3月21日

80年代イントロなんでもベスト3 ~ その2「EEAB イントロ」

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さて。いよいよ私の新刊『イントロの法則80's~沢田研二から大滝詠一まで』(文藝春秋)が発売されました。80年代の邦楽ポップスを、イントロから分析していくという、おそらく日本初、いや、もしくは世界初の「イントロ評論本」です。

というわけで、新刊発売記念の特別企画として、「80年代イントロなんでもベスト3」と題して、色んな評価基準で、80年代イントロの「ベスト3」を決めていくこの企画。その第2回は、「EEAB イントロ」ベスト3。

「EEAB」って何かというと、コード進行が、その名のごとく、【E】→【E】→【A】→【B】で出来ているイントロのことです。と言うと、何だか難しそうな話に聴こえますが、いえいえ、キーがEの主要三和音で出来ている、快活でロックンロールなコード進行のイントロということです。

では、そんな【E】→【E】→【A】→【B】のイントロには、どんなものがあるのでしょうか。ベスト3の発表です。


第3位:佐野元春『アンジェリーナ』
作詞:佐野元春
作曲:佐野元春
編曲:大村雅朗
発売:1980年3月21日


1980年の春の発売。80年代を迎え入れる号砲のようなイントロ。コード進行はもちろん、【E】→【E】→【A】→【B】。

この『アンジェリーナ』のイントロの背景にあるのは、明らかに、ブルース・スプリングスティーン『明日なき暴走(Born to Run)』(75年)のイントロです。

『明日なき暴走』のイントロのコード進行も【E】→【E】→【A】→【B】。さらにこれらのイントロの根源には、こちらも歌い出しがまったく同じコード進行の、ロネッツ『ビー・マイ・ベイビー』(63年)があります。つまり「EEAB イントロ」とは “『ビー・マイ・ベイビー』系イントロ群” なのです。

よく言われるように、ブルース・スプリングスティーンと当時の佐野元春は、声と歌い方がそっくりで、イントロも含めて、『アンジェリーナ』の曲全体のコンセプト自体「和製スプリングスティーン」を狙ったものと思われ、その結果として、この「EEAB イントロ」があるのでしょう。

しかし、『明日なき暴走』に対して、冒頭の「♪ ギョンギョロ・ギョンギョロ~」という、機械的に加工したギターサウンドが加わるところが、何ともニューウェーブ的、80年代的で、『明日なき暴走』よりも、斬新な感じに仕上がっています。そのあたりは、編曲家のセンスでしょう。編曲家の名前は―― 大村雅朗。


第2位:新田恵利『冬のオペラグラス』
作詞:秋元康
作曲:佐藤準
編曲:佐藤準
発売:1986年1月1日


意外なところから、2位の「EEAB イントロ」が来ました。おニャン子クラブ会員番号4番=新田恵利のデビュー曲。発売は86年の元日。

これはもう明らかに、ロネッツ『ビー・マイ・ベイビー』の影響下にあります。イントロが【E】→【E】→【A】→【B】で出来ていることに加え、ドラムスのパターンも『ビー・マイ・ベイビー』に則った「ドッ・ッド・ドッ・ターン」になっています。

また、そのコード進行とドラムスの上に乗るシンセサイザー(?)のメロディが、ビーチ・ボーイズ『ファン・ファン・ファン』(64年)のエンディングで歌われているファルセットのメロディになっています。このあたり、作・編曲を手がけた佐藤準の遊び心でしょうか。

実は、この曲については、とても強烈な個人的思い出があるのですが、それについては、ぜひ『イントロの法則80's~沢田研二から大滝詠一まで』をご一読下さいませ。


第1位:大滝詠一『君は天然色』
作詞:松本隆
作曲:大瀧詠一
編曲:多羅尾伴内
発売:1981年3月21日


はい。実はあの「♪ ジャカジャ・ジャカジャ・ジャカジャ・ジャカジャ・ジャカジャ・ジャカジャ・ジャカジャ・ジャカジャ」も【E】→【E】→【A】→【B】だったんですね。

大滝詠一といえば、フィル・スペクター。フィル・スペクターといえばロネッツなので、このイントロも、『ビー・マイ・ベイビー』を下敷きにしているのかもしれませんが、大滝詠一のこと、そうそう単純ではないでしょう。もっと色んなオールディーズ楽曲のエッセンスがつまっているはずです。

それでも、あれほど複雑な構成の『君は天然色』なのに、イントロは『ビー・マイ・ベイビー』『アンジェリーナ』や『冬のオペラグラス』と同じ、至極シンプルな「EEAB イントロ」だったのですから驚きます。

ただ、「さすが大滝詠一!」と思うのは、歌メロに入ったら、いきなり E から D に転調するのです。よく聴いてみて下さい。全音(1音)分、エアポケットにすとんと落ちるような感じがしますから。

―― 以上、80年代の「EEAB イントロベスト3」をお届けしました。新刊『イントロの法則80's~沢田研二から大滝詠一まで』では、こういう話を、こういう筆致で、でももっと長文でこってりと分析していますので、ぜひご一読下さい。

2018.10.12
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iTunes / SINGLES コンプリート 新田恵利



iTunes / A LONG VACATION 大滝 詠一

 

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