1987年の若者の姿を映したMV「季節が君だけを変える」
後追い世代の私が昭和後期のカルチャーが好きになったばかりの頃、とても特別に思っていて、何度も繰り返し観た映像がある。
それは、BOØWYの楽曲「季節が君だけを変える」のミュージックビデオだ。
曲に合わせて、何人もの若者たちが繰り返し現れては消えていくという構成のシンプルなビデオだが、勤労青年もいけてるギャルも、ヤンキーも不思議ちゃんも真面目そうな子も、平等に映し出され平等に消えてゆくその様は、1987年の若者のすべてのように思えた。
BOØWYのアルバムを数多く担当したてディレクター、子安次郎氏が後に「日本のミュージックビデオ史上ベスト3に入る最高傑作」と語るこのプロモーションビデオには、しかし、メンバーの姿はほんの少ししか映らないためか(一部ファンの間ではそれが不満だったという声も残っている)、BOØWYがどんなバンドかということは知らずに来てしまった。
大好きな「季節が君だけを変える」が収録されているアルバムはどのような作品だろう。
BOØWY第6作目にして最後のアルバム「PSYCHOPATH」
『PSYCHOPATH』は、BOØWYの第6作目のアルバムである。既に音楽的にも商業的にも成功を収めたBOØWYは、このアルバムが発売された1987年には解散に向けて活動をしていくようになる。
これが最後のアルバムになるという打ち合わせはメンバー間ではなかったようだが、全員が終わりを意識して作っていた、というのがこのアルバムの特異性である。そのせいか、一聴した印象に、仄かな切なさがある。しかしその切なさとは、あまりの完成度の高さと「やりきった感」に由来するもののようだ。
アルバムは、ブロードウェイのミュージカル『オペラ座の怪人』を思わせるイントロの「LIAR GIRL」からドラマティックに始まる。そこから続く、粒揃いの楽曲の数々。どの曲にも共通するのはメロディアスな曲調だ。歌詞で歌われる状況は様々だが、一貫して小気味がよく、確かなテクニックと耳に心地よい親しみやすさをも感じる。
その格好良さと親しみやすさの絶妙なマリアージュは、6曲目の「Marionette」で頂点を迎える。アンセムとはこういうこと、というのを体現するような気持ちの良さ。踊りたくなってしまう。
聴き終わった後の感動はミュージカル「オペラ座の怪人」?
圧倒的なポップ感と技術力に胸打たれていると、43分がすぐに過ぎてしまう。聴き終わった後、「LIAR GIRL」のイントロを思い出し、この聴き心地は、ミュージカルの「オペラ座の怪人」の日本公演を観た後の感動に似ている、と思い至った。
1987年という、日本人が海外のカルチャーをそれまでよりも手軽に楽しみ、独自に昇華できるようになった時代のことも思わせられる。そして、アルバムの最後を飾るのが「季節が君だけを変える」だ。初め、それまでの流れと関係なく唐突に始まるように思えるが、次第に、「BOØWYはこの曲で終わらなければならなかった」という思いが強くなる。
アルバムの最後を飾る「季節が君だけを変える」
―― そんなことを考えて、改めて「季節が君だけを変える」のMVを観る。街中を歩いている人は無作為に選ばれたように見える(実際には、ファンクラブの会員が多く出演しているそうだが、街で声をかけられた無関係の若者も多数出ているようだ。80年代半ばより活躍するザ・コレクターズのボーカル、加藤ひさし氏の若き頃も写っている)。
そして、アルバムの最後を飾るのが「季節が君だけを変える」だ。初め、それまでの流れと関係なく唐突に始まるように思えるが、次第に、「BOØWYはこの曲で終わらなければならなかった」という思いが強くなる。
改めて、ミュージックビデオを見返してみる。街中を歩いている、無作為に選ばれたように見える若者たちの顔は愛おしく、また、これ以上ないくらい1987年の東京を映し出している。
これは、フィルムを使い切ってしまうために撮った何の作為もない写真が、のちのち、他のどんな写真よりも見返して楽しいものになる、あの現象に似ている。そして、このあり方はアルバムのラストを飾っている「季節が君だけを変える」そのものでかる。
ここに映る東京は「ガラスの中の退屈な街」などではない。
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2021.10.27