9月7日

中森明菜「禁区」細野晴臣のクールなテクノ歌謡は歌番組泣かせ?

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photo:Warner Music Japan  

中森明菜、キャリアの中で潮目となった歌


長くヒットチャートを賑わせた歌手には何かしら “潮目” となった曲がある。

例えば山口百恵の場合は、初の阿木燿子(作詞)と宇崎竜童(作曲)コンビによるシングル曲「横須賀ストーリー」がそれにあたるだろう。また、明菜と同時代に『ザ・ベストテン』で熾烈な1位争いを繰り広げたチェッカーズで言うなら、最初のメンバー自作シングル曲「NANA」が大きな潮目であったことは間違いない。

そして、明菜にも、そういった “潮目” の曲が存在する。ただし、ここで言う潮目とは、彼女の場合文字通り寒流と暖流がぶつかり合って生まれる “海流の潮目”、そんな意味での潮目の楽曲だ。

その曲こそが、1983年9月発売の6枚目のシングル「禁区」である。

暖流の曲? 寒流の曲? 不思議で美味しい要素満載のシングル「禁区」


中森明菜は、デビュー曲「スローモーション」以降数作は、バラード曲とロック系の曲を交互にリリースしているが、これらを暖流の曲 / 寒流の曲と区分すると、6作目の「禁区」は、そのどちらとも言えないような… 中間的な空気があった。それはあたかも暖流と寒流がぶつかり合って出来た “ミクスチャー歌謡” とでも言ったら良いだろうか。

そんなクールさの中にホットさが内在する不思議な感触を聴き手に与えてくれた「禁区」。なんだか、水の中の炎を見ているようなエキセントリックな魅力があるのだ。

ところどころで、妙に不穏な印象を刻んでくる曲でもあった。そもそも「禁区」のタイトルは語尾上げなのか、語尾下げなのかよく解らないし、「手口(やりかた)」とか「危険な気(あぶなげ)」とか、歌詞も変な当て字が多い。とにかく、その時点の明菜シングル史上では類を見なかったタイプの曲であった事は確かだ。余談だが、寒流と暖流がぶつかる “潮目” では美味しい魚がいっぱい穫れるらしい。そう、「禁区」は、そんな美味しい要素が満載のシングルだ。

この「禁区」、詞の内容については、先日カタリベ松林健さんがコラム『アイドルから表現者への歩み、中森明菜「禁区」流浪する歌姫への旅立ち』で分析をされているので、そちらを参照頂きたい。こちらのコラムでは、この曲の “美味しい要素” のひとつである “テレビとレコードで聴いた時の印象の違い” について少し書いておこうと思う。

明菜ソングの中でもこの上なく “熱い”「禁区」


実は、80年代のヒット曲にはテレビの管弦楽アレンジとレコードで印象が違うというケースが多々あった。私は、トシちゃんの「哀愁でいと」あたりがその代表格だと思っているが、そんな“違い” を往々にして感じたのが細野晴臣の作・編曲作品だった。当時は、歌番組のバックバンドも細野作品は再現するのに手を焼いているような感じが観てとれた。

「禁区」の編曲は、細野晴臣と萩田光雄の共同でクレジットされている。

細野晴臣と言えば、イモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」を筆頭に “テクノ歌謡” の印象が強く、1983年頃をピークに、松田聖子の「天国のキッス」「ガラスの林檎」からスターボーの「ハートブレイク太陽族」に至るまで、『HOSONO TECHNO』の質感を感じさせる楽曲を世に送り出している。この「禁区」も、レコードだと無機質なシモンズドラムと、時を刻むような断続的なシンセサイザーから入り、全体的にクールでソリッドな肌触りの編曲である。

しかし、歌番組でのオーケストラアレンジでは、「♪ 戻りたい 戻れない」のあたりで、ぐわーっと炎が燃え盛ってくるような熱量を、私は強く感じた。サビでの大きく手を振る独特な振付もまた、熱量アップに一役買っているかもしれない。つまり、私の中での「禁区」は、明菜ソングの中でもこの上なく “熱い” 一曲として刻まれているのだ。皆さんは、レコードでのクールな「禁区」と歌番組でのホットな「禁区」、どちらがお好みだろうか。

「禁区」からはじまる高い位置での安定した記録


さて、冒頭で、“潮目” の曲と表現したこの「禁区」だが、『ザ・ベストテン』では通算7週に渡り1位を獲得し、前作「トワイライト」で1位が2週に留まった小休止感を払拭するヒットとなった。この曲から「ミ・アモーレ」までが6作連続で50万枚越えと、高い位置で安定したセールスを記録していくこととなる。私は、この時期の明菜さんに対してが、楽曲的にもビジュアル的にも、一番惹かれていたかもしれない。

力士に例えると、前頭から三役に上がり、大関獲りに挑む… そんな勢いがあった時期だ。勿論、横綱の如く風格を纏った明菜さんも素敵だけれど、1983年~84年頃の、初々しさと大人っぽさが程よく混在した、この頃の彼女が好きだった。そんなあの頃にはもう……

 戻りたい 戻れない

ところで、私はやっぱり、レコードで聴いた「禁区」よりも、『ザ・ベストテン』などの歌番組で聴いた、バンドアレンジの「禁区」に愛着がある人間です。そこで、私からのささやかな希望なのだが、この曲を『The First Take』ならぬ『The Orchestra Take』でもう一度聴いてみたいなぁ。明菜さんに届け…… この想い!



2021.05.06
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カタリベ
1972年生まれ
古木秀典
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