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80年代の東京インディーズ事情、上條淳士の「TO-Y」と北村昌士の「YBO²」

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80年代の東京ロック、上條淳士「TO-Y」とインディーズブーム


80年代に高校時代を東京で過ごした僕は『週刊少年サンデー』に連載されていた上條淳士のマンガ『TO-Y』にはまっていた。そこには中野サンプラザや、かつての新宿LOFTが登場し、同時代の東京のロックをめぐる状況が強く意識されていた。

折しも日本はインディーズブーム。大手のレコード会社(メジャー)に対してマイナーと呼ばれた無数の自主制作レーベルが覇を競い、独自の嗅覚でミュージシャンを発掘していた。

『TO-Y』には実在のミュージシャンが出てくるわけではない。それでも『TO-Y』はその “らしさ” を通して同時代を伝え、読者も状況を読み込み臨場感を覚えていた。

キャプテンレコード、ナゴムレコード、そして北村昌士のトランスレコード


『FOOL'S MATE』の創刊者でもある北村昌士の『トランスレコード』にはパンク、プログレ、ハードロックを融合する独自路線のバンドが集い、宝島社主催の『キャプテンレコード』の他、ケラ率いる『ナゴムレコード』にも有頂天や筋肉少女帯といった個性的な面々が名を連ねた。各レーベルには共通の音楽性など無いはずなのに、“トランスギャル” や “ナゴムギャル” と呼ばれたファンのほうが、それぞれのレーベルに独自な音を聴き取っていた。

高校生だった僕は北村さんのバンド YBO²(Yellow Biomechanik Orchestra² 通称:イボイボ)に出逢い、ビルボードで流れる洋楽とは異質な世界に魅せられた。地を這う重低音、速攻かつ正確なリズム、噴き出すようなギターリフ。夢野久作の原作を一字一句変えずに歌詞にしたファーストシングル「Doglamagla」を聴くと今でも首をひねる。どうしてこんな演奏ができるのだろう……

マンガでも描かれた聖地、ヤオンと新宿都有3号地


『TO-Y』では、主人公トーイがヴォーカルをとる “GASP” の解散コンサート(ヤオン=日比谷野外音楽堂)と年末のインディーズ・フェスティバル(新宿都有3号地)が描かれている。実際、1987年には同様の企画が日比谷野外音楽堂で開催されているし、2枚組のコンピレーションアルバム『The Indies Live Selection 86 to 87』からは、当時のインディーズ・シーンの雰囲気が伝わってくる。

ところで、GASP は、たぶんハードコアバンドで、北村さんの音とはまるで違う。それでも僕は『TO-Y』でコンサートの場面を読む度にミッキーマウスのような耳をつけてヤオンで演奏する GASP に YBO² を重ね合わせ、当時の状況に想いを馳せるのだ。


※YBO²のファーストシングル「Doglamagla」には次のヴァリエーションがある
1)Dogla Magla II <Dead Tech Sampler - No wave from Japan>
2)Dogla Magla, Trans Records, 1986 <Trans-05>(7inch)
3)Dogla Magla, Trans Records, 1987 <Trans-20> sideA(リミックス)
4)Dogla Magla, Trans Records, 1987 <Trans-20> sideB(2の再録)
 (12 inch,ピクチャーレコード,3,000枚限定版)



※2016年5月9日に掲載された記事をアップデート

2020.06.17
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カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
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