6月12日

ステージに本物の象が!ユーミンが80年代に教えてくれた音楽の楽しみ方

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松任谷由実の「OLIVE」コンサートツアーが中野サンプラザで開催された日
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洗練された都会的感覚、日本の音楽シーンに新風を吹き込んだ松任谷由実


1月19日は松任谷由実の誕生日。1973年に荒井由実としてデビューした彼女は、それまで主流とされていたフォーク系シンガーソングライターとは一線を画した洋楽ポップスに通じる洗練された都会的感覚を打ち出して、日本の音楽シーンに新風を吹き込む存在だった。

彼女は1976年に結婚したが、その後も松任谷由実として音楽活動を続けていく。そして、その存在感は、80年代に入ってより大きなものになっていった。なによりわかりやすかったのがアルバムアーティストとしての圧倒的実績だ。1981年11月に発表された『昨晩お会いしましょう』から、1997年2月に発表された『Cowgirl Dreamin'』まで、発表したすべてのアルバムがチャート1位を獲得するという記録を樹立する。ユーミンの最新アルバムをいち早く手に入れることが、10~20代の若者のステイタスと見なされ、松任谷由実は80年代のファッションアイコンになっていった。

コンサートとアルバムを連動させた、前例のないアプローチ


もちろん、そうなったのには理由がある。なによりも前提になっているのが彼女のつくる作品のクオリティの高さだ。ハイセンスな都会のライフスタイルのなかに、さり気なくリアリティのある女性の実感を浮き上がらせていく楽曲は、男女を問わず支持されていった。さらに彼女は、シングルヒットだけに頼るのではなく、複数の新曲を収録したアルバムで立体的に世界観を伝えていった。そして、リスナーにとっても、そのオシャレな世界は、ちょっと背伸びしたワンランク上の気分を味わうためのお手本として親しまれていった。

松任谷由実は、こうした世界観を伝えるためにコンサートでも前例のないアプローチを行っていく。それはコンサートとアルバムを連動させる試みだった。例えば1979年のアルバム『OLIVE』リリースとタイミングを合わせたツアーは『OLIVE』、1980年のアルバム『時のないホテル』とタイミングを合わせたツアーは『BROWNS HOTEL』と、アルバムを連想させるタイトルがつけられた。

ステージ演出でも、『OLIVE』ツアーではステージに本物の象が登場するという、それまでのシンガーソングライターのライブでは考えられない大胆な演出を盛り込んで話題となった。さらに『BROWNS HOTEL』ではステージ上にエレベーターを設置するなど、ツアーごとにインパクトのある演出を盛り込んでいく。こうしたステージ演出には、観客に驚きを与えるとともに、次にはどんなものが観られるんだろうという、次のステージに対する期待感を駆り立てる効果もあった。

「SURF & SNOW in NAEBA」ユーミンはリゾートコンサートの先駆者


さらに、話題性の高いツアーとアルバムリリースを結びつけることによる相乗効果も生まれ、ユーミンワールドの魅力のをより広く伝えることになった。こうした動きは、後に『YUMING SPECTACLE SHANGRILA』(1999年)などのスペクタクルなショウにつながっていくが、その種は80年代初めにはすでに播かれていたのだ。

観客とともにリゾート地を訪れて、その現地でライブを楽しむリゾートコンサートというスタイルも、松任谷由実が先駆者となったものだ。現在でもリゾートコンサートの代名詞として人気の高いイベントが、毎年2月にスキーリゾートの苗場プリンスホテルで彼女がおこなっている『SURF & SNOW in NAEBA』だ。その第一回が行われたのは1981年3月11~12日、それから毎年欠かすことなく開催されている記録的長寿イベントだ。

このコンサートのきっかけとなったのが1980年12月にリリースされたアルバム『SURF & SNOW』だ。A面をサマー・リゾート、B面をウインター・リゾートでの楽しみをテーマにした曲で構成されたこのアルバムは発売当初はそれほど大きな話題にはならなかった。しかし、このアルバムとライブを結びつける試みが定着していくことで、『SURF & SNOW』の世界は、リスナーにとって実際のリゾートとユーミンの音楽の結びつきをリアルに体験する入り機会にもなった。

フェスなどにも生かされる、リゾートと音楽が生みだす楽しみの相乗効果


実は、松任谷由実は1978年8月26日に、すでに葉山マリーナで「サマーリゾートコンサート」をスタートさせていた。この「サマーリゾートコンサート」も、1983年の第4回からタイトルを『SURF & SNOW in 逗子マリーナ』となる。こうして『SURF & SNOW』の世界は、冬の苗場と夏の逗子で毎年の恒例イベントとして、日本のカレンダーに織り込まれていった。

そしていつの間にか、このアルバムに収められていた「恋人はサンタクロース」「サーフ天国、スキー天国」などが、シングルカットもされていないのに、シーズン・リゾートの定番曲として親しまれるようになっていった。

コンサートは必ずしもコンサート・ホールで行わなくてもいい。むしろ、リゾートなどの人が楽しむ場所に音楽が出かけて行くことで、楽しみの相乗効果ほ生み出すこともできる。ユーミンが80年代に教えてくれたそんな音楽の楽しみ方が、その後のフェスなどにも生きているのではないか。そんな気もする。

『SURF & SNOW in 逗子マリーナ』は2004年を最後に開催されていないが、『SURF & SNOW in NAEBA』はその後も継続され、毎年2月に8日間に渡って開催されている。2021年も2月8日から開催が予定されていたが、公式サイトによれば、緊急事態宣言発令に伴い日程を変更して開催されるという。1日も早いコロナ禍の収束を願わずにはいられない。

2021.01.19
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カタリベ
1948年生まれ
前田祥丈
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