2022年 6月22日

増田惠子「こもれびの椅子」不思議と沁みてくる魅惑の歌声

17
0
 
 この日何の日? 
増田惠子のシングル「こもれびの椅子」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 2022年のコラム 
小田和正「early summer 2022」オフコース時代からつながるそれぞれの “今”

田原俊彦インタビュー ② 歌って踊って魅せること。それが僕の一番大好きな仕事だからね

田原俊彦インタビュー ③ 田原俊彦という商標登録をステージで輝かせないと

新曲「ロマンティストでいいじゃない」田原俊彦はいつだってエンターテイナー!

夏だ!ギターだ!エレキの神様だ!寺内タケシとブルージーンズは時代を超える

田原俊彦インタビュー ① 田原俊彦は常にキラキラしていなくてはいけない

もっとみる≫




増田惠子の声の魅力を存分に引き出したソロデビュー作「すずめ」


昨年、増田惠子が「ソロデビュー40周年」を迎えたと聞いて「え、もうそんなに経つの?」とつい驚いてしまった。1981年3月末、後楽園球場でのコンサートをもってピンク・レディーは解散。ケイはその8ヵ月後に「増田けい子」名義でソロデビューを果たす。なんと、中島みゆきの曲で。

ピンク・レディー時代、ハスキーで太く、独特の陰影を持つケイの声質は、明るく澄んだミーの歌声と対をなしていた。この陰陽のハーモニーがあったからこそ、阿久悠・都倉俊一コンビも楽曲に様々な趣向を凝らすことができた。あまり前面には出ないが、陰でしっかり主張するタイプの声だ。

中島みゆき作詞・作曲のソロデビュー曲「すずめ」は、そんなケイ個人の声の魅力を存分に引き出す一曲だった。

失恋した女心を雀に喩えたこの曲を、ケイはあえて感情を抑え、淡々と歌っている。歌声にそこはかとなく漂う薄幸さとけなげさがたまらない。オリコン最高9位のヒットを記録したのは、ケイの歌声にそれだけ人の心を揺さぶる何かがあったからだ。

節目の年を迎えてリリースされた「そして、ここから…」


昨年、そのソロデビューからちょうど40周年。ピンク・レディーでデビューしてから45周年という節目を迎えたケイ。記念盤として、7月27日に2枚組CD『そして、ここから…』がビクターから発売される。

ファンにとって嬉しいのは、ライブ音源を含む「ピンク・レディー時代のケイのソロ曲」に加え、「ソロデビュー後のシングルA面全曲」がレーベルの枠を超えて収録されているところだ。ケイの声の魅力がたっぷり堪能できるし、シンガーとして彼女がどう成長してきたのか、その足跡もたどることができる。

このほか、昨年無観客で開催された「40周年記念・配信ライブ」の模様も収録されていて、スタジオ音源とはまた違ったケイの“生声”が味わえる上に、現在のケイによる「ピンク・レディーメドレー」も楽しめる。

まさに至れり尽くせりのこの40周年記念盤、もう一つ注目してほしいのは「新曲5曲」だ。第1弾で先行配信された「Del Sole」は、ケイが心から楽しんで歌っていることが聴いていて伝わってくる。

配信第2弾の「Et j'aime la vie~今が好き」は、これまでケイ自身が歩んできた人生にも重なる歌詞で、作曲は先日惜しまれつつ世を去った上田知華だ。

また「向日葵はうつむかない」は、阿久悠・都倉俊一コンビの“新作”だ。これは阿久が遺した未発表の詩に都倉が曲をつけたもので、うつむかず前向きに生きるケイにぴったりの曲。ケイの恩師二人に対する深い情愛も感じられる。

「観覧車」も阿久の未発表作で、こちらは宇崎竜童作曲。途中の語りがニクい。

ヨーロッパと縁が深い増田惠子が歌う新曲「こもれびの椅子」


そしてもう1曲、ぜひ聴いてほしい新曲が、6月22日に第3弾として配信された「こもれびの椅子」だ。作詞は松井五郎、作曲は日本在住のイタリア人ピアニスト、アルベルト・ピッツオが手掛けている。

ケイは80年代末にパリでシャンソンを学び、フランスでデビューしたこともあり、ヨーロッパとは縁が深い。先に挙げた新曲のタイトル「Del Sole」はイタリア語だし、「Et j'aime la vie」はフランス語だ。

欧州を愛する日本人のケイと、日本を愛するイタリア人のアルベルトが出逢ったこの曲は、荘重なクラシック風のナンバー。聴く人を優しく包み込んでくれる癒しの1曲だ。

オペラ歌手が歌ってもおかしくない曲だが、ケイが飾ることなく、あくまで自然体で歌っているのが心地よい。

 ねえ 今でも醒めない夢もある
 二人で築いたこもれび

椅子に腰掛けて、窓越しに風景を見つめる二人。おそらく、長年一緒に人生を歩んできたパートナーだろう。キラキラと光る木漏れ陽は、これまで二人で築いてきた、かけがえのない想い出の喩えかもしれない。

長い人生、涙を流す日もあれば、冷たい雨にさらされる日もある。だがケイは優しく、しかし力強く、こう歌う。

 でも必ず季節はめぐるから
 並んで見てる光は消えない
 二人のこもれび

聴くたびに心に沁みるケイの歌声


41年前、「すずめ」を聴いたときにも思ったが、聴くたびに不思議と心に沁みてくるケイの声。彼女自身の人生にも、いろいろな出来事があって今があり、その一つ一つが歌声に反映されているからだ。

新曲5曲はいずれもクォリティが高いが、この「こもれびの椅子」は本アルバム中、白眉の名曲である。あらためて、ケイの声の魔力にやられてしまった次第。

しかし、こういう聖母のような曲も歌う一方で、「地球の男にあきたところよ」と歌う振り幅の広さ…… 増田惠子、グレイト!

特集! ピンク・レディー伝説

▶ 増田惠子のコラム一覧はこちら!



2022.06.23
17
  YouTube / Victor Entertainment


  Songlink
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1967年生まれ
チャッピー加藤
コラムリスト≫
55
1
9
7
8
ピンク・レディー「サウスポー」阿久悠と都倉俊一が土壇場で生み出した歌謡曲の最高峰
カタリベ / 鈴木 啓之
54
2
0
1
0
解散やめ!宣言をしたピンク・レディー、その第2幕における2人の真骨頂!
カタリベ / 三園 彩華
6
1
9
7
9
山口百恵「愛の嵐」ジェラシーの音を表現した美しく重厚な30秒のイントロ
カタリベ / 藤田 太郎
21
1
9
8
0
ピンク・レディー解散発表後にリリースされた名曲「うたかた」を聴いて!
カタリベ / はやしとも
53
1
9
7
7
ピンク・レディー「渚のシンドバッド」デビュー4作目にして早くもミリオン達成!
カタリベ / チェリー|昭和TVワンダーランド
50
1
9
8
4
作詞家 松井五郎の世界を堪能!時代を超えた《女性ボーカル・エールソング編》
カタリベ / 本田 隆