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フランス・ギャルと石川忠、何一つ似たところのないミュージシャンの死

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ツァイトリッヒ・ヴェルゲルターのシングル「SCHLAGEN(シュラーゲン)」がリリースされた時期
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photo:Discogs  
photo:@ranaishikawae  

年明けすぐの2018年1月7日、フランスの日刊紙『ル・モンド』で、フランス・ギャルの死が報じられました。享年70歳。以下、一部書き足しつつ、大まかに記事をたどると…

1963年、16歳の時に子ども向けの「シャルルマーニュ大王(Sacré Charlemagne)」というバカっぽい歌で大ヒットを飛ばしてからは、主に60年代に良曲に恵まれます。

セルジュ・ゲンスブールが作詞・作曲を手がけた「夢見るシャンソン人形(Poupée de cire, poupée de son)」(1965年)は本人が日本語で歌うヴァージョンもありました。やはりゲンスブールのあからさまな悪ふざけが結晶した名曲「アニーとボンボン(Les sucettes)」(1966年)を、そのプロモーションクリップと合わせて「かわいいシャンソン」と誤って記憶する日本人も少なくないでしょう。

ギャルは数名の著名な歌手と浮き名を流した後、1973年にミシェル・ベルジェと出会い結婚します。そこでやや翳りの見えていた人気に再び火がつきます。

ところで、一つ気がついたことがあります。ベルジェとの組み合わせで列挙されているのはほとんどが1981年までの曲なのです。その後は1992年のベルジェの死(44歳)、娘の死、罹患(癌)についての記述が続きます。

つまり80年代のほとんどが空白なのです。これでは本サイトには掲載してもらえないぁと思った瞬間、同時期に自分が聴いていた音楽が想い浮かんできました。

当時の僕は毎日、日本のインディーズのレコードを漁っていました。特に心を奪われていたのがツァイトリッヒ・ヴェルゲルター(Zeitlich Vergelter)の「Schlagen」です。CHU名義で活動していた石川忠さんのバンドで、唯一のシングル盤です。1986年にバンドは解散しますが、2年後の88年に塚本晋也監督の『鉄男』で音楽を担当して以来、ほとんどの塚本映画で音楽を手がけているアーチストです。

そんな塚本×石川ペア最後の作品となった『野火』(2015年)で聞くことのできる、兵が森や砂浜を歩く効果音には、とりあえずのテーマ(人肉食)より遥かに衝撃を受けました。それと競い合うかのように、作品全体を通して効果音とも映画音楽とも形容しがたい忠さんの音が流れています。他方、忠さんは1993年にデア・アイゼンロスト(Der Eisenrost)を結成し、現在に至るまで活動を続けていました。

その忠さんもつい先日、2017年12月21日に亡くなってしまいました―― フランス・ギャルと石川忠、フランスと日本、歌謡曲とインダストリー、 80年代を境にした興亡。

地理的にも世代的にもジャンルとしても何一つ似たところのない二人のミュージシャンが相次いで亡くなったというだけのことなのですが、いつ誰がどんな音に反応するか分からないというのが音楽の、それもいわゆるロックの魅力ではないでしょうか。

聴いている僕に節操がないといえばそれまでですが、個人の趣味というのは未だ何にも囚われない、自由の領域だと久しぶりに想いだしたのです。

2018.01.30
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カタリベ
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