とりわけ目立つ奇天烈なアーティスト、それがC-C-B
まだストリーミング・サービスが無かった頃、お金のない中高生が懐メロに触れる機会はそう多くはなかった。そんな中、毎週いろいろな時代の流行歌を教えてくれる番組が日本テレビ系で放送されていた。『速報!歌の大辞テン!!』である。
過去の同時期とリアルタイムでヒットしている曲をトップ10形式で交互に紹介するというコンセプトで、最盛期には最高視聴率26.8%(ビデオリサーチ・関東調べ)を記録した人気番組だった。
放送期間は1996年〜2005年というから、私の青春時代とドンピシャである。なるほど、私の懐メロ好きはこの番組の影響が多少なりともあったのかもしれない。
この番組で取り上げた最古の時代は1964年だそうだが、もっぱら若かりし日の私が関心を持ったのは1980年代だった。従来の歌謡曲、ニューミュージックに加えて、アイドルソングの進化、さらにユーロビートなど打ち込みサウンドが多用されるようになり、音楽のカオス化が急激に進んだ時代。
イロモノから実力派まで、多種多様なアーティストが混在した80年代のランキングは、まさに “めくるめく” という言葉がぴったりだった。そんな中、とりわけ目立つ奇天烈なアーティストがいた。それがC-C-Bである。
ドラムを叩きながら歌う蛍光ピンクの髪をした笠浩二
まず目を引くのはセンターで歌っている、白縁? ピンク縁? の大きなメガネをかけた、ドラムを叩きながら歌う蛍光ピンクの髪をしたボーカル(笠浩二)だ。いわゆるドラムボーカルは「嵐を呼ぶ男」の石原裕次郎、海外ではカーペンターズ(初期)のカレンなど前例はあるにはあるが、少なくとも私には初めて見る光景だった。
その画期的なスタイルに派手なビジュアルが組み合わさって、一度見たら忘れられないインパクトを脳髄に叩き込まれる。そしてよく見ると、ボーカルだけではなく他のメンバーも青や緑などカラフルに染め上げていることに気付く。ビジュアル系が音楽シーンを席巻する何年も前だ。ある意味、日本の “元祖ビジュアル系” はC-C-Bという説も成り立つのではあるまいか。
ビジュアルに圧倒されて怯んだところに、今度は音楽面で強烈なパンチを食らわされる。曲はもちろん「Romanticが止まらない」だ。
のっけからあの電子音ピコピコのイントロに早くもこちらはKO寸前。そして裏声で叫ぶ「Fu Fu〜」など印象的なフレーズを挟みつつ進行し、サビでは一転して歌謡曲的なメロディが展開される。テクノなのか、ロックなのか、はたまた歌謡曲なのか。あらゆる売れ線要素をごちゃ混ぜにした “怪物ミクスチャーソング” とでも、ひとまずここでは呼ばせてもらおう。
中山美穂主演の人気ドラマ「毎度おさわがせします」の主題歌に
こんな怪物ソングを作り上げたのは、作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:船山基紀という泣く子も黙る黄金トリオ。この方々、引き出しの多さが四次元ポケット並みだ。
本作が異例のヒットとなったのは、中山美穂主演の人気ドラマ「毎度おさわがせします」の主題歌になったことも要因のひとつだろう。ただ、一にも二にも楽曲の強さ、そしてバンドの “変化” なしには語れない。
あっと驚く派手なビジュアルは本作から始まったもので、前作シングル「瞳少女」の頃はチェッカーズをほんのり意識したようなノーマルなルックスだったようだ。笠浩二がトレードマークであるメガネをかけ始めたのも「Romanticが止まらない」以降のことだ。
またデビュー当時から名乗っていた「ココナッツ・ボーイズ」から、無機質さを感じさせる「C-C-B」にアーティスト名を正式変更したことも大きかった。
こうした “変化” が本作の持つテクノ的な軽薄感と化学反応を起こしたことで、「Romanticが止まらない」は時代を象徴する作品に化けたのであろう。
紅白で披露したのは「Lucky Chanceをもう一度」
1985年度年間4位(オリコン調べ)という輝かしい実績にも慢心することなく、彼らは快進撃を続けた。「Lucky Chanceをもう一度」「空想Kiss」「元気なブロークン・ハート」はいずれもスマッシュヒットを記録。1986年以降は自作曲にも挑戦し、「原色したいね」などヒット作を生んでいる。
ちなみにブレイクした1985年に出場した紅白歌合戦では、「Romanticが止まらない」ではなく「Lucky Chanceをもう一度」を披露している。後年、懐メロ番組などでフィーチャーされるのが「Romanticが止まらない」ばかりだったのがもったいない。そう思えるほどC-C-Bは複数のヒット作を持つ人気バンドだったのだ。
来る12月27日、オリジナルアルバム7タイトルにボーナス・トラックを収録した“Plus版”(1994年リリース)が一挙再リリースとなる。29年ぶりの復刻はマニア垂涎間違いなしの、デビュー40周年を彩るにふさわしい豪華企画だ。
「Romanticが止まらない」収録のファーストアルバム『すてきなビート』から、解散前最後のオリジナルアルバムとなった『信じていれば』に至るまで、シンセサイザーを駆使した華やかなサウンドや、バラエティに富んだ世界観はC-C-Bならではの一貫した魅力といえるだろう。当時からのファンはもちろんのこと、新たな世代のリスナーにも新鮮さと驚きをもたらすはず。この年末年始はC-C-Bの音楽に触れ、その魅力をじっくりと味わってみて欲しい。
Information
▶︎C-C-Bオリジナルアルバム7タイトルにボーナス・トラックを収録した “Plus版” を12月27日(水)に一挙再リリース!
https://store.universal-music.co.jp/artist/ccb/
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2023.12.22