6月21日

夏の坂本龍一「サマー・ナーヴス」は灼熱のレゲエフュージョン

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坂本龍一&カクトウギセッションのアルバム「サマー・ナーヴス」がリリースされた日
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photo:SonyMusic  

夏真っ盛り、ビールもおいしい季節は、まだまだ続きそうですね。そこで、前回に引き続き、夏にぴったりのアルバムを紹介させていただきたいと思います。

今回のオススメは、教授という愛称もなじみ深い坂本龍一さんがロック軍団(高橋ユキヒロ、小原礼、大村憲治、鈴木茂等)と、フュージョン軍団(アブドゥーラ・ザ・“ブッシャー” こと渡辺香津美さん。レコード会社の許諾が得られず匿名参加です)をカクトウさせたらいかなるサウンドが実現されるのか!? というテーマで制作された企画ものアルバム『サマー・ナーヴス』です。

当時このレコードの制作にあたった CBSソニーとしては、どうも「ボサノヴァで一枚お願いします」という話だったらしいのですが、「いやここはレゲエでしょう」と坂本氏が逆提案をしたという事で、キレの良い日本人ミュージシャンならではの精緻な演奏によるレゲエアルバムが完成しました。

まずはA面1曲目、「サマー・ナーヴス」です。

お、ちょっとこれはなんとなく馴染みのあるイントロだぞ? と思うのも頷けるのでございますが、これは79年のレコード大賞で編曲賞を受賞したというサーカスの「アメリカン・フィーリング」を髣髴とさせるサウンドからこのアルバムの幕はあがります。

しかしながらこの曲がサーカスと一線を画すのは、高橋ユキヒロ氏のドラムが始まると一転してレゲエサウンドに転化するところです。そして坂本氏の味わい深いリードボーカルが夏の空気を演出して参ります。

その後の「ユー・アー・フレンド・トゥ・ミー」はスローテンポでいてアグレッシブなサウンドを聞かせてくれます。「スリープ・オン・マイ・ベイビー」は、その後もご自身のソロアルバムで披露される矢野顕子さんの手になる曲。もちろん矢野さんのクリアなボーカルも堪能することができます。

そして「カクトウギのテーマ」なのですが、こちらは一転してエモーショナルなシンセベースにユキヒロ氏のスカビートが刻まれてテンションが上がっていく名曲です。プロレス好きな方は全日本プロレスのテーマに採用されたという事でもご存知かと思います。

さて、ここでA面が終わり、レコードを裏返して針を落とす、と…。

「ゴナ・ゴー・トゥ・アイ・コロニー」がはじまるのですが、こちらのボーカルにあの山下達郎さんのお名前が見受けられます。あ、だれか何か歌っている、すごくエフェクトかかってるしオフマイクだし、ディレイで左右にパンしたりして、正直ご本人の声が加工されまくっております。

これ、いわゆる「ダブ」という手法なのですが、当時とはいえ第一線級のシンガー山下達郎をもってこのような実験的なサウンドにすることを頷かせてしまうというのは、シュガー・ベイブ以来の知己であり戦友とも言える坂本氏の仕事でなければ絶対受けなかっただろうなぁ… などと想像力が否が応でも膨らんでしまうわけです。

ちなみに山下氏は坂本氏のデビューアルバムである『千のナイフ』ではカスタネットとコーラスを担当したり、1985年の『音楽図鑑』というアルバムの「Self Portrait」では素晴らしいキレのカッティングギターを披露するなど、なかなかご縁が深いんです。実は。

次の「タイム・トリップ」という曲なのですが、一曲目とはうってかわってヴォコーダーのリードボーカルによる日本的なメロディーのレゲエチューンなのですが、こちらの作詞は安井かずみさんの手になるもの。何となくフォーク・クルセダーズ的なテイストを感じる一曲です。

続いての「スウィート・イリュージョン」は、なぜこのメンバーを集めたのかという事がサウンドで語られるようなザ・フュージョンサウンドです。このアルバムの中でレゲエ、スカのテイストを唯一取り入れていない曲ではありますが、アルバムの最後に向かう疾走感を演出するという意味では素晴らしいアクセントとなっております。

最後の曲「ニューロニアン・ネットワーク」ですが、こちらは細野晴臣さんが作曲されたエレクトリックでエキゾティックな曲です。この曲のみ唯一 YMO で取り入れられている MC-8 というコンピューターが使用されているいわゆる「打ち込み」曲ですが、最後までエモーショナルな空気を孕んだままこのアルバムは幕を閉じます。

1979年と言えば、YMO の「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」の発売と同じ年であります。テクノポップの狼煙が上がったその一方で、このようなエモーショナルなアルバムを坂本龍一が手掛けていた、というのは時代の厚みを感じるのです。

残暑に向かう時期ではありますが、皆様もこのアルバムを楽しみながら元気でお過ごしになりますように。それではまた!

2019.08.20
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カタリベ
1966年生まれ
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