初期衝動を貫き、スタイルとして確立するのか。変化を拒まず、時代に即した音を残すのか。ロックバンドに課せられた大きな命題だと思う。
ルースターズは圧倒的に後者であった。
ローリング・ストーンズ、そして、その根源にあるブルースを踏襲したヒリヒリとする直球のロックンロールがウリであった初期。
アフロビートの導入や、ジュリアン・コープ、エコー&ザ・バニーメンなどに影響され、洗練されたネオアコースティックなイメージの強い中期。
ヴォーカリスト、大江慎也脱退後、ギター、花田裕之の男気でラウドなギターバンドとして復活した後期。
バンドは生き物だと言わんばかりに変化を拒まず転がり続け、後の音楽シーンに多大な影響を与えた。その原点について今回は触れてみたいと思う。
リトル・リチャードが大好きで、黒バラジャコーのポマードを塗ったリーゼント。しかし、頭脳明晰で東大受験を視野にいれていた大江慎也。学校に姿を見せると、全校の女子生徒が窓を開け、その姿に見とれたというプリンス花田裕之。
高校時代の二人のエピソードは、どちらも噂の域ではあるが、この二人の特出したキャラクターが初期ルースターズのインパクトそのものであったことは言うまでもない。
80年、11月25日、ルースターズはアルバム『THE ROOSTERS』でデビュー。半年のインターバルで翌81年6月25日セカンドアルバム『THE ROOSTERS a GO GO』をリリースした。
また、彼らのファーストアルバムは当初2枚組で発売されることになっていた。その未発表の曲を収録したアルバムが87年に『アン・リリースド』というタイトルでリリースされた。このアルバムはストーンズのカバー中心に構成されているのだが、この中でも、初期ルースターズのメンバーが楽曲に込めた愛と、60年代のロックンロールのスピードを加速させ、時代に挑もうとする彼らの魂の行方を十二分に体現することができる。
この3枚に収録されているロックンロールが、僕を今も続いている音楽の旅へといざなってくれた。
セカンドアルバム『THE ROOSTERS a GOGO』のレコード帯に書かれたキャッチコピーはこうだ。
「オーソドックスだけど一番新しい」
言い得て妙。まさにこの言葉通り、初期ルースターズのロックンロールは、60年代の焼き直しなんかではなく、新しい時代80年代に相応しい最新型のロックンロールで新しいバンドのあり方を提示してくれた。その手法は、ストレイキャッツやスペシャルズにも通じるものがあった。
彼らが、ロカビリーやスカ、50年代、60年代の音楽を時代に相応しくアプローチ。そのままの焼き直しではなく、それぞれの音楽の熱量を凝縮し、最新型の音楽として時代に提示した。
ルースターズが選んだカードはローリング・ストーンズだった。そして、彼らが多大な影響を受けたボ・ディドリー、デイル・ホーキンス、エディ・コクラン、チャック・ベリーなどのカヴァー。
研ぎ澄まされた演奏力と、ヴォーカル大江慎也の狂気とイノセントの狭間を縫うような叫びが、ピカピカの最新型として時代の最先端をいっていた。
60年代の音をそのままプレイするのであれば、単なる懐メロになってしまう。しかし、80年代にやっている本人たちが恋い焦がれ、現在進行形で憧れる60年代のストーンズはピカピカの最新型だ。
古く懐かしい音楽を蘇らせるのは、プレイする本人たちの気構えであり、それこそが紛れもないパンクであったと言えるだろう。
OH BABY たまらない たりないおまえに首ったけ
俺らを愛してくれるなら なんでもおまえの意のままに
(FOOL FOR YOU THE ROOSTERS)
ロックンロールに酔いまくり すべてに激しくやりたがる
いらいらばかりがおまえを包み 薬に酔いしれる
(ROSIE THE ROOSTERS)
そして直情的でセンチメントな大江の描く歌詞は、紛れもなく行き場をなくし、そこに音楽しか残らなかった若者たちの閉塞感からの打破であり、レベル・ミュージックの名に相応しい反逆からの魂の行方だったように思う。
70年代に登場した、いわゆる初期パンクがロックンロールに対する原点回帰だとしたら、その原点の部分は、十人十色であり、どのカードを手にしたのかが、バンドのオリジナルとして生きてくる。
まさに、「懐かしむより超えていけ!」なのだ。この温故知新ともいうべき精神性が80年代のニューウェイブの根源であり、以降の音楽の流れの礎になっているように思う。
そして、ルースターズが80年代に深化させていった音楽の系譜は、そのまま時代の流れとして、現在の多くのフォロワーを生んでいる。
歌詞引用:
FOOL FOR YOU / ROSIE
ルースターズ
2017.07.20
YouTube / ザ・ルースターズ OFFICIAL CHANNEL
YouTube / 安室令
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