middle Man / Boz Scaggs(1980年6月14日 全米8位) 2019.11.04