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無理よ駄目よじゃつまらない、本気で一気!に向き合っていたとんねるず

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2017年9月28日、『とんねるずのみなさんのおかげでした』30周年スペシャルで、とんねるず石橋貴明が30年ぶりに「保毛尾田保毛男」キャラクターを復活させた件で、視聴者から批判が殺到し、フジテレビの宮内正喜社長が、翌日の定例会見で謝罪する事態となった。

とんねるずが今回の件をどうとらえているのか、まだわからない。しかし、去年の秋のインタビューで石橋は昨今のテレビ業界やお笑いについて「こうやったらまずいなって考えちゃうような、閉塞感が全てにおいてテレビをつまんなくしちゃっている気がする」と語り、放送規制が昔は緩かったと説明していた。

このインタビューを読んだ時、石橋は、昔のテレビは「放送規制が緩かった」から面白かった、だから自分たちもウケる土壌があった、と考えているのかと驚いた。今回のことも「俺達が」ではなく「俺達に」時代が合わなくなった、という上から目線の諦めで済まそうというつもりなのなら、心底呆れる。

私が10歳の時、ふたりはハタチかそこらで、お笑いオーディション番組「お笑いスター誕生!!」に現れた。

1980年から1985年の土曜昼時間帯放映時の「お笑いスタ誕」は、覚えている限りすべて欠かさず見ていた。小学校が午前授業で終わると走って帰り、昼食をすませてスタンバイし、何回か公開録画にも行ったファンだった。とんねるずの初出場はぱっとしなかったので覚えていないが、その後コンビ名を変えて出場しゴールデンルーキー賞シリーズの決勝で敗れた惜しいふたり、というのが第一印象だった。しかし彼らは諦めずに1982年、10週勝ち抜いてグランプリを獲得した。

その時のことは今でも覚えている。ネタは「堀越学園でカースト下位の堤大二郎」というもので、それこそ今やったら問題になる類のものだ。しかし、赤塚不二夫も、京唄子も、東八郎も、審査員一同あっけにとられて感激していた。

後年、よくとんねるずの芸はその場の「ノリ」だけだと言われるが、昔は違った。緻密に組まれたネタの構成とセリフまわし。何度ネタ合わせをしたのだろう? と思うくらいリズム感が良く合っていく、タカアキとノリタケの息。

審査委員長の桂米丸が石橋に、「ウケているとステージに立っていると欲が出て、もうちょっとここはウケるんじゃないかと間をもってしゃべっていくが、あなたには欲がない。だからたたみかけていく。それが気持ちいい」と言っていた。それを聞いて、石橋はとても嬉しそうに笑っていた。そしてグランプリをとった時、感想を求められた木梨は観客に「笑ってくれてありがとう」と素直に言っていた。そんな二人は、本当にお笑いが好きなんだと思った。お笑いで人が笑ってくれるのが大好きだからあんなに必死で、見ている側もスカッと気持ちいいのだと思った。

グランプリ獲得後、お笑い界、テレビ界にそれこそたたみかけていった二人は、あれよあれよという間にスターに。気が付いたら歌手にもなり「一気! 一気!」と歌っていた。

この歌の「無理よ 駄目よじゃ つまらない」と煽る歌詞さながら、暴言を吐く、セットを壊す、カメラを壊す、客を蹴る… めちゃくちゃで、何にも遠慮しないで、その場の空気もろとも一気に飲み干して騒いでいられたのは、石橋が憂いている(であろう)「放送規制」や「時代」が今と違ったからだけではないはずだ。ふたりが、本気でお笑いに「一気!」に向き合っていたからだと思う。

「たくさんの人を笑わせたい」という純粋な初期衝動で、お互いに負けじと爆走しているふたりの姿勢が、好きだった。そんなふたりはいつの間にか「お笑いコンビ」ではなくなってしまったように思う。ひらたく言っていわゆる「芸能人」になってしまった。

今回の「保毛尾田」キャラが悪目立ちしたのは、今や彼らが「お笑いコンビ」としてうまく機能していないことにも一因があるのではないか。懐かしキャラを「文脈」のないところに単に復活させても、面白くもない。

とんねるずが今回の件で叩かれて、「じゃあお笑いって、なんなんだろう?」ともし思うなら、YouTubeで見つけたので、『お笑いスタ誕』でグランプリをとった時の自分たちの映像見て欲しい。

あの時の煌めきと勢いに魅せられた者のひとりとして、「まだまだ笑わせてよ! 笑わせられるでしょ? だって、『とんねるず』じゃん!?」って結構真剣に、信じている。

2017.10.09
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  YouTube / SunChainBoy1984
 

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カタリベ
1971年生まれ
上村彰子
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