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インダストリアル・サウンドの美学、鉄男の音楽を手掛けた石川忠のバンド
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ツァイトリッヒ・ヴェルゲルターのシングル「SCHLAGEN(シュラーゲン)」がリリースされた時期
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photo:RYM  

『鉄男』『TOKYO FIST 東京フィスト』『双生児 GEMINI』『野火』…どれも塚本晋也監督による,海外でも上映され評価を得ている作品である.これら塚本作品で,独特な映像美学以外にも共通しているものがある.それは音楽と効果音.無機質な金属音か重低音のベースを伴う打ち込みのリズムが記憶に焼きつく.担当は作曲家・演奏家のCHUこと石川忠さん.彼の音楽との出逢いは1980年代だった.

彼のバンド,Zeitlich Vergelter【ツァイトリッヒ・ヴェルゲルター:「Indies Festival 1986」のパンフレットでは「時間的復讐者」と訳されている】の活動時期は80年代半ばで,シングルは「SCHLAGEN」(シュラーゲン)1枚のみ(B面に「Dimension」).他にはトランス・レコードが出したコンピレーション・アルバム『NG various collektiv from Trans Records』に1曲,東京で録音されドイツで発売された『Dead Tech Sampler No Wave from Japan』に2曲収録されているから合計5曲.すべて発売は1986年で,この年に解散した.「SCHLAGEN」は後に,トランスのベスト集『Trans Craze』に再録されている.

たったこれだけの音源を,高校生の僕は毎日貪るように聴いた.一定のテンポを繰り返し疾走感を醸す打ち込み音(あるいはドラム)と低いベース,リズムに切り込むメタル・パーカッションの無機質な金属音.吐き出すように単語を羅列する抑制した声.打ち込みを多用しているとはいえ,ハウスやテクノの軽さとは全く無縁の重厚な世界を垣間みた.「SCHLAGEN」は4分20秒辺りから急転直下,その急激な展開を聴くたびに僕は息を呑み,カタルシスを感じたものだ.これがノイズ/インダストリアルとの最初で,ほとんど最後の出逢いだった.

ノイズ/インダストリアル/アヴァンギャルド(前衛)系のサウンドは,通常の楽器以外にチェーンソーなど奇抜な道具を用いることもあり,よく「実験的」と形容される.Zeitlichも楽器にこだわらなかったけれど,ノイズ・バンドでは全くなかった.ノイバウテン(Einstürzende Neubauten,ドイツのインダストリアル・バンド)経由の金属音を用いたサウンドに刺激を受け,当時日進月歩の進化を遂げていたキーボードによる打ち込みを応用し独自の実験を展開した,最高にカッコいいバンドだった.

こう書くと,如何にも一高校生のすかした趣味と,かなり聴衆の限られたバンドの話と言われそうだが,CHUさんはその後,『鉄男』のサウンドトラックを担当し注目を集めた.ばちかぶりのヴォーカルだった田口トモロヲが初めて主演したこの映画は,冴えない男が或る日顔にできたニキビを潰すと,次第に身体全体が鉄に蝕まれてゆくという話で,低予算ながら(いやむしろ,それが功を奏して)スピード感のある映画となった.鉄の映像と金属音,即座に鉄を連想させる白黒の映像が完璧なまでに調和し,この作品で他の音楽を想像するのは不可能に近い.

しばしインダストリアルから離れていた僕は,このコラムを書きながらYouTubeで当時の音源に耳を傾けていた.すると中に,最近の石川さんのバンド(Der Eisenrost)の音を見つけた.三十年近く経てなお,CHUさんは相変わらずのスタイルで実験を継続していたのだった.

2016.06.08
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  YouTube / rasenvirus


  YouTube / Helter Skeletor


DER EISENROST filmed by 塚本晋也

 

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カタリベ
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