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マンネリズムも「ナンのこっちゃい」やっぱりJAGATARAは厄介だ!

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JAGATARAのファーストシングル「LAST TANGO IN JUKU」がリリースされた月
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photo:SOUND FINDER  

「ネタバレ注意」なんて言葉にぶつかると、僕は思わず拝みたくなる。小説や映画などで、物語のストーリーや結末を明かしてしまうことを指すあの言葉が、僕にはめっぽう有難い。例えば『シックス・センス』やブラピ主演の『セブン』なんかには、はらはらどきどき、意外なラストやどんでん返しを期待するから、あらかじめ結末が知らされてしまっては興ざめだというのはわからないでもない。どんなに面白い映画でも一度観ればそれまでというのなら、ネタをばらすやつなんて死刑にしてしまえ。でも好きな作品なら繰り返し観るし、好きな食べ物ならいつ食べてもかまわない。

そういえば昔の映画にこんなセリフがあった。「あなたのいう『新しい』は、今日は昨日と違うってことでしょう? 本当に新しいというのは、いつでも新しく感じるってことなのよ」。まるで痴呆か健忘症ばんざいのようなセリフだが、一理なくもない。ネタがばれても観るたび読むたび聴くたびに、まるで初めてのような新鮮さを覚える作品はいつでも、いつまででも新しい。だからネタバレ結構。ストーリーを追わなくてすむし。終了5分前でお決まりの印籠が登場する『水戸黄門』や、あらかじめ犯人が明かされている『刑事コロンボ』のマンネリズムを楽しむ人も多いのだ。でも、ロックバンドがいつも同じ曲ばかり演奏していたらどうだろう?

JAGATARAは1981年に自らのレーベル、アグリーオーファンレコードからファーストシングル「LAST TANGO IN JUKU / Hey Say!!」をリリースした。ちなみに名義は「財団法人じゃがたら」である。この「LAST…」は翌年のファーストアルバム『南蛮渡来』(名義は「暗黒大陸じゃがたら」)に「タンゴ」と題名を短くして再録された。でもヴァージョンが全く異なるし、歌詞も一部変更されている。ちなみに僕が初めて聴いたのはこのアルバムヴァージョンで、ずっと後に初出ヴァージョンを聴くまで、なぜタンゴという題名がついたのか理解できなかった。

そして2枚目の『君と踊り明かそう日の出を見るまで』(1985年の発売)の冒頭にも、同じ曲が収録された。JAGATARAの活動休止の原因となった、ヴォーカルの江戸アケミの入院前と一時退院後の二つのライブが収められたアルバムである。今もこのアルバムを最高傑作とするファンは多い。その「TANGO」と題されたヴァージョンは、何かの宗教儀式のような荘厳さを湛えている。

高知での療養後、江戸さんが復帰して1986年に活動を再開したJAGATARAは、翌87年に12インチ盤『UKI UKI』を発表する。これにも再始動後の渋谷での「TANGO」ライブヴァージョンが収められた。続いて通算4枚目のアルバムにしてメジャーデビュー盤にあたる『それから』と同時に、シングル「タンゴ(完結バージョン)/ GODFATHER」がリリースされる。新ヴァージョンである。これで漸く「完結」と思いきや、江戸さんの死後に発売された『HISTORY OF JAGATARA』(全3巻)で聴く「TANGO」(第3巻の1時間48分くらいから)は冒頭がアカペラに近く、以前までのとはまるでことなる異様なヴァージョンだった。

皆さん、思わずつぶやいたでしょう。何度やれば気が済むんだ、他にやる曲ないのか、と。そんな反応をあらかじめ見越していたかのごとく、この最後のヴァージョンでは、曲に入る直前にナレーションでOTOさん(JAGATARAのギタリスト)が、江戸さんの言葉を伝えている。曰く、「タンゴは何度も練り返してやっているけど、まだ納得できない」。そうなのだ、確信犯だったのだ。

JAGATARAにしてみれば、この曲が最初のシングルだったとか、代表曲だからとか、すでに知名度のある曲だからというもっともらしい理由でメジャーデビューに選んだのでも、複数のアルバムに収録したのでもない。ネタバレなんてどこ吹く風。マンネリズムなんて批判も「ナンのこっちゃい」。

たった一つのネタを何度もなんども練り直し、アレンジを変えては歌い、録音し続けた。いつも同じ曲だと知りながら、それでも僕らは聴くたびに動揺し、口ずさみ、頭の中で意味を問う。1回きりで聞き捨てられないし、すでにつねに今現れたばかりのように新しい。ああ、どうにも厄介なのだ、JAGATARAは。

2016.11.17
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  YouTube / autechre0711
 

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カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
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