12月1日

名曲輩出!松田聖子 初の No.1アルバム「ノース・ウィンド」の魅力

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松田聖子のセカンドアルバム「North Wind」がリリースされた日
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photo:SonyMusic  

松田聖子2枚めにして初のNo.1アルバム「North Wind」


It was 40 years ago today
40年前の1980年12 月1日、松田聖子のセカンドアルバム『North Wind』がリリースされた。

デビューアルバムの『SQUALL』からわずか4か月。『North Wind』は12月15日付のオリコン週間チャートで見事1位に輝き、松田聖子にとって初めてのNo.1アルバムになった。

前作からはシングル「風は秋色/Eighteen」を1枚挟んだだけ。アイドルだからとは言え、かなりのハイペース。しかしながら『North Wind』は、『SQUALL』同様、高いトータル性を有したアルバムであった。

その後も永くライヴで歌われることになったA面とB面の1曲めを中心に、その魅力に迫ってみたい。

大村雅朗アレンジが冴えわたる「白い恋人」


『North Wind』は全10曲の作詞を三浦徳子が、作曲は8曲めの「Eighteen」を除く9曲を小田裕一郎が手掛けている。1980年の松田聖子の快進撃を支えた黄金コンビだ。

オープニングを飾る、アナログ盤だとA面1曲めの曲が「白い恋人」。同名の北海道の銘菓を思い出してしまうが、この曲の方が4年後輩である。

イントロはいきなり目の覚める程の切れ味。ストリングスとホーンで高揚感を演出し、その後はエレキギターのストロークが緊張感を保ったまま歌に繋げる。歌に入ると今度はアコースティックギターのカッティングが曲にシャープさを加える。

冬の空気のキリっとした寒さも感じられるこの冴えわたったアレンジは大村雅朗によるもの。ホーンやエレキの音が同時に暖かみも加えていて、冬の曲のアレンジとしては見事と言う他ない。小田による歌の冒頭の下降コードも我々を引き込んで離さない。まさにつかみはOK状態。永く歌われ続けるのも納得の名曲である。

アルバムタイトル曲は信田かずおのロックンロール


このアルバムのアレンジは4曲を大村雅朗が、6曲を信田かずおが手がけている。この2人も1980年の松田聖子に欠かせない。アナログ盤で言うとA面の5曲めまでは、「白い恋人」以外は全て信田のアレンジである。

3曲めがアルバムタイトル曲「North Wind」。前作のタイトル曲「SQUALL」に比べるとテンポを落とした、しかしロール感は増したロック。ホーンとツインエレキギターを上手く生かしたアレンジで、間奏では名プレーヤー今剛のギターソロがロールする。松田聖子のパンチのあるヴォーカルといい、この後歴史に残らなかったことが残念なくらいの佳曲である。A面5曲めは先行シングルとなった「風は秋色」。信田によるアウトロは良い余韻を残しA面をきちんと締めている。

愛される不朽のロッカバラード「Only My Love」


そして6曲め、アナログ盤だとB面の幕開けとなるのが「Only My Love」。松田聖子のアルバムトラックとして屈指の、永く愛されてきた曲である。

ピアノとストリングスによるスローで柔らかいイントロがドラムと共に一転、テンポアップし音も厚くなりいきなりサビから入る。この劇的な展開はB面オープニングに相応しい。信田のアレンジは引き続き冴えている。

松田聖子も張り裂けんばかりのヴォーカルをサビで聞かせる。そう、この曲はロックなバラード、ロッカバラードなのだ。間奏でも恐らく今剛と松下誠によるツインギターソロがロック感満点。泣きのギターとメロディがまさに “エモい”。「風は秋色」に続く、信田の名間奏と言ってよかろう。

三浦徳子による歌詞は冬から春への季節の移り変わりと恋心を巧みにリンクさせている。

 ひとつずつ脱ぎ捨てた誤解
 足跡にして

 私の中眠っていた愛に
 火をつけてゆく

しかしサビの次に印象に残るのは、サビ直前に松田聖子が声を振り絞って歌う、以下の部分かもしれない。

 Oh, ho ho ho…

シャウトと評してもいいのではないだろうか。サビに向け見事な導入となっている。小田裕一郎の、オーソドックスながら松田聖子の声域を知り尽くして限界まで歌わせ劇的な効果を引き出したメロディの巧みさは言うまでもない。

1981年4月から1983年3月まで放送されたラジオ番組『松田聖子 夢で逢えたら』のオープニング曲に使われたこともあり、この曲はファンに永く愛される名曲となった。僕も未だにこの曲を聴くと、少々甘酸っぱい気持ちに包まれてしまう。

秋冬を描き切ったトータルアルバム、時を超えた名曲輩出!


B面は大村雅朗が3曲をアレンジ。続く「スプーン一杯の朝」は彼氏との夜が明けた朝の歌。A面4曲めの「冬のアルバム」同様、大人の歌詞であり、当時中3の僕にはまだまだ付いて行けなかった。この曲では大村のアレンジもシンセサイザーを導入し、洗練されていて大人びている。

8曲め「Eighteen」はシングルから。この曲だけが平尾昌晃作曲なのだが、こうしてアルバムに収められるとそれほど違和感なく流れる。信田アレンジの貢献もあるだろう。

続く9曲め「ウインター・ガーデン」については4年前に書いた拙稿『ウィンター・ガーデン、この曲こそ松田聖子初のクリスマスソング』をお読み頂きたい。歴史にこそ残らなかったがこの曲も紛うことなき名曲である。

大村アレンジの「しなやかな夜」でアルバムは終わる。2曲めの「花時計咲いた」と共に、ストレートなスローナンバーがこのアルバムではやや印象が薄いかもしれない。

『North Wind』は曲の平均的なレベルで言えば、前作『SQUALL』に少々及ばないかもしれない。僅か4か月のインターバルではやむを得ないだろう。しかしこのアルバムには「Only My Love」「白い恋人」という時を超えたアルバムトラックがある。2013年にも松田聖子は武道館100回記念公演でこの2曲を歌っている。『SQUALL』にはタイトル曲しかないかもしれない。そして『SQUALL』同様、高いトータル性は大いに評価されるべきであろう。4年前にも書いたが、僕はここまで秋冬という季節を表現したアルバムを寡聞にして知らない。

最後に個人的な話だが、このアルバムこそが、生まれて初めて発売日に購入したアルバムだった。40年前に購入した、横長の特殊パッケージのカセットテープは未だに宝物である。



2020.12.01
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カタリベ
1965年生まれ
宮木宣嗣
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