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吟遊詩人 ルー・リード、ニューヨークで生きる男の歌

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photo:Warner Music Japan  

僕がルー・リードを初めて観たのは1990年7月。15年振りの単独公演ということもあり、ファンにとってはまさに待望の来日だった。最新アルバム『ニューヨーク』からの曲を中心としたセットリストで、ステージから放たれるヒリヒリとした緊張感が客席にも伝わり、静かだが濃密な空気に満ちたライヴだったと記憶している。

『ニューヨーク』は、ルー・リードにとって大きな節目となった傑作だ。一切の虚飾を廃した鋼のようなサウンドは、無駄がなく、驚くほど研ぎすまされている。そして、幾度となく推敲を重ねたであろう歌詞は、恐るべき完成度を誇り、ルー・リードの全キャリアにおいても最高の部類に入るだろう。

モノローグのように語られるヴォーカルは、まるで憑き物が落ちたかのようで、凄味は確実に増していた。バックの演奏に呼応して自然と発せられる言葉は独特のグルーヴを生み出し、修羅場をくぐり抜けた者だけが持ちうる深い説得力に、ただただ圧倒されるばかりだ。

CDブックレットの裏には、「58分(14曲)を本や映画のように座って聴くべきもの」とクレジットされている。おそらく、ルーなりに期するものがあったのだろう。タイトルのニューヨークとは、ルーの故郷であり、アイデンティティを形成した街だ。後に彼は自分の音楽を「ニューヨークで生きる男の叙事詩」と称している。そして、これ以降、ルー・リードの音楽はさらに贅肉を削ぎ落し、あたかも真実のみを語るかの如く、ますます研ぎすまされたものとなっていく。

そうした変化のきっかけとなったのが、ポップアートの奇才アンディ・ウォーホルの死だった。ルー・リードは、ウォーホルのバックアップを受けて、1967年にヴェルヴェット・アンダーグラウンドのメンバーとしてデビューしている。しかし、ほどなくして袂を分ち、1987年2月22日にウォーホルがこの世を去るまで、遂にふたりの関係が修復されることはなかった。

ルーも40代半ばを過ぎ、これまでの人生を振り返ることもあったのだろう。1987年4月、ウォーホルの追悼式で、やはり疎遠だったヴェルヴェッツの元メンバー、ジョン・ケイルと再会。その約1年後、ふたりはウォーホルに捧げる作品について話し合うと、1988年12月には彼の人生を題材にした新曲を揃え、1989年1月にコンサートをふたりだけで開催している。

このプロジェクトは、後に『ソングス・フォー・ドレラ』として作品化されたばかりか、誰もが予想しなかったオリジナルメンバーによるヴェルヴェット・アンダーグラウンド再結成ツアーへと繋がっていく。

『ニューヨーク』は、こうした一連の動きの中でレコーディング(1988年5月〜10月)、リリースされたアルバムだった(1989年1月10日発売)。その制作途上において、ヴェルヴェッツ時代にヴォーカルを分け合ったニコが、1988年7月18日に亡くなっている。

かつての仲間達の死が、そして最後まで関係を修復できなかった後悔が、ルーの創作意欲を強く刺激したのは想像に難くない。ルーはこれまでの人生と未来を見つめながら、サウンドを研ぎすまし、言葉には推敲を重ね、ニューヨークを舞台にした男の歌を綴っていったのだろう。

1990年7月の来日公演。ルーの後ろでドラムを叩いたのは、ヴェルヴェッツ時代の同僚モーリン・タッカーだった。そして、ジョン・ケイルとの『ソングス・フォー・ドレラ』も、このとき一夜だけのスペシャル公演として実現している。今思えば夢のような出来事だ。

80年代が終わり、90年代が幕を開けたとき、ルー・リードもまた大きな節目を迎えていた。自らの半生を精算し、新たな一歩を踏み出していた。その成果は、次作の『マジック・アンド・ロス』や『セット・ザ・トワイライト・リーリング』となって結実し、ルーのキャリアは何度目かのピークを迎えることになる。

あの頃、ルー・リードが生み出した強靭な音楽は、死後5年以上が過ぎた今も色褪せることなく、鋼鉄のような鈍い光を放ち続けている。

2019.03.02
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カタリベ
1970年生まれ
宮井章裕
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