これは明らかに「あのアーティストやヒット曲をオマージュしているな!」とわかってしまう… そんな素晴らしいパロディソングを紹介するこのコラム。 第2回目は、現在もテレビ界にて第一線で活躍する好感度タレント、所ジョージさん。元々はシンガーソングコメディアンとしてデビューし、名付け親は宇崎竜童さん。出身地から「所沢の柳ジョージ」を略して所ジョージと命名され、1977年7月29日に「ギャンブル狂騒曲」でシングルデビュー。 それでは、そんな所さんの数々の名曲の中から厳選したパロディソングを3曲ご紹介します。まず1曲目は、1982年3月12日にリリースされた13枚目のシングル「銀座アンノン娘」。これはタイトルからしてお分かりだと思いますが、今から70年前の1949年に発売された高峰秀子「銀座カンカン娘」のパロディですね。 所さんの「銀座アンノン娘」が発売された当時、女性向け雑誌『anan』『non-no』を片手に、それに掲載されている場所を巡ったり、服を買いに行ったりする女性旅行客を指す「アンノン族」のことを皮肉って歌った1曲となっており、冒頭は女性の声で「銀座通りは今日もバーゲンバーゲン」などとウキウキ感を煽っておきながら所さん特有の歌いまわしから毒舌が入ります… 「お若い娘が 買い物する時 似合いませんよと親切に 声かけてみます 本当だから」 お節介だけど、人ごとのように聞こえて笑える歌詞。そして最後に… 「センスあんのん? サイズ合うのん? 嬉しや銀座」 このダジャレ締めの脱力感にも、所さんらしさが出てますね! 続いて2曲目は、1989年10月20日にリリースされたアルバム『コヨーテの夜』の収録曲「勝手に千葉でシンドバッド」です。 タイトルからして、もうお分かりかと思いますが、サザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」のパロディ。曲調としてはなんともシティポップ感あるテイストで、歌詞は千葉から東京… そして神奈川にかけて車で走る情景を描写しながら、埼玉県出身の所さん目線から千葉のディスりがちょいと垣間見える作品。最近、大ヒットした映画『翔んで埼玉』(2019年公開)を思い出しました。この曲のすごいポイントとして挙げたいのが1番の冒頭――。 「重油まじりの勝浦 人もゴミも増えて つたのからまるチャペルが ちょいと祈りを捧げているよに見える」 最初の部分はいかにも「勝手のシンドバッド」の歌詞をパロディにしてますが、次の「つたのからまるチャペルが」については、なぜか1964年にリリースされたペギー葉山のシングル「学生時代」の歌詞をほぼ引用しているんですね。1曲の歌詞に別のアーティストの歌詞が2組もパロディに使われることはなかなか無いものでして、おそらく千葉のどこかに つたが絡み付いているチャペルが存在していて、それを所さんは歌詞に入れたのではないかと推測します。あくまで推測ですよ! そして3曲目は、1981年9月16日にリリースされた12枚目のシングル「まったくやる気がございません」。この曲は聴いて頂いたら分かるのですが、高度経済成長期に活躍したコミックバンド「ハナ肇とクレージーキャッツ」のメロディをオマージュしています。歌の内容としては簡単に言うとクズなぐうたらソングなんです。 元々所さんはデビュー前から植木等さんをとても敬愛しており、「植木さんみたいな人になりたい」と語っていたそうです。そんな尊敬の意味も込めてこの歌を作ったのではないかと思いますが、その想いが伝わったのか、のちに TBS ドラマ『オヨビでない奴!』では父子役での共演が実現します。 さらには住んでいる家が近いことから、お互いの家を行き来するほど親交を深め、植木等さんの死後には植木さんの愛車である日産シーマを奥様の意向で所さんが譲り受けたそうです。1曲のパロディソングが、ここまで人生に大きな影響を及ぼすというのもすごいことです。 所ジョージさんと言うと、おおらかで天真爛漫、好きなことはとことん突き詰める余裕のある大人というイメージですが、シンガーとしてはちょいと変わったこだわりを持っています。テレビで歌を披露することはよくあるのですが、ライブはしないのがモットー。その代わり、出来るだけ CD を買って聴いてもらいたいのが本人の希望で、購入者が限定で観られる YouTube 動画を公開するなど、所さんも手を替え品を替えファンを楽しませてくれます。 シンガーソングライターとしての存在意義を未だ絶やさず活動し続けている所さん、そんな旺盛なエンターテイナー精神を大いに見習いたい “トコロ” です。
2019.04.11
Apple Music
VIDEO
YouTube / 世田谷一郎
Information