これは明らかに「あのアーティストやヒット曲をオマージュしているな!」とわかってしまう… そんな素晴らしいパロディソングを、アーティストごとに3曲ずつ、全3回に亘ってお送りしたいと思います。
今回は、僕が芸人として最も影響を受けまくった天才シンガー、嘉門達夫さん(現・嘉門タツオ)のパロディソングを皆様に聴いて頂きたい。
まず1曲目は、89年11月21日に発売されたアルバム『バルセロナ』から。これは嘉門さんが所属事務所、レコード会社を移籍して初のアルバムで、その中からファンの間でも人気の高い「ハンバーガーショップ」を紹介します。
「ハンバーガーショップ」はファーストフードが定着してきた時代に、従業員のマニュアル対応に対しての矛盾やツッコミどころを創作落語のように描写した歌でして、そのイントロと曲調には、アリスの「チャンピオン」がオマージュされています。基本的に嘉門さんは編曲家の方に「こんな曲のイメージで」と注文するそうなので、この曲には「チャンピオン」の戦うイメージが結びついたのでしょう。
そして驚いたことに曲中の会話の途切れ途切れの部分ではコードがちゃんと変わっています。これはギタリストからすると実に上手く出来ていて、本筋のアーティストの方からも音楽的に賞賛されるほどなのです。
続いて2曲目は、84年6月21日に発売された2枚目のシングルにして、嘉門達夫という名を全国に知らしめたキッカケと言っても過言ではない名曲中の迷曲「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」です。
この曲はテレビ朝日で放送されていた『水曜スペシャル・川口浩探検隊シリーズ』で起こるアクシデント、現在でいうヤラセの部分を中心にいじった歌として、前作の「ヤンキーの兄ちゃんのうた」に続きスマッシュヒット。
そしてイントロとタイトルからしてお分かりかと思いますが、アニメ『巨人の星』のオープニングテーマ「ゆけゆけ飛雄馬」をパロディにしているんですね。主人公に向けて応援しているという意味で、その熱量は一緒です!?
ちなみにシングルが発売される前、関西で放送されていた TV番組『ノックは無用』に川口浩さんが出演されると知った嘉門さん。絶好のチャンスと許可をもらいに行ったところ、ご本人に大喜びされたのだとか。
元の歌詞には「川口浩はピラニアにかまれる かまれた腕はいったい誰の腕なのだろう」といった部分があったそうです。それを聞いた川口さんから「実際、咬まれたんですよ」と言われ、「かまれた素手が 突然画面に大アップになる」に歌詞が変更されたというエピソードは有名ですね。
最後に3曲目はマニアックなところからご紹介しようと思います。
85年6月12日に発売された1stアルバム『お調子者で行こう』は、サザンオールスターズのアルバム『人気者で行こう』のパロディ。聴いて頂きたいのはその中の一曲「天才でバカボンを」という曲なのですが、これはいわゆる有名アーティストやヒット曲のパロディソングというカテゴリーではなく、言わばフォークソングの世界観を分かりやすくパロディ化したものだと私は認識しています。
様々な食べ物の悲哀や哀愁を歌った内容になっていて、例えばお好み焼きの鉄板にこびり付いたソースの焦げ、チキンラーメンの麺クズ、ぼんち揚げの粉など、何気なく放っておかれたり、取り残されていくモノを吉田拓郎のように歌い上げています。元々嘉門さんは世代的にも四畳半フォーク全盛期に育ち、吉田拓郎さん、井上陽水さん、泉谷しげるさん、あのねのねなど、数々のフォークソングを聴いてきたのでしょう。だからこそ歌いたかった曲なのかもしれません。
さて、嘉門さんはもうすぐ還暦を迎えるわけですが、最近では終活、崎陽軒のシウマイ弁当、マッシュルーム、麻婆豆腐を歌ったものなど、自分が目にしたもの気になったものをすぐさま歌にするという傾向が見受けられます。これからも替え唄だけでなく様々なパロディソングを生み出していくことでしょう。
僕は、嘉門さんの今後の活躍に期待しつつ、天才シンガー “嘉門タツオ” の背中を追い続けて行きたいと思っています。
2019.03.11
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