トップミュージシャンが映画の主役を張り、ハリウッドスターとしても成功するのは珍しくない。最近だとビヨンセやウィル・スミスもそうだし、ホイットニー・ヒューストンも演技はさておき映画と主題歌は大ヒットした。
彼らトップアーティストは皆、パフォーマーとして一流なのだから、まあ納得できる話だが、逆となるとどうだろう。それは絶対的に楽器がうまいとか、歌がうまくないとあり得ない話だから、成功例は限られるだろう。
だからエディ・マーフィが映画と全く関係なく音楽デビューしたと聞いて、せいぜい「ビバリーヒルズコップ」が大ヒットして調子に乗ってんなぁ、ぐらいにしか考えていなかった。
楽曲・プロデュースはリック・ジェームス。プリンスのライバルとして扱われていたが、自らのパフォーマンスだけでなく、楽曲提供やプロデュースでも力を発揮していたことや、オネーちゃんグループを引き連れてたりして、やってることもよく似ていたから当然である。
とにかく映画と音楽、それぞれで波に乗ってる二人が組めば、そこそこ実力が伴っていれば、成功は固かったのだろう。さしずめアメリカ版「H Jungle with t」ってところだろうか。
そんな調子だからスターのお遊びみたいなつもりで、あまり期待していなかった分、初めて曲を聴いた時の衝撃は大きかった。こんなレコーディングのドキュメントのような演出のPVも珍しくなかったが、とにかくサイコーに乗ってる、ごキゲンな二人の姿が映っている。
この曲はビルボードチャートの2位まで駆け上がり、3週間にわたってその座を守った。かくしてエディはミュージックチャートを席巻した稀有なハリウッドスターになり得たのだ。
ところでリックのルックスやイメージは、夜道で遭いたくないタイプの “ワル” そのものだ。 かの「スーパー・フリーク」のように、曲調こそシンセポップだが、エロ過ぎる歌詞で、いかにも頭が悪そうな作品も多い。この頃をピークにして “ドラッグ&セックス” を地で行く私生活が災いして、度々警察沙汰を起こしたりして低迷期に入り、2004年、生き急ぐように56才で早逝してしまう。
かつてのライバル、プリンスに先立つこと12年である。
今思えば二人の共演は、エディの金字塔というだけでなく、リックにとってもその全盛期を象徴する奇跡のコラボだったと思えてならない。
2016.07.01
YouTube / EddieMurphyVevo
YouTube / RickJamesVEVO
Information