目撃!モータウン・レコードの創立25周年記念イベント
「ムーンウォーク」、あれはもうダンス史上画期的な、“発明” としか言いようのないものですよね。誰が発明したって? そりゃもちろん!… 私もマイケル・ジャクソンだと思っていましたが、どうやら違うみたい。
ジェフリー・ダニエル(Jeffrey Daniel)という、『ソウル・トレイン(Soul Train)』でレギュラーダンサーをやっていた人が開発者らしいです。1982年の『トップ・オブ・ザ・ポップス(Top of the Pops)』という英国BBCの人気番組で披露し、その時もけっこう話題になったとか。マイケルは彼に伝授を受けたのだそうです。
だけどそれに「ムーンウォーク」という名前をつけ、それこそ日本の一般大衆にまで強烈なインパクトを与えたのは、紛れもなくマイケル・ジャクソン。
そしてマイケルが「ビリー・ジーン(Billie Jean)」に乗せてムーンウォークを初めて世に披露したのが、モータウン・レコードの創立25周年記念イベント『Yesterday, Today, Forever』でした。
「ビリー・ジーン」で魅せた魔法のような動き
実はそのイベントがテレビで放送された夜、1983年5月16日、月曜日、夜9:00〜11:00、たまたま私は山下久美子のアルバム『Sophia』のレコーディングでニューヨークに滞在しており、さらにたまたまレコーディングがオフで、その放映をしっかりと目撃したのです。
もっとタマタマなのは、そんなイベントが放映されることも知らず、外に居たのですが、ビールでも飲もうとふらっと入ったレストランだかパブにテレビがあり、それが映っていたのです。けっこう混んでいましたが、そこに居た人たちはオンエアのことを知ってたんでしょう、みんなテレビに見入っていました。釣られて私も見ました。
やがて登場したマイケル・ジャクソン。まずは “ジャクソン5” として何曲かメドレーで演ったあと、兄弟たちはステージから捌けてマイケルだけが残り、ちょうど大ヒット中だった「ビリー・ジーン」が始まりました。さすがの切れ味鋭いダンスに見入っていると(この頃の “黒い” マイケルはほんとにカッコよかったなぁ…)、突然例の、前に歩いているのに後ろに滑るように進んでいくという魔法のような動きをやって見せたのです。
まさに目を疑うとはこのことで、「あれ! 今の何?」って感じです。満席のレストラン内も一瞬シーンとなったような気がしました。そのあとドッカーン! 大騒ぎです。ネットだったらすぐに見直すところでしょうが、もちろんそんなことは不可能ですから、みんな自分が見たものの正体を周りの人と確認し合い、興奮を分かち合うって図でしたね。
たった数秒のダンスがアルバム「スリラー」の売上を急増させた
さて、このイベント、テレビ放送はこの時でしたが、実際催されたのは3月25日、カリフォルニアのパサデナという町の、パサデナ・シヴィック・オーディトリアム(Pasadena Civic Auditorium)という会場でした。ですからマイケルのムーンウォークを初めて目撃した一般人はそこにいた観客ということになります。
ただこれは最初からテレビの特番としての企画、つまりドリフの『8時だョ! 全員集合』のような(例えなくてもいいか)公開録画だったので、公式には5月16日が「ムーンウォーク誕生の日」としてもいいのではないでしょうか。それを、たとえタマタマの3乗くらいの偶然だったとは言え、この目で見ることができたのは、あとから考えると貴重な体験だったなーと思います。まぁ、全米で約3400万人が見ていたらしいですけどね。でも、その中の日本人って考えるとね…。
アルバム『スリラー(Thriller)』は6600万枚も売れ、史上最高に売れたアルバムとしてギネス認定されているそうですが、グンと売上が伸びたのがこのテレビ放送のあとだったそうです。ムーンウォークのインパクトがいかに凄かったかということですね。
ただ本人は終わったあと、ムーンウォークのあとのつま先立ちで静止する部分がしっかり決められなかった、とがっかりしていたそうです。そこまで完璧主義でなければ、もっと長生きできたのにね、きっと。
※2017年12月1日、2018年5月16日に掲載された記事をアップデート
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2022.05.16