なぜ80年じゃないのか猛烈に気になっていた。
大阪万博が70年、沖縄海洋博が75年だったのだから、次の博覧会は5年刻みの80年だろうと勝手に思っていたところ、ポートピアが81年というのがどうにも合点がいかなかったのだ。
いや、きっと当初は80年の開催予定だったに違いないが、何らかの理由でずれ込んでしまったのだろう。と自分の中で勝手な葛藤と憶測を繰り返していたことを30数年ぶりに想い出した。しかもその後のつくば万博が85年、花博が90年だったから尚更である。
無類の博覧会好きとしてはいまだに引っかかっているポートピア81年問題。ところがよく考えてみると、他がみな国際博覧会なのに対して、ポートピアだけは地方博覧会なのであった。ちょっと格下だから、それじゃ仕方ないだろうなんて妙に納得したりして。
ポートピア’81こと神戸ポートアイランド博覧会は、有楽町・日劇が閉館し、横綱・輪島が現役引退した81年の春、3月20日に開幕した。メインテーマは「新しい “海の文化都市” の創造」。サブテーマとして「魅力ある未来都市」「21世紀の港とくらし」「広場としての太平洋」「手をつなごう世界のふるさと」が掲げられた。
会場となったポートアイランドは神戸港内に作られた人工島で、66年の着工以来、実に15年の歳月をかけて完成し、そのお披露目の意味での博覧会だったのである。
博覧会好きなどと言っている自分が実際に訪れていないのは誠に面目ないのだが、実を言えば大阪万博も海洋博もつくば博も花博も行けていない。行ったことがあるのはポートピアと同じ地方博として89年に開催された横浜博くらい―― それよりも各催しの関連レコードを集めることに注力してきた。つまりは無類の博覧会音盤好き。もちろんその熱に火を付けてくれたのは「ポートピア’81」というわけで、ここではその関連盤を紹介したい。
EXPO’70 の時のように、同じ歌を多くの歌手が競作することもなく、ポートピアのテーマといえば、ゴダイゴが歌った「ポートピア」1曲に集中する。
リリースは80年5月。人気ドラマ『西遊記』の主題歌「ガンダーラ」でブレイクし、国際児童年協賛歌「ビューティフル・ネーム」やアニメ映画の主題歌「銀河鉄道999」をヒットさせて幅広い世代から支持されていたゴダイゴは申し分ないキャスティングであったろう。「ポートピア」はスマッシュヒットとなり、80年の『第31回NHK紅白歌合戦』でも歌唱された。そして日本人の99.9パーセントは、ポートピアの歌はこれしかご存知ないはず。ここから先は残りの0.1パーセントの方々と、探求心旺盛な一部の好事家に捧げる。
博覧会の名物といえば会場に立ちならぶパビリオン。ポートピアの会場で一際目立っていたのが、コーヒーカップの形をした “UCCコーヒー館” だったようだ。そのテーマソングとして出された「想い出の KOBE」は、ドラマ『ちょっとマイウェイ』の主題歌でおなじみのパルが歌って美しいコーラスワークを聴かせてくれる。作曲は「お嫁サンバ」の小杉保夫が、“こすぎやすお” となぜか平仮名でクレジットされていた。ちなみにこの建物は “UCCコーヒー博物館” に改装されて、現在もポートライナー南公園駅前に建っているそう。一度訪ねてみたい。
コテコテの一枚では、民謡の鎌田英一と高橋キヨ子が歌う「神戸博音頭」がある。汽笛の “ポー” と “ポートピア” をかけた詞がなかなか素敵。これまで日本で開催されたすべての博覧会には音頭が存在する。博覧会ではないが、最近ではスカイツリーの開塔時にも音頭が多数出されており、やはり日本人にとって音頭は欠かせない民族音楽なのだ。2020年の東京オリンピックでも「東京五輪音頭」がリニューアルして使われるらしい。
ほかに、ポートピア自体の歌ではないが、会場となった神戸ポートピアランドのイメージソングとして出されたのが、平尾昌晃と秋篠美帆が歌った「恋人たちの港」。作曲はもちろん平尾自身で「カナダからの手紙」よりムード歌謡寄りのデュエットナンバーだった。秋篠は宝塚の団員で、カップリングの「愛のポートピアランド」を歌ったフォーバイオレッツも宝塚のメンバー4人で構成されていた。
ポートピア関連盤の台風の目ともいうべきが、大地真央のレコードである。題して「ポートピア’81がやって来る」。カップリングにはご多分に漏れず「ポートピア音頭」が配された。タカラジェンヌが音頭を? と思ってしまうのだが、これが意外とフィットしているのだ。
このシングル盤は同じ内容でCBS・ソニーと東宝レコードの2社から出されていたのが面白い。宝塚の団員は基本東宝レコードの専属だったための特別な措置と思われるが、ジャケットの写真も異なるのでコレクターは2枚とも揃えなければならないだろう。
あとは手元にはないのだが、博覧会協会が自主制作した「光る海の城 / ザザザ~ン・ポートピア」というシングルがあるらしい。やなせたかし作詞、いずみたく作曲の「手のひらを太陽に」コンビによる作品。
そして最後に謎なのが、当時ヒットしていた矢野顕子「春咲小紅」のこと。
カネボウ化粧品春のキャンペーンソングだったこの曲の歌詞の一節がどうしても “春先 神戸に 見に来てね” と聴こえてしまう。タイミングがあまりにもピッタリだったので、これは絶対 “裏” ポートピアソングに違いないと思い続けてきたのだが、今やウィキペディアにも “本曲とポートピア'81とは、何ら関係はない” と記されている。
でも、作詞はコピーライターの糸井重里氏ですよ。ちょっとした遊びでダブルミーニングが込められたとしても不思議はない。もしも糸井さんに会う機会があったら事の真相を確かめたいと思う。
本当に単なる偶然だったらご免なさい。
2018.03.20
YouTube / shima neko
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