別に、ウェイン・スミス(Wayne Smith with The Roots Radics)について書きたい訳ではありません。
僕が書きたいのは、メンズビギ!!
誰もが oh! Takeo Kikuchi♡ 傷だらけの天使、もしくはブルース・リー、燃えよドラゴンスーツと思ってしまう事でしょう。
しかし、僕が書きたいのは、85年に菊池武夫の跡を継いだ悲劇の天才デザイナー今西祐次の事。彼の才能に比例するかの如く、二つの悲劇が彼を飲み込んでいく。
一つ目は、偉大なる(生ける伝説たる)菊池武夫がビギの社長と大ゲンカの末、ワールドに電撃移籍。今西祐次は、望むと望まざるに関わらず、跡を継ぐしかなかった。
二つ目は、日本中の人々に喪失感を植え付けながら猛威を振るったバブル崩壊。
彼は、エコー&ザ・バニーメンのピート・デ・フレイタスと同じ型のドウカティに跨がり、自身でデザインしたレザーのツナギを纏い疾走する。
だからこそ彼のデザインした服は明るい。
楽天的で軽快、そしてユーモラス。
バブルの最後の輝きをそのまま反映したかの様な服。
そして87年、彼とデザインチームはジャマイカに飛ぶ。
コマーシャルフォトの撮影に行ったものだと誰もが思っていた(撮影して写真集まで出すに至るのですが…)。
ところがである。何とストーンズやクラッシュがレコーディングに訪れたキングストンの『ダイナミック・サウンド・スタジオ』でレゲエのレコードまで録音したのであった。
驚くべき事に、それは春夏物のノベルティ用に制作され顧客に無償で配られた!! 何て良い時代だったんだろう!?
Wayne Smith with The Roots Radics が歌う、今聴いても新鮮なレゲエチューン。曲名は「Slick We Slick “MB's TUNE”」 邦訳すると キマってるだろ、俺たち!
その頃、僕は高校生でBIGIの対面の学生服屋さんでバイトしていたので、お店の前を通るとこの曲が流れていた。
早く大人になりたかった。
ショーウィンドウにディスプレイされた今西祐次デザインのBIGIのスーツは、ズートスーツを基調にJAZZの不良っぽさを体現していた。
翌年の1988年、大学に推薦入学が決まり祖母がスーツを購入してくれると言い出し、僕は10万円を握りしめてBIGIの店に行った。
87年のGWから夏の間ずっと鳴っていたレゲエのノベルティはもう無かったが、カラーバーを貰った。
そのスーツは今も現役でもう30年近く着ている。
87年のGW。あの時の感覚や空気感が僕の80's幻想の最高沸点で、その熱は今もこれからも醒めない。
2017.04.20
Youtube / IN RADIX
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