1989年の名盤、ルー・リード「ニューヨーク」
早くも7回目の命日(10月27日)を迎えるルー・リード。『トランスフォーマー』(1972年)、『ベルリン』(1973年)、『コニー・アイランド・ベイビー』(1976年)など70年代に名盤を数多く残してますが、私にとっての名盤はリアルタイムで聴きまくった1989年の『ニューヨーク』です。
そもそもシングルヒットでチャートを賑わす人ではないので、80年代は特にシーンを賑わすことはほとんどなかったのですが、アルバムはコンスタントに出し続けていました。
『ブルー・マスク』(1982年)、『レジェンダリー・ハーツ』(1983年)など、現在では好評価が多い作品も発売当時はあまり話題にならずセールスも振るいませんでした。
退廃的な雰囲気は薄れ、サウンドも軽いタッチに転じた『ニュー・センセーションズ』(1984年)、『ミストライアル』(1986年)も同様。そんな中レーベルを移籍して発表した『ニューヨーク』を突如各メディアが絶賛し話題に。
ポイントは、フレッド・マーのプロデュースワークとルー・リードの歌詞
このアルバム、それまでの作品と大幅に違うわけではないんですが、シンプルながらもロックンロールのベーシックなカッコ良さを表現した佳曲揃いなんです。80年代に確立したサポートメンバー(残念ながら名手ロバート・クワインは何故かこの作品には参加してませんが)の演奏も素晴らしい。
無駄な音は一切ないし、これ以上足しても引いてもダメという完璧なパフォーマンス。ドラムを担当するフレッド・マーのプロデュースワークもツボを得てます。ちなみにフレッド・マーはそんなにプロデュース作は多くありませんが、2年後にマシュー・スウィートの『ガールフレンド』という超名盤を手掛けてます。センスあるなあ!
そしてやっぱり欠かせないルー・リードの歌詞。
あまりに多くの事象を内包する街の悲哀が『ニューヨーク』というアルバムコンセプトの下、それぞれの楽曲によってキレのある言葉で語られます。この時期のルー・リード、冴えまくってますね。
そういったアルバム全曲の連なりが見事なせいか、1曲目の「ロミオ・ハド・ジュリエット」のイントロのギターリフを聴いてしまったらあとはアルバム1枚、一気に聴いてしまう一体感が凄い。
最後は感動で泣けてくる、最高のロックンロールアルバム!
イントロのギターリフといえば忘れてはならないのが「ダーティー・ブルーバード」。このイントロだけでゴハン3杯はいけます! … って何のこっちゃ。まあ、それだけカッコいいということ。この曲、後に「スウィート・ジェーン」や「ワイルド・サイドを歩け」に並ぶほどの名曲扱いになりました。
疾走感溢れる「ゼア・イズ・ノー・タイム」、80年代版「ワイルド・サイドを歩け」とも思える「ハロウィーン・パレード」、壮大感に満ちた「ラスト・グレイト・アメリカン・ホエール」、激熱な叫びに痺れる「ストローマン」等々。複雑なコード展開がある曲はほとんどないのに、各曲がそれぞれドラマチックに響き渡ります。
これはまさに80年代最後に放ったルー・リードの大名盤。って書いてたらまた聴きたくなってきました。最高のロックンロールアルバムなんだけど、なんか最後は感動で泣けてくるんですよね。
※2017年10月11日に掲載された記事をアップデート
2020.10.27