様々なお笑いシンガーの素晴らしいパロディソングを紹介するこのコラムも、カタチの上では最後となります。今回は、私もよくモノマネをさせていただいてます「とんねるず」のパロディソングを紹介します。 とんねるずはパロディソングの宝庫と言っても過言ではないほど数々の名曲を世に出しているんですね。その時代やお二方が尊敬してやまないアーティストを中心に、その思いを作詞家の秋元康さんが汲み取り作品にしているのだと思われます。 そんな、とんねるずのパロディソングを80年代を中心に、3曲厳選してみました。 まず1曲目は、1986年12月28日に発売されたアルバム『キャニオン初』の収録曲からシングルカットされ、1987年4月5日に発売されたシングル「迷惑でしょうが…」。この曲の醍醐味といえば、イントロでの石橋貴明さんのナレーションですね。 前略、生きてくことは哀しい訳で 哀しいからまた生きてく訳で 前作のシングル「嵐のマッチョマン」からガラリと歌謡チックなテイストに趣きが変わり、とんねるずも大人びてきたなぁ… とも取れますが、これは元ネタとしては1970年代後半に放送されていた日本テレビ系ドラマ『前略おふくろ様』が元になっているんですね。 主演は、石橋貴明さんが学生時代から憧れているショーケンこと萩原健一さん。このドラマの主題歌もショーケンさんが歌っています。また、イントロ部分のナレーションも「前略…」から始まっており完全に曲の構成もパロディです。 この曲の印象でいうと、発売当初に出演してた音楽番組では、もちろん最初は真面目に歌うのですが、何度も歌っていくと飽きてくるのかわかりませんが、末期には石橋貴明さんがショーケンのモノマネで歌い出すのです。それが僕にはツボでたまりませんでした。 ちなみに1987年9月17日に発売されたシングル「おらおら」は、明らかに萩原健一さんの楽曲「ぐでんぐでん」のパロディです。よくよく聴くと「迷惑でしょうが…」の歌詞の中にも「ぐでんぐでんに酔いたいだけ」と出てきてますよね。ショーケン愛の強さが作品から伝わってきます。 続いて2曲目は、1985年11月1日に発売されたアルバム『仏滅そだち』に収録している「チェックのシャツでボンヨヨヨーン」です。タイトルを見てもわからないとは思いますので、歌詞を見てみましょう。 キャンドルライトが消えて ハートブレイク泣いて ジュリアはうつむき ふいに チェックのシャツ脱いだ もうおわかりだと思いますが、当時爆発的人気を誇るバンドのチェッカーズのパロディソングですね。 これは木梨憲武さんのソロ曲なんですが、イントロもちゃんとむせび泣くサックスを入れ、なんとなく藤井フミヤさんに寄せた歌い方もして、チェッカーズ感がハンパないんです。とんねるずは、チェッカーズとコントで共演する回数も多く、プライベートでも仲が良いのは有名ですね。フジテレビの『とんねるずのみなさんのおかげです』のコントの中で、チェッカーズのシングル「ONE NIGHT GIGOLO」のイントロでいきなりみんなが踊り出すあのシーンを見るだけでも、ツーツーな仲の良さが垣間見えます。 最後の3曲目は、1991年5月29日に発売された17枚目のシングル「情けねえ」です。この曲は、ご存知の方も多いかと思いますが、長渕剛の「ろくなもんじゃねぇ」のパロディですね。 大和魂感がどうも強い曲にも感じますが、ジャケットもよく見ますと日の丸をイメージしてる様です。 その様子が伺えるのが、この曲自体テーマとして、この1991年に勃発した湾岸戦争に対しての日本の反応を歌詞にした曲となっており、とんねるずの楽曲にしては珍しい社会風刺を織り交ぜた歌だったんですね。 この曲のエピソードとして、この年のNHK紅白歌合戦に初出場し、「情けねえ」を披露したのですが、その際の出で立ちが石橋貴明さんが全身赤色、木梨憲武さんが全身白色のボディペインティングで登場し、大変な話題を呼びました。 のちに野猿でNHK紅白歌合戦に初出場した際も全身ボディペインティングで登場し、この時のパロディとして演出をされました。 そして記憶に新しいのはフジテレビ『とんねるずのみなさんのおかげでした』最終回での「情けねえ」での歌唱シーンですね。お二人の今一番伝えたかった「フジテレビ愛」「バラエティ愛」があの歌詞に集約されてたかと思われます。 じつは、このパロディソングシリーズの中で、今回のとんねるず篇の選曲に一番苦労しました。というのも、パロディソングの宝庫とはいえ、その時代ごとにとんねるずが、野猿や矢島美容室など姿形を変えて名曲を残しているのです。もちろん、今回ご紹介した3曲以外にもいい曲は沢山あるので、平成生まれの方々にこそ是非とも聴いて欲しいです。 それにしても、いい曲は沢山あるとはいったものの、オススメの曲を絞り切れないとは… 情けねえ…。
2019.06.06
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YouTube / Kay Fiction
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