「俳句を作ってみよう!」的なゆるい感じの国語の授業があって、その時僕が詠んだ句がこれ。
名月や 秋の夜長に ボズ・スキャッグス
終列車 秋の夜長に 赤ランプ
小学6年生の時だったと思う。先生から与えられたテーマが「秋の夜長」だったので、季節は今頃だったはずだ。
発表するのはひとつだったので、悩みに悩んでというか、学級委員長だったので、さすがに『ボズ』はまずかろうと優等生的な判断をして、泣く泣く『赤ランプ』の方を発表した。案の定と言うか、先生にえらく褒められ、相当気に入ってくれたのか、県の何かの賞に応募することになり、金賞みたいなものまで取ってしまった。
もし、この時『ボズ』の方を発表していたら、先生はどのような反応をしただろうか。ユーモアがあって好きな先生だったので、「ちょっと字余りだな」とか、「まだボズ・スキャッグスを聴くのは早いだろう」とか言って盛りあげてくれたかもしれない。いや、怒られたかな。でも先生、僕の一押しはもちろん『ボズ』の方だったんだよ。
前回のコラムでは、
秋が似合うと言えば竹内まりやでしょ… と書かせてもらったけど、今回は、秋の夜が似合うと言えば誰? という話。僕だったら、誰がなんと言おうと「ボズ・スキャッグスでしょう」と答える。これは、小学6年生の頃から今に至るまで変わることなく続いている僕の中での決定事項だ。
僕がボズ・スキャッグスと出会ったのは、1976年に発売されたアルバム『シルク・ディグリーズ』に収録されている「ロウダウン」と「ウィアー・オール・アローン」をラジオで聴いた時だと思う。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」やビリー・ジョエルの「ストレンジャー」に出会い、洋楽の素晴らしさに目覚めた時期で、僕はラジオに噛り付いて、流れてくる洋楽をスポンジのように吸収していた。何よりも感動し、衝撃的だったのがボズの歌声だ。
なんだこの歌声は…
なんて魅力的なんだ。
これこそ大人の声だ… すげー!
初めてボズを聴いた時の感情はこんな感じで、今聴いても毎回同じ感情が巻き起こるんだから、ボズ・スキャッグス恐るべしだ。
ボズとしっかりと向き合ったのは1980年のアルバム『ミドル・マン』がリリースされた時… 僕は高校生になっていて、初めは貸レコードでもいいかと思ったんだけど、そのジャケットのアートワークにやられてしまい、つい買ってしまった。
網タイツの女性の細い太ももに、オールバックの頭をのせて、煙草の煙をゆったりと吐き出しているボズ。なんと洗練された大人の男の色気だろう。肝心のアルバムの中身は、もちろん大人まみれだ。バックに従えた TOTO メンバーの演奏とボズのヴォーカルとの相性は相変わらずバッチリで、1曲目の「ジョジョ」からボズのダンディズムはレッドゾーンへ。
トヨタ・クレスタの CMソングに採用された「トワイライト・ハイウェイ(You Can Have Me Anytime)」では、泣きまくるサンタナのギターソロが聴けるなど、ボズ・スキャッグスの最高傑作は間違いなくこのアルバムだ。
ボズ・スキャッグスの甘い歌声とダンディズムは、秋の夜長に良く合うと思うのは僕だけだろうか。今でもこの時期になるとボズ・スキャッグスが聴きたくなってウズウズする。そして、聴くたびに思うんだ、高校生の頃に憧れた “ミドル・マン” になれただろうか、って。
2018.10.11