9月7日
バブル期のカフェバーとピンク・フロイド、耳から離れない「現実との差異」
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photo:FANART.TV  

80年代後半から90年代のはじめにかけて日本は好景気による所謂「バブル」の真っ只中にありました。そんな時に大学生だった私は、勉強もせずバイトばかりして、そして得た給料で遊び呆けておりました。そんな時代を象徴するもののひとつが「カフェバー」。

お洒落でカッコいいお店でお酒を飲んで楽しみたい。でも大学生がまだ覚えたてのお酒を本格的なカウンターのみのバーで静かに嗜むほどの風格も勇気もない。そこは、そういう自分にぴったりな場所でした。

何軒かお気に入りの店をみつけて、ことあるごとに通ってました。そのうちのひとつのお店にはある「余興」があったので今でも憶えてます。

一晩に何回かあるその「余興」とは?

まず店内のBGMが止まります。そして店の奥の暗がりにスポットライトがあたり、大量のスモークが焚かれます。そこには格子があってその向こうに何があるのかよくわからない。ただその瞬間だけライトがあたるので格子とその奥に何かがあるということだけはわかります。

その間、大音量で流される曲がピンク・フロイドの87年のアルバム『鬱(A Momentary Lapse Of Reason)』に収録されている「現実との差異(On The Turning Away)」です。

幻想的なイントロから始まるその楽曲のイメージのおかげで、その「余興」はたくさんの客の視線を集め曲の終わりとともに終了し、ただの暗がりに戻ります。曲の変化に合わせて照明が変わったりしますが(特にデイヴ・ギルモアのギターソロのところなど)、それ以外のギミックもなく、その奥にあるものも結局わかりません。思わず「オチは無いんかい!」と心の中でツッコミを入れてしまいます。

いいんです―― なんとなくお洒落であればいいんです。

「余興」が終われば、通常のBGMに戻り、人々もまた会話に戻ります。そしてまた「雰囲気良ければ、それでいいんかい!」と心の中でツッコミを入れます。

周りの人も何事もなかったように振舞ってましたが、私と同じように心の中でツッコミを入れていたはず(と思う)。でも声に出してはいけません。雰囲気を壊してもいけません。そういう時代だったんですね(笑)。

その「余興」を何度も目撃することになった私はいつしか「現実との差異」という曲が耳から離れなくなっていました。そういうわけで私がちゃんとピンク・フロイドを聴くきっかけはカフェバーだったのです。

70年代の名曲と言われるものを聴いたことはあったし、プログレもなんとなくわかったような気にはなっていたのですが、まだ本格的にピンク・フロイドに足を踏み入れてなかったのでアルバムを買ったのはこの『鬱』が初めてということになりました。

創設メンバーのロジャー・ウォーターズはすでに不在、コンセプチュアルなアルバムが多いピンク・フロイドの作品のなかでも異色ともいわれるこの作品。キャリアのなかでも見逃されがちなアルバムではありますが、ハードロックやAORの要素やポップな側面もあり、何気に聴き易い。

しかし、邦題が醸すイメージやヒプノシスのストーム・トーガソンによる印象的なジャケットはピンク・フロイド臭プンプンで、重厚・難解といったとっつきにくさを感じさせます。それがピンク・フロイドやプログレを聴こうとしない人たちを更に遠ざけているのも事実(ジャケは本当に素晴らしいんですけどね)。

ということは―― ピンク・フロイドの熱狂的なファンにも… 逆にまだピンク・フロイドを聴いたことのない人にも手に取られにくいアルバムってこと?

それはもったいない。

「幻の翼(Learning To Fly)」とか「時のない世界(Sorrow)」などライヴで定番の曲も入ってますし、私は割とカジュアルに聴いたりしています。もちろん、友人とピンク・フロイドのアルバムは何が好き? とかいう話の中で決して1番にあがるアルバムではありません。

しかしながら全アルバムをリッピングしている私のiTunesの再生回数を見てみると、聴く頻度が多いアルバムは『鬱』なのです。これぞ “現実との差異!” 未聴の方は是非是非!

2018.01.30
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  YouTube / DavidGilmourHD


  YouTube / Pink Floyd
 

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カタリベ
1968年生まれ
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